「シートノック」は何のため?【高校野球から逆算した少年野球デキる選手を育てる方法】
「シートノック」と「個別練習」は上手く組み合わせて
とある学童野球チームの守備練習を見学させていただいたときのことです。内野外野各ポジションに2人ずつ付いて、それぞれがノックを受けるシートノックが行われていました。
「サード行くぞ!」
「ナイスプレー!」
「エラーしたらもう一回受けて!」
「さあ、もういっちょ!」
子ども達は元気に声を出しながらノックを受けていました。
シートノックは試合の感覚に近い、大切な練習です。しかし、この日の練習で行われていた守備練習はシートノックだけでした。
そのシートノックは1時間ほど行われていましたが、その間、各ポジションの選手達が受けたノックを数えてみると大体1人10球程度。
各ポジションに選手が順番にノックを受けるわけですから、自分が受けたあとは当然ながらしばらく待つことになります。
1時間もノックを打った、ノックを受けたという「やった感」はあるかもしれませんが、シートノックだけで守備が上手くなるかというと、それはまた別の話になります。
守備の上達にはやはり数多くノック受けることが大事になります。そのためには「個別練習」を行ってほしいと思います。
ではどんな「個別練習」が良いでしょうか? 私は大まかに以下の3つに分けて行うと良いと思います。
①ゴロを捕球する
②グラブから投げる手にボールを握り替える
③送球する
各動作を別々に行うことで、各動作の反復回数を多く行うことができます。
例えば、守備練習が1時間あるならば、前半30分は手投げのゴロで良いので2人1組で①〜③のドリルを各10分ずつ行い、後半30分でシートノックを行う。そうするとノックの数は半分になりますが、選手が練習する量は格段に増えます。
数をこなすことによって動きのコツを掴む。その上で試合の感覚の近いシートノックでもそれを発揮できるか? その繰り返しが守備上達への道になります。
*練習の強度については改めてお話したいと思います。
考えたい「シートノック」の意味
公式戦はもちろん、練習試合の前にもシートノックを行うチームがほとんどだと思います。なぜ試合前にシートノックを行うのでしょう? 選手はその目的を理解しているでしょうか?
アップの一部集中力を高めるため
など、チームによって様々な目的があると思いますが、私が高校野球の監督時代に一番大切にしていたのは、「球場やグラウンドの景色に慣れるため」でした。
公式戦は慣れた自校グラウンドではなく、ほとんどが慣れていない球場やグラウンドで行われます。
自分のポジションから見える景色は日頃とは大きく違うため、距離感やボールの見え方が変わってしまい、思わぬミスに繋がる可能性があります。
それは少年野球も同じだと思います。
ですから私は、試合前シートノックの7分間は距離感やボールの見え方を修正して試合へ臨むための準備の時間として考えていました。
元高校野球監督からのアドバイス
<シートノックの応用>
私が高校野球の監督をしていたときは、外野も含めたシートノックでは1球ずつカバーリングも含めて全ポジジョンの動きを確認していました。9人全員の動きの確認が目的です。
例えば、ランナー無しでサードゴロの場合、ショートは打球方向に反応してサードのバックアップへ走る。セカンドはサードから一塁への送球のバックアップのためにサードと一塁ベースの延長線上に走る、など。ノックを受けるというよりは動きの確認練習となるかもしれません。これをポジション毎に順番に行います。
内野だけでなく、全ポジション付けることで、どちらかというとゲームノックに近くなります。ゲームノックのようにランダムに打つのではなく、シートノックとして順番にひとつずつ確認することで、選手は動きの習得をしやすいと思います。
ボールを持っていないときの動きの練習も行うことで、少年野球のシートノックにありがちな「自分の順番が回ってくるまで待っている」ということも少なくなりますよね。
著:伊豆原真人
伊豆原 真人(いずはら・まさと)
野球指導者。高校数学科教員。令和4年12月で神奈川県立川和高校野球部監督を降りて令和5年4月に異動。現在は長男野球部の保護者としてサポートしながら幼小学生〜大学社会人まで幅広く指導中。高2中1小3の球児の父親。<!-- .c-authorbox__contents -->