人間関係がうまく構築できている人が、常にやること【ウェルビーイング研究者インタビュー後編】
幸せになるために必要なのは、お金?それとも知名度?その問いに対する具体的なヒントをくれるのが書籍『グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない』(&books/辰巳出版)。
著者であり4代目研究責任者のロバート・ウォールディンガー教授に、幸せな人生を送るための秘訣や日常での実践方法について話を聞きました。
前半に引き続き、後半ではSNSとの付き合い方や、ウェルビーイングな暮らしを実現するための具体的なアドバイスを聞きました。
SNSがウェルビーイング与える影響とは?
─── 最近はSNSでのコミュニケーションが一般的になり、対面でのコミュニケーション自体に苦手意識やストレスを感じている人もいます。
SNSはウェルビーイングにどのような影響を与えるのでしょうか。
現在、世界中でSNSによる心理状態への影響を懸念する声が上がっていますね。その分野における研究も積極的に行われています。
しかし私は、一概にSNSが悪いとは思っていません。私が問題だと思っているのは、SNSを「受動的に」使うことです。
InstagramやX、FacebbokといったSNSは、フィードをスクロールすることによって、他の人の投稿を見ることができます。
ただ、投稿には編集され、切り取られた人生が映っています。人生の「良い側面」だけを見せているんです。
加えて、必ずしもリアルではないその人生を見つづけていると、自分の人生と比べてしまって自己肯定感も下がってしまいます。
しかし、SNSを「主体的に」使えれば、人との繋がりを取り戻すことができ、ウェルビーイングにもつながると私は考えています。
「主体的なSNS」が人と人を繋ぐ
─── 主体的なSNSの使い方、ですか。
ポイントは「コミュニケーションの手段としてSNSを使う」ことです。
例えば、新型コロナのパンデミックによるロックダウン中、ある被験者の男性が、アメリカ中に散らばった学生時代の同級生とZOOMでお茶会を開催しました。
日曜日の朝にコーヒーを一緒に飲みながら人生の話を共有することで、再度繋がりを持つことができたそうです。
SNSを主体的に使えば良い人間関係を構築でき、そして幸福度を上げることもできるんですよ。
─── 発信者と受信者としてのSNSではなく、互いにつながるための手段としてSNSを使うんですね。
はい。しかし写真や動画を投稿したり、友達の投稿を見たりすることもやっぱり楽しいですよね。私はコンテンツをSNSに投稿するときは、その投稿がリアルであり、自分にとって重要であるかを意識することが大切です。
実は、私は最近、SNSでより活発に活動するようになっているんですよ。主体的にSNSを使えば人間関係や幸福度に良い影響を与えることができるという考えを広めていけたらいいなと思っています。
もちろん、SNSが自分の幸せにネガティブな影響を与えていると思ったら、SNS断ちをするのも1つの選択肢です。
人間関係をうまく構築できている人は、ちょっとしたことを常にしている
─── 日本は幸福度ランキングが低いことで有名です。日本で暮らす読者に、幸せになるためのアドバイスはありますか?
日本には長時間労働による過労死や、メンタルヘルスの問題も多くあると思います。文化的、構造的な問題でもあり、自分だけで変えることが難しい場合もあります。
しかし、幸せになるために、必ずしも自分の生き方を180度変える必要はないんです。小さなことでいいんです。
人間関係をうまく構築できている人は、ちょっとしたことを常にしています。
通勤をしている間に友達とこまめに連絡を取ったり、家族と食事をしたり。労力を使って時間を作るというよりは、小さなことを継続しているんです。
私が特におすすめしているのは、日にちを決めて定期的な集まりを開催することです。
信頼できる2〜3人の人と定期的に時間を過ごすことが、ウェルビーイングにとって非常に重要です。
毎週、毎月◯日に必ず会う、といったように予定に組み込んで習慣化しまえば、新たに予定を立てる必要もなくなります。
また、大切な人たちに確実に時間を使えるようになれば、長期的に良い人間関係を構築することができます。
私自身も『グッド・ライフ』共著者のマーク・シュルツとは毎週金曜日、夜の12時に必ず電話をするんです。
彼と私は遠くの州に住んでいるんですが、仕事の話や家族の話、身の回りで起こっていることをなんでも話すようにしています。
もう何年もこの習慣を続けていて、旅の写真を送りあうこともありますよ。
大切な人にできるだけ時間を使い、人間関係を無理なく続けていくことが幸せの秘訣です。
今からでも遅いことはありません。
(完)
(ウェルなわたし/小泉 秋乃)