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榎戸駿に聞いた 『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』OP映像メイキング BBBBダンスができるまで②

Febri

TOPICS2024.03.31 │ 12:00

榎戸駿に聞いた 『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』OP映像メイキング


BBBBダンスができるまで②

好評のうちに第2期の放送も最終回を迎えたTVアニメ『マッシュル-MASHLE-』。中でも大きな話題を集めたOPアニメーションについて、絵コンテ・演出を担当した榎戸駿に話を聞くインタビュー連載の第2回では、作品に参加することになった経緯、そして基本的なコンセプトが決定するまでの裏側を聞いた。

取材・文/宮 昌太朗

アニメーターアニメクリエイターインタビュー_TOPICSマッシュル-MASHLE-榎戸駿

楽曲を聞いて「普通のOPを作っちゃいけないんだな」

――『マッシュル-MASHLE-(以下、マッシュル)』のOPアニメーションは、どういうきっかけで手がけることになったのでしょうか?
榎戸 アニプレックスの古橋(宗太)プロデューサーから「OPをやってみませんか」と声をかけてもらいました。古橋さんは『Fate/Grand Order(以下、FGO)』のCMの担当プロデューサーだったんです。そのときの縁からいろいろと声をかけてくれていて、また一緒に仕事をしたいと思っていたんですよね。しかも今回、オープニング楽曲がCreepy Nutsさんだったのが自分の中では大きくて。スケジュール的にはけっこう厳しいタイミングだったんですけど、ぜひやりたいな、と。オファーがあった時点でお引き受けしようと決めました。

――そのタイミングで、もう楽曲(「Bling-Bang‐Bang‐Born」)は完成していたんですか?
榎戸 いや、まだでした。引き受けたときに楽曲を渡されていたら「この曲でどうやって作ればいいんだ」と、さすがに弱気になっていたかもしれないです(笑)。実際、最初に楽曲を聞いたときは戸惑いつつ、「でも、やるしかないんだよな」という気持ちでした。

――ということは、上がってきた楽曲を聞いてみて「これは難しいぞ」という感覚があったわけですね。
榎戸 そうですね。挑まれている感じがあったというか「どうやったらこの曲をアニメのOPにできるんだ」みたいな、尖った印象をまず受けました。普通のOPアニメを作っちゃいけないんだな、と。

「そうきたか!」という気持ちを見ている人にも感じてほしかった

――実際、とても挑戦的なOPアニメになっていると思うのですが、監督やプロデュースサイドからは、どんなオーダーがあったのでしょうか?
榎戸 監督から当初はいわゆる「王道」のOPにしてほしい、というオーダーがあったんです。アニメのOPらしいOPで、なおかつ派手なアクションシーンがあって……みたいな。あと監督からは「あまり特殊な色を使わないでほしい」といった話もありました。打ち合わせの中で提案させてもらった部分もあり、結果的には最初いただいていたオーダーとは真逆のOPになってしまいましたね……(笑)。

――あはは。
榎戸 楽曲を聞くとどう考えてもいただいたオーダーを満たせる映像は作れない。というか、作ることはできるんですけど、映像と音楽が乖離したものになってしまうと思ったんです。映像でどれだけ「王道」を作っても、音楽が「王道」と食い違っていたら、別々の味がするだけになってしまう。それに「Bling‐Bang‐Bang‐Born」を最初に聞いたときに感じた「そうきたか!」という気持ち、それを映像を通して見ている人に感じてもらえなかったら、ちょっと悔しいな、と。そんな気持ちもあって「この楽曲なんだからしょうがないでしょう!」と、開き直りのように今のコンセプトを提案させてもらったところはあります。

<!--[if lt IE 9]>document.createElement('video');<![endif]-->https://febri.jp/wp/wp-content/uploads/2024/03/MSL_OP2_conte_AC.mp4

『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』OPアニメーションのビデオコンテ。

背景が単色黄色になった、いくつかの理由

――そのコンセプトの中でもいくつかポイントがあると思うのですが、まずは単色の背景にモノクロの線画という、非常にデザイン的な画面構成になっていますね。
榎戸 色については最初に決めました。というのも、それなりにタイトなスケジュールで作る必要があったので。特殊な画面にすることで背景美術を使わず、そこに現場的な負担をかけずに作れるかもしれない。それがまず念頭にありました。で、それならより原作らしく、マンガっぽい画面にしてみようかと。

冒頭部分の絵コンテ。この時点ですでに「画面のベースは黄色で青や緑を差し色に使う」という方針が打ち出されている。

――ああ、なるほど。あれはマンガ的な画面を作ろうという意図だったわけですね。
榎戸 なので、キャラクターをモノクロにしよう、というのはわりと早い段階で決めていました。キャラクターに色を乗せてしまうと、どれだけ絵をマンガに寄せたとしても「アニメの絵だな」と感じてしまうんです。マンガだと白目は塗られていないし、常に瞳にハイライトが入っていたりもしない。そうやって考えていくと、最も大胆なかたちで白黒にしてしまうのが、いちばんダイレクトにみんなが最大公約数的に思い浮かべる「マンガの絵」になるだろうと。絵のゆらぎの許容値が大きくなって、より原作の絵の雰囲気に寄せやすくなったと思います。そのうえで背景となるベースの色は何にしようかと考えたときに、いちばんくっきりとコントラストをつけるとしたら、黄色かピンクのような明度の高い色になる。『マッシュル』の単行本を並べると、暗め・濃いめな緑や赤、あとは青、紫といったカラーリングが多く使われていて、それらの土台になるような色を考えると黄色かな、と。

アダムやイノセント・ゼロの面々が現れるパートは、とくに背景色の変化が効果的に使われている部分。

――そこでベースカラーを黄色にすることが決まったわけですね。
榎戸 黄色を土台に用意したうえで、カットのテンポに合わせて、差し色に青や紫、赤を使えば、映像にも視覚的なリズムが出て全体がうまくまとまるかな、と思いました。あともうひとつ、これはイメージ的な部分なんですけど、『マッシュル』の世界観はファンタジーでありつつも、どこかイギリス的な雰囲気を感じるなと思っていたんです。で、イギリスの紅茶缶――有名なところで言うと、「CAMPBELL’S perfect TEA」や「TWININGS」が黄色に黒の文字でレタリングされているんですよね。そういうイメージを引っ張ってきつつ、やっぱり黒と黄色の組み合わせは何よりも目を引きやすい(笑)。そういった理由で黄色を採用しています。

――いくつかの理由があったんですね。
榎戸 そうですね。「そうするべき理由」が自分の中で4つか5つくらい挙げられれば採用していいかな、と思っていました。

榎戸駿えのきどしゅん 1990年生まれ、茨城県出身。アニメーター・演出家。最近の主な参加作品に『Fate/strange Fake -Whispers of Dawn』(監督/坂詰嵩仁と共同)、『Fate/Grand Order』(CMディレクター)、『ホロライブ・オルタナティブ』(ティザーPV監督)など。愛犬は柴犬のべーちゃん。第3回(③)に続く作品情報

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2024年4月24日(水)

©甲本 一/集英社・マッシュル製作委員会

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