親戚の家族自慢がうざいんです。……どう対処したらいい?【お悩み#54】
一月も残り数日となってしまったけれど、改めて。
読者の皆様、明けましておめでとうございます!
旧年中は、応募フォームに寄せられるたくさんのお手紙のおかげで、あたしの筆もはかどりっぱなしでした。
本年もお悩み投稿はもちろんのこと、こちらのコーナーへの変わらぬ応援を、どうかぬるっとゆるっと、どなた様もよろしくお願いいたします!
……とまぁ、そんなほんのちょっとだけ真面目くささのある挨拶から始めてみましたが。
皆さんの妬み嫉み僻み、苦しみや悲しみを集めることで成り立っている、本連載企画。
その趣旨から考えるとさぁ。この1月って実はかきいれどきというか。
いや「かきいれどき」だと言葉が悪いかもしれないけれど、この季節、他者との思わぬ接触が増えることによって、「謹賀新年!」的な新春清々しい大吉オーラだけじゃなく、凶とはいかんまでも末吉寄りではあるような暗いオーラも、街や人々の間に満ち満ちたりしちゃうわけで。
例えば「親戚付き合い」というのは、そんな闇をもたらしかねないきっかけのひとつ。
というわけで、今回は「おお〜この手の悩みはこの時期多そう!」と思わず見入ってしまったお手紙を、みなさんにもご紹介したいと思います。
読者のお悩み:親戚の家族自慢がうざいんです。……どう対処したらいい?
いやぁこれ!そう!これなのよね〜。
年末年始やお盆、結婚式やお葬式でさえも、血縁者が集まる大抵のイベントでやたらと発生する揉め事の典型例のひとつが、まさにこれ。
「兄弟」とか「いとこ」とか、同じくくりの中での背比べってやつは、クヌギ一族内ならクヌギ同士、ナラ一族内の集まりならナラ同士と、どう頑張ってみてもせいぜい「どんぐり対どんぐり」の範囲にしかならないのに、どうしてこう周囲のよからぬ大人たちや、時に本人らまでもやっきになるものなのか。
本当に不思議でしょうがないわよねぇ。
正直に送ってくれたぽんさん、投稿ありがとうございます!
自分と同世代っていうのも、この問題を悩んでいるんだと思うと、なんだかグッときちゃう部分です。
だってね、ちょうどあたしたち三十路に突入したあたりの世代ってさぁ……。
もちろん人にはよるんだけれども、仕事や恋愛なんかで人生の大きな選択をいくつか乗り越えていたり。
ときにはその選択の結果が自分の今のあり方というか、ほかの誰かから見たときに「ステータス」的に扱われかねない側面に、少なからぬ影響を与えていたりもして(結婚してるか否かとか、収入や職種、自分の会社での役職なんてのは、そのわかりやすい事例よね)。
自分としては単に精一杯「こう生きよう!こうする!」ってがむしゃらに決め、動き、なんとか道を切り開いてきただけなのに、その如何で突然ある日他人から「あんたは幸せ」「あんたは落第」って評価を投げつけられなきゃいけなくなったりで。
割と「なんやねんな!俺は俺やねん!怒」って叫びたくなる瞬間に、事故的に遭遇しがちなお年頃なんじゃないかって思うのよ。その事故が起きがちなタイミングのひとつが、年末年始なんだよね。
あと、ぽんさんへの共感から離れても、あたし実はこの問題前からずっと気になっていたの。
そこには、自分のセクシャリティが関係しているんだけれどね。
……年末年始のLGBTQのコミュニティの様子を見ていると、とある注意喚起がSNSのタイムラインのそこかしこに、毎年必ず上がってきます。それが「無理して実家に帰る必要はない」というもの。
男と女という組み合わせが前提となっている「結婚」という制度•システムや、「男なら/女ならこうであるべき」といった、シスジェンダー(※)で異性愛者である人々中心の価値観。
家というかこいの中では、例えそれが自分の実家や、親類たちといった近しい人のいる場所だったとしても(もしかしたら、あるからこそ)、ときに性的マイノリティの苦しみにつながりかねない考え方と、当事者がぶつかってしまう瞬間があったりするのです。
※シスジェンダー…生まれたときに割り当てられた性別と、自身の性自認(自分の性をどう認識しているか)が一致している人のこと。
親類との比べっこなんて、その最たるもの。「いとこの〇〇ちゃんは結婚したから、次はあんたの番よね」「そんな格好してるから××と違って出世しないんだ、もっと男/女として垢抜けなきゃ」……こんな風に言われて、どうリアクションしていいかわからず、固まってしまったLGBTQは少なくないはず。あたしはかつて、そんな当事者のひとりでした。
だからこの季節、必ずこの「くらべっこ」問題のこと、反芻して考えちゃうんだよね。
ぽんさんの書いてくれているように、誰もがそれぞれ「幸せならそれでいい」はずだと思うんだけれど……。
どうしても誰かから、誰かの常識や基準に照らして評価されたり、誰かと比較してどうのこうの言われてしまったり。
その比較行為が悪気なくのものであればまだしも、ぽんさんの叔母様のように自慢やらマウントやらなんてのと結びついてこようものなら、まぁ言われた側としてはがっちがちストレスになるわよね。
とまぁ、なんだか自分の昔の経験なんていうのも思い出したりしつつ。
ぽんさんの置かれた環境と、そこでおそらく感じているであろうイライラを想像して「大変だろうなぁ」と心配になっていたりもしたのでした。
あたしなりのAnswer
では、ぽんさん。ここからはあなたへのメッセージを書いていくわけなんだけれど、どれぐらいあたしの言葉があなたに響くかは正直未知数。
事態も事態でとっても個別具体的というか、はっきり言うと、叔母さんの人となりによってはどんなアドバイスをも使えないんじゃないかなとは考えているの。
でも、北の大地の女装なりになんらかのエールを送ろうとしているんだということだけは、ぽんさんにも伝われば嬉しいなぁ、なんて気持ちです。
でね。
「うちの子の方が上アピール」、正直うざいよねぇ。
叔母さんに勝手に自慢のタネにされているいとこの側も、もしかしたら「やめてよそういう寒いの……」って思ってるんじゃないかしら。
あたしだったら大いにそう思っちゃう。
ただ、そのアピールに巻き込まれている関係者同士で「ね?うざいよね?やめたほうがいいよね?」的な答え合わせは、今回やらない方がいいのかなぁって気がするの。
親戚付き合いというのには、魔物がひそんでいるというか。
一度こじれると「めちゃくちゃ大事な場面なのに集まりづらい……」とか、「大事な手続きにサイン欲しいのに頼めないかも……」とか、こちら側にデメリットがあるばかり。
だから、もしあたしも似たような事例に巻き込まれた場合は、いつもの自分の気持ちど直球ストレートぶん投げ戦法を取らずに、ゆるっとぬるっとかわすことを選ぶかもしれません。
でもそれだとこっちばっかりムカつかされることになるわよねぇ。
「うちの子の人生ほんと順風満帆でさ〜(チラッ」みたいな当てつけ、言われようもんならさ……。
きいぃなんだてめぇよぉ!勝負すんならおのれの生き様でぶつかってこいや!って、あたしだったら絶対思っちゃうし、キレかけちゃう。
とはいえ、実際にキレたらそこでジ•エンド。ではどうするか。
これは「他人の愚痴をきくのがしんどい」回の時にも紹介した、超特殊戦法なのですが……。
もしあたしがぽんさんと同じ立場だったとしたなら、その場合は「幸せでマウントを取られたら、マウントの取りようがないレベルの意味不明なエピソードを披露する」ことで、その場の雰囲気を全く違う方向に持っていくと思います。
例えば。
「うちの子、まぁ幸せな結婚して、可愛い子どもまでいてさぁ……(以下略)……」なんてやらしい話が、相手さんからはじまったとしたら。
あたしの場合、ちょっとその話を聞いた後で。
「いや羨ましいなぁ。あたしパートナーも子どもいないんですけど、でもママとして自分の子ども同然に、店のスタッフのことは愛そうと思ってるんですよ。なのにある日、結構面倒見てた子からいきなり「ハイドロポンプぅ!」って、顔にトイレ洗剤かけられたことがあって……」って、さらっと返すと思うの(信じられないことですが、焼肉屋の網に続き、これまた実話です。「後足で砂をかける」の現代版?!ってなったよね)。
まぁこんな話されたら普通「一体どんな職場なわけ!?」ってなるじゃん。
その後は、もうこっちのペース。あとは淡々と自分の仕事のことを話せばいい。
それをこそ周囲は聞きたがるだろうし、マウント取ってきた人の作った会話の流れも、これで一瞬はかき消すことができる。
とはいえ、以前この戦法を紹介した時にも書いたけれど、他人が「え!?」を目をひんむいてくれるようなエピソードって、人生そうそう経験できるわけじゃない。
それに、これはあくまで対症療法。ぽんさんのパターンだと、叔母さんのテンションによっては「全然効果ねぇじゃん……しぶといぜこのBBA……」ってことにもなりかねないのよね。
それでも。
イライラしたままムスッとしているよりはマシなはず。
ぽんさん、ぜひこの奇襲作戦、折を見て仕掛けてみてください。
もしかしたらそれをきっかけに、叔母さんと全然違うコミュニケーションのかたちを築けるかもしれない。
そう、ストレスない関係性を構築したいなら、やっぱり自分から働きかけをするのが手っ取り早いんだよね。依然めんどくさいままならサッと離れればいいし、何か変化があればそれをいい改善の機会にしていけばいい。
大事なのは、自分の行動の軸は、自分でコントロールし切るっていうこと。
理不尽な評価を他者から向けられがちな、社会常識持ち上げ気味のこの世の中です。
色々上手にかわしながら生きていきたいもんだよね。
ぽんさん、ぜひあなたらしく、時にいろんな飛び道具も使いながら、マウント野郎の攻撃からするっとサバイブしてみてください。
同様の問題をしばしば思案し、交わし方を日々考えあぐねているひとりの同志として、西創成の地からあなたのことをこれからも応援していますよん!
ま・と・め♡
というわけで、今回は「親類付き合い」だったり、その中で発生するマウント合戦ってやつについて考えてみました。
年明けから似たようなことに悩んで、末吉寄りの闇オーラだったみなさんも、あたしの様子おかしげなエピソードとか読んで、ちょっとはすっきりしたかしら……?
ほんっと、トイレ洗剤ってしばらく肌がピリピリするのね。ウォータープルーフの化粧使ってるはずなのに、刺激の物理貫通っぷりはなはだしかったことを、あたしは一生忘れないでしょう。
うふふ、今年もこんな気軽なテンションで、みなさんと一緒にいろんなモヤモヤと向き合っていけるのねん。2024年も、読者の方々からのお手紙が楽しみです!
ではでは、また次回。Sitakkeね〜!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部 ナベ子
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「 さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。