プロ野球で解禁 牛骨バットって?今シーズンは音が変わる!?
プロ野球はいま、各球団がキャンプを行っていますが、今シーズンから新たに「牛骨バット」が解禁になる、と話題になっています。
多くの選手が関心あり!「牛骨バット」とは
どういうことなのか、ミズノ株式会社の野球用具の企画責任者 須藤竜史さんのお話です。
ミズノ株式会社 野球用具の企画責任者 須藤竜史さん
NPBの規則の文言の中で「今まで通り、バットをギュッと圧縮するのはダメですよ。ただし、反発に影響しない程度に、牛骨などの何かを使ってバットをしごく、表面を加工することは今シーズンから認められた」と。結構昔の選手とかが牛骨でバットをグリグリしごくというのが流行った時期があって、名残で「牛骨」というのがいまだに出てくるんですけれども「牛骨『など』硬質でのしごきを含む」という文言なので基本的に今、牛骨でしごいていることは全く多分ないと思います。我々は機械を使ってしごいています。ギュッと目が詰まった形になるので、多少耐久性が上がったりとか、打った感触が少し硬くなるとか。速い球に対して、バチっとコンタクトするという意味でいくと、硬く弾く打感みたいなところが、選手の中でもトレンドにはなっているので、弊社の契約している選手たちも興味を示している方も多いので、今お試しをいただいているところです。
牛骨バットは、そもそも、まず材料として牛の骨を使ったバットではありません。
さらに「牛骨『など』の硬いものでバットをしごく、表面を加工すること」が認められた、ということなので、ミズノの須藤さんによると今は牛骨自体も使っていない。硬い機械のようなもので加工しているそうなんです。
メジャーリーグでは一般的に行われている加工で、NPB(日本野球機構)によると、加工してもボールが飛ぶか飛ばないかに繋がる「反発係数」の数値がほとんど変わらないという調査結果が出たこともあって、今シーズンから認められることになりました。
ミズノは日本のプロ野球、NPBでは現在50人の選手と契約していて、福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手や、横浜DeNAベイスターズのキャッチャー山本祐大選手など、契約選手のうち3分の2以上の選手が、今回解禁になった「牛骨バット」を今試しているということです。
(ミズノの通常のバット作りの様子)
昔は牛骨をお肉屋さんでもらってバットの手入れ
ではなぜ「牛骨」なのか、詳しいお話を木製バットの生産日本一、富山県南砺市福光地域で、南砺バットミュージアムを運営する館長の嶋信一さんにご自身のアマチュアでの野球経験もふまえ、伺いました。
南砺バットミュージアム 館長 嶋信一さん
昔のバットって、材料がヤチダモとかいう材料が多かったんですよ。それが結構雨にあたると、ささくれになるんですよね。その隙間を埋めるために、牛肉の脂をその中に詰めてビール瓶でしごくという感じですね。肉屋さんで骨をもらってきて、バットを股に挟んで、両手に牛骨を持ってギュッギュッとしごくんです。表面が滑らかになるんです。その上からビール瓶で、もっとすり込むんです。イメージとしては、手羽先あるでしょ?手羽先を食べた後の感じの大きいのが牛骨です。うちの3軒隣が肉屋さんだったもんですから、いつでももらえましたし、だいたいやったのは月1くらいですね。だからプロの選手は、週1、週2くらいでやってたんじゃないですかね。
嶋さんによると、スネやモモなど、太くて硬い部分の骨をお肉屋さんでもらって、自分でしごいて手入れをしていたそう。
今のプロ野球では禁止されていますが、昔は「圧縮バット」も認められていて、ヤチダモという木に樹脂を入れて、バットの表面が剥がれにくい加工にしていました。さらに牛骨やビール瓶でしごいて「牛骨バット」、表面を硬くしていたということなんです。
牛骨バット解禁で音が変わる!?
昔のプロ野球選手と牛骨バットのエピソードや、牛骨バットが解禁される今シーズン、どこに注目したらいいかなど、再び、南砺バットミュージアム 館長の嶋信一さんのお話です。
南砺バットミュージアム 館長 嶋信一さん
中西さんがやっていたと聞きましたね、中西太さん。中西太さんって「四国の怪童」って言われていて、すごいホームラン打っていたんですよ。バットを大事にして、自分の身体の一部として使う大事なものですから、きちんと手入れするためにも、やっぱり牛骨できちんとしごかれたんじゃないですかね。打ったときの音がちょっと高い音になるんじゃないかなと思います。打ったときの打球音が金属に近い、高い音が出ると、それも楽しみにしてもらえればいいんじゃないかなと思います。全国でバットだけの博物館はうちだけなんですよ。特に子どもたちに触らせてあげたいです。「プロで使っているよ、じゃあ自分もそういうのを目指してやりたい」という夢は持てますから、ぜひそういう形で続けていきたいと思います。
(南砺バットミュージアム)
バットミュージアムにはいま名前が挙がった中西太さんのほか、長嶋茂雄さんや王貞治さんなど名選手や現役選手のバットおよそ550本を展示、合わせて1300本を保管しています。
牛骨バット、見た目では分からないと思いますが、今シーズンは「音」の違いに耳を傾けると、より楽しめるかもしれないということでした。
今シーズンのプロ野球、「打球音」にも注目です!
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:西村志野)