日本とは違う「北米の水族館」の特徴。訪れることで“海の環境”を守りたくなる
日本には全国各地にさまざまな趣向を凝らした水族館があります。北米の水族館も人気の観光スポットですが、日本の水族館とは内容が少し違います。魚の見せ方は? 目的は? 北米と日本の水族館の違いを見てみましょう。
生き物目線の北米の水族館
世界でも有数の水族館大国である日本。筆者も子どもを連れて帰国時によく水族館を訪れますが、見せ方が工夫されていたり、迫力あるショーがあったりして、飽きることはありません。対してバンクーバー水族館には現在鯨・イルカ類はおらず、イルカショーもありません。
アシカなどの餌やりや、普段体調チェックのために教えている動作(舌を出したり前脚を振るなど)のショーはありますが、日本のダイナミックなショーを見慣れていると少し物足りなく感じるかもしれません。これも動物目線で動物福祉的な観点によるものです。
バンクーバー水族館が力を入れているもの
1.海洋生物の救助、保護、治療など
バンクーバー水族館の海洋生物保護センターでは、けがや病気をしたり、親を失ったり、はぐれたりした海洋生物を保護し、治療、リハビリなどを行っています。夏に訪れた際にはバンクーバーアイランドで保護されたラッコの赤ちゃんが展示されていました。保護センターで手厚いケアを受けた赤ちゃんは愛らしく、元気に泳いでおり、訪れた人を笑顔にしていました。
2.環境問題の提起、将来を担う若者への啓発活動とリーダーシップ育成
バンクーバー水族館には環境問題に関する展示が多くされています。例えば東日本大震災の津波などでバンクーバー周辺に流れ着いたプラスチックのゴミの展示や、日常的に私たちが使う洗剤や化繊の洋服に含まれるマイクロプラスチックが環境に及ぼす影響の展示など。
シアトルの水族館では絵本読み聞かせの時間があり、プラスチックゴミがウミガメに与える影響を描いた絵本をパペットを使って読み聞かせをしていたのがとても印象的でした。このような展示を行うことで、将来をになう若者たちを始め、人々に環境保護の重要さを訴え、未来に活躍するリーダーシップを育成することを目的としています。
3.水族館全体で行うサステイナブルな取り組み
バンクーバー水族館のカフェテリアで使われている食器やカトラリーは全てコンポスト可能なものとなっており、ペットボトルの飲み物は取り扱っていません。ゴミ箱は細かく分別されており、またオフィスで使用している紙類などもリサイクル可能なものを利用しており、水族館全体で環境への取り組みを行っていることがわかります。
さまざまな施設との提携
バンクーバー水族館は、空港、チルドレンズホスピタル(子ども病院)など、さまざまな場所と提携を結んでいます。空港の待合所には大きな水槽でブリティッシュコロンビア州近郊の魚が泳ぎ、旅行者の疲れを癒しています。ゲートの外には水族館のお土産屋があり、子どもが喜びそうなお土産がたくさん売っています。
また市内にあるチルドレンズホスピタルでは救急の診療科を海の動物の名前で分けており、絶滅危惧種などに関する説明がパネルに書かれています。
日本の水族館、バンクーバーの水族館、展示の仕方に違いはあれど、どちらのスタッフも生き物に愛情を持って接しています。日本の水族館でも近年サンゴの保護、再生可能エネルギーの導入、プラスチック・レジ袋の削減など、SDGsへの取り組みが始まっています。ただ魚や生き物を見に行くだけでなく、そこで私たち一人一人が展示を通して環境保全の大切さに気づき、アクションを起こすことができれば、明るい未来に繋がるのではないでしょうか? 皆さんが今度水族館を訪れる時、この記事のことを思い出してもらえたら嬉しいです!
Shiko/歯科医師、ヨガインストラクター、翻訳家