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北海道の廃校に超機密情報が…高性能ロケットエンジン開発へ宇宙ビジネスの最前線

Sitakke

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北海道大学から生まれた宇宙ベンチャー企業が、超高性能のエンジン開発を進めています。機密情報が詰まった宇宙ビジネスの最前線、その現場は、廃校になった中学校にありました。

宇宙ビジネスの市場規模は54兆円…北海道も最前線に

空へ向かって飛び立つロケット。
それは、遥かなる宇宙に想いを馳せる壮大なロマン…。
人工衛星を使ったビジネスなど、宇宙産業の市場規模は世界で54兆円にのぼります

今後グングンと伸びていく成長産業だが、ここ北海道の宇宙ビジネスの最前線があるんです。

そこでは、人工衛星を目的の位置に配置したり移動させたり出来る、超高性能エンジンを開発しているといいます。

手に乗るようなサイズの物体が、開発中のエンジンの一部。
しかし、その全体像は極秘のベールに包まれていました。

廃校の中学校校舎が拠点に

超高性能エンジンの開発を進める現場は、北海道空知地方のあるマチにありました。

それが北海道滝川市。
マチの中心部から15分ほど車を走らせると、宇宙ビジネスの開発現場が見えてきました。

廃校になった旧江部乙中学校の旧校舎を拠点に、高性能エンジンの開発を進める『レタラ』。
北海道大学が2020年に認可した、宇宙開発ベンチャーです。

宇宙は簡単に動けるイメージ?

開発にあたる若きエンジニアは約80人。
北海道大学のOBや学生、そして海外からの留学生が多くを占めています。

Letara(レタラ)の共同代表を務めるのは、平井翔大さんと、アメリカ人のケンプス・ランドンさん。
ともに北海道大学で、宇宙工学の研究者を学び、この宇宙ベンチャー企業を立ち上げました。

ケンプス・ランドンさんが開発している高性能エンジンの意義についてこう話します。

「宇宙は何もないから簡単に動けるイメージだと思うが、たとえば人工衛星が“東京の上にいるけれど、本当は札幌を観測したい”となったら、変更にはすごい燃料が必要になる」

「弱いエンジンでやろうとすると、何か月間もかかかるので、とてもビジネスにならない」

宇宙ビジネスの4分の3は民間企業

宇宙開発に関わるビジネスの中心は、いまや民間企業にあります。
実に全体の4分の3を占めているといいます。

2040年、世界の市場規模は140兆円に膨らむといいますが、高い安全性とコストダウンが大きな課題となっています。

開発中の人工衛星用「超高性能エンジン」

Letara(レタラ)が参入を目指すのは、人工衛星用のエンジン。

爆発の危険がないポリエチレン由来の燃料を使った、超高性能のエンジンを開発中です。

社員の深田真衣さんが「白い固形のモノが燃料になっていて、この燃料をエンジンの真ん中の空間に入れて燃焼させる」と説明してくれました。


開発には高度な「機密情報」が

Letara(レタラ)は、札幌に設計部門などを置き、滝川市江部乙にある廃校になった中学校の校舎跡で、エンジンの組み立てや実験を日々重ねています。

取材を進めていると、コンテナの前でカメラ撮影を止められました。

鉄製のコンテナ内部には、実験機が設置されているが、高度な機密情報が詰まっているため、接近も撮影も一切NG。

まもなく燃焼実験が始まろうとしていましたが、許されたのは離れた場所から眺めることだけ。

交渉の末、撮影範囲を炎の噴き出し口に限ることで、固定カメラの設置が許可されました。いよいよカウントダウンが始まります。

「10・9・8・7…」

カウントダウンが終わると同時に、超高性能エンジンの噴射口からオレンジの炎が、勢いよく吐き出されます。

Letaraが開発中の高性能エンジンの最新実験機(北海道滝川市)

何度となく重ねられた燃焼実験ですが、最新のタイプの実験機では5秒が最長記録。

今回はどこまで続くのか…
炎が噴出口から消えたのは、20秒後でした。

実験は大成功。
若きエンジニアたちから歓喜の声と、力強い拍手が起きました。

最新タイプの実験機では、燃焼で高温になるエンジンを冷ます改良を加えました。
その結果、燃焼時間はこれまでの4倍にまで伸びることとなったのです。

Letara(レタラ)の糸魚川大和さん「燃焼実験で20秒をクリアできたというのは将来、お客さんに売っていく時に大きなマイルストーン(到達点)になった」と自信をみせます。

Letara(レタラ)共同代表のケンプス・ランドンさんによると、今の宇宙輸送技術は「かなりリスクが高いもの」なのだといいます。

「リスクは爆発する…ドンと。1~3%で爆発するそんな車や飛行機には乗らない。まずは、そのバリアを突破することが最初の仕事だと思っている」

もう一人の共同代表・平井翔大さんは「いま世の中にある人工衛星用のエンジンは、危険なものか、安全ではあるが、非常に速度が遅いもの。このトレードオフをわれわれの技術でなくしていきたい」と話していました。

Letara(レタラ)では将来、開発した超高性能エンジンで、人工衛星だけではなく、月や火星にも到達するパワーを備えたいとも考えています。


北海道のマチから宇宙ロケットが

そして、宇宙ビジネスを巡る動きは、北海道の別のマチでも…。
海を渡ってくるロケットの打ち上げが、間近に迫っていました。

北海道十勝地方の大樹町にある『北海道スペースポート』。

ロケットの発射台を備えた民間の宇宙港です。

現在、大型ロケットに対応した新たな発射場の建設が進んでいます。
完成は2026年9月の予定です。

その『スペースポート』で、小型ロケットの打ち上げが迫っています。

打ち上げを予定しているのは、台湾系のロケットベンチャー『jtSpace(ジェイ・ティー・スペース)』が所有する、全長約11メートルの小型ロケットです。

これまでに何度も大樹町で、ロケットの発射を実施しているインターステラ社のロケット『モモ』と同じサイズ。

台湾には民間の発射場がないため、ロケットは分割して船で運搬。
苫小牧港に陸揚げし、トラックで大樹町まで運ぶ計画です。

『スペースコタン』マーケティングPRグループの伊藤亮太さんは「北海道という場所は、北海道スペースポートを中心に宇宙産業に非常に適した場所」だと話します。

「今後の北海道の主要な産業になっていく、主要な産業にしていきたいと思っている。その可能性を皆さんに感じていただく機会になればいいなと考えている」

『jtSpace(ジェイ・ティー・スペース)』の小型ロケット打ち上げが6月に実現すれば、大樹町では、約4年ぶりとなります。

北海道で挑戦が続く宇宙ビジネス…その動きは、いま活発になっています。

日本の宇宙ビジネス市場も倍増へ

地球の低軌道を周回する人工衛星の打ち上げ数は、右肩上がりのペースで増え続けると予測されています。

現在、宇宙ビジネスの国内市場は4兆円ですが、政府は2030年代の早い時期に8兆円まで倍増させる考えです。

大きな成長が期待できる、宇宙ビジネス。
北海道がその拠点となれば、未来を担う人材が集まり、地域の大きな力になってくれそうです。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年5月2日)の情報に基づきます。

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