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記録はアートになりたがる ─萩原 朔美の日々   

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記録はアートになりたがる ─萩原 朔美の日々   

—老体からは逃げられない。でも笑い飛ばすことは出来る—

萩原 朔美さんは1946年生まれ、11月14日で紛れもなく77歳を迎えた。喜寿、なのである。本誌「スマホ散歩」でお馴染みだが、歴としたアーチストであり、映像作家であり、演出家であり、学校の先生もやり、前橋文学館の館長であり、時として俳優にもなるエッセイストなのである。多能にして多才のサクミさんの喜寿からの日常をご報告いただく、連載エッセイ。同輩たちよ、ぼーッとしちゃいられません! 

連載 第20回 キジュからの現場報告 

 驚いた!1974年に作った私のビデオ作品があった!

 探し出してくれたのは、大阪中之島美術館の大下さん。企画展の関連イベントで、70年代のビデオアートを上映する事になり、私の「20years」という作品が公開される事になった。ところが、私は、自分の作品を管理保存していない。当時は、一度上映したらもう用はないという感覚だったのだ。

 数日前、大下さんから連絡かあり、カナダのビデオアーカイブに保存されているとの事だった。嬉しかった。ずっと見たかったビデオなのだ。というのも、画面には、亡き祖母が写っているのだ。動いている祖母の唯一の映像だ。詩人萩原朔太郎と離婚し、幼い子供を残して若い男と失踪したという、悪女のイメージがある祖母だったが、孫の私から見れば、いつまでも可愛い少女のようなおばあちゃんだった。動画の中の祖母は、大人しく座って微笑んでいた。27歳の痩せた男の私は、祖母や母や親戚の人たちに、ポーズを付けて、忙しなく動き回っていた。50年前の出来事か蘇る。今はない背後の家も懐かしい。

▲筆者が7歳の頃の写真(上段)をもとに、親戚や祖母にポーズの注文をつける

 最近、やたらと私の昔の作品が公開されるようになった。香港のM+では、1972年の「K I R I」が現在上映され続けているし、ワタリウム美術館では、70年代の版画作品が展示されている。そして、「K I R I」は、ロスアンゼルスカウンティ美術館での展示が決まった。ともすると甘い思い出に引っ張られそうになる。こういう時にこそ新作を作り始めるのがいいのだろう。

▲ワタリウム美術館で展示された筆者の70年代版画作品(左) 展示風景(右)

第19回 老いが追いかけてくる
第18回 気がつけばおばんさん気分
第17回 新しい朝が来た、希望の朝だ♪
第16回 年齢とは一筋の暗闇の道
第15回 今こそ<肉体の理性>よ!
第14回 背中トントンが懐かしい
第13回 自分の街、がなくなった
第12回 渡り鳥のように、4箇所をぐるぐる
第11回 77年余、最大の激痛に耐えながら
第10回 心はかじかまない
第 9 回 夜中の頻尿脱出
第8回 芝居はボケ防止になるという話
第7回 喜寿の幕開けは耳鳴りだった
第 6 回 認知症になるはずがない
第 5 回 喜寿の新人役者の修行とは
第4回 気がつけば置いてけぼり
第3回 片目の創造力
第2回 私という現象から脱出する
第1回 今日を退屈したら、未来を退屈すること

はぎわら さくみ
エッセイスト、映像作家、演出家、多摩美術大学名誉教授。1946年東京生まれ。祖父は詩人・萩原朔太郎、母は作家・萩原葉子。67年から70年まで、寺山修司主宰の演劇実験室・天井桟敷に在籍。76年「月刊ビックリハウス」創刊、編集長になる。主な著書に『思い出のなかの寺山修司』、『死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日』など多数。現在、萩原朔太郎記念・水と緑と詩のまち 前橋文学館の館長、金沢美術工芸大学客員教授、前橋市文化活動戦略顧問を務める。 2022年に、版画、写真、アーティストブックなどほぼ全ての作品が世田谷美術館に収蔵された。

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