保育士を続けるため「休みやすさ」重視で転職。5園を経験した私の「働きやすい保育園の探し方」
「保育士という仕事は好きだけれども、今の職場の環境や待遇面には満足できていない」と感じていませんか。
約10年にわたり保育士として働いている保育士みっちゃんさんは、満足のいく働き方ができる園を探して、複数回の転職を経験しました。現在は「休みがしっかり取れてリフレッシュできる」環境で働けているそうです。
「以前に比べると選択肢が広がっている」という保育士の現状と、これまでの転職経験を振り返っていただきました。
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私は大学で幼稚園教諭と保育士の資格を取得し、約10年、保育士として働いてきました。今の園に行き着くまでには何度か転職し、計5園を経験しています。
一般的に保育士といえば「ハードワークで、待遇もよくない」といった印象があると思います。私が転職をしたのも、休みが取りづらいなど、待遇に不満があったのが主な理由でした。しかし5園を経験する中で、最近の保育現場は、以前よりも選択肢が広がってきていると感じています。
今回は、私が5園を経験する中でどうやって「保育士として働きやすい環境」を探してきたかを振り返りたいと思います。
「休みの取りやすさ」を重視して今の園に転職した
約10年の間、公立・私立、認可・認可外、小規模~中規模のさまざまな形態の園で働いてきました。
保育士の給与は公定価格(※)の影響で決まるため、園長や主任レベルでは改善が難しいことがほとんど。園によって多少の幅はありますが、高い給与を望むことは難しいでしょう。
給与面については一定の妥協をせざるを得ないのが現状ですが、少しでも働きやすい環境を求めて転職することは可能です。最近は特に保育士不足が顕著なので、できるだけ多くの保育士を確保するため、以前よりも働きやすい条件を提示する園が増えていると感じます。
私が転職の際に重視しているのは「希望の日に休みが取りやすいかどうか」。「保育士は休みが取りづらい」というイメージがあるかもしれませんが、私が経験した限り、園の方針や職場の雰囲気によって、取りやすさに大きな差がありました。今の園に決めたのも、休みが取りやすい環境だったからです。
保育士は体を使う仕事だからこそ、休みの日のリフレッシュが大事だと考えています。私は土曜出勤の代休を使って平日に旅行に行くのが好きで、連休が取れた時は、日本全国の水族館を巡ったり、遠方の友人に会いに行ったりしています。
《画像:休みの日は、趣味で竹林整備や農作業などの里山整備に行くことも》
保育士は続けたいけれど今の環境や待遇に不満があるのなら、まずは「具体的にどんな点が嫌なのか、どこが改善されたら続けられるのか」を考えてみるのが第一歩かなと思います。
保育士の厳しい現実を知り、一時は日本を離れて海外へ
とはいえ、私も最初から「自分が求めている条件」をしっかり言語化できていたわけではありませんでした。
大学4年生の秋、まわりの友人がどんどん就職先を決めていく中、就活に出遅れた私は焦りを感じていました。大学にはさまざまな園の求人票があったものの正規職員の枠は少なく、給与水準や自宅からの距離などを基準に応募する園を絞り込みました。そのうちの1園でなんとか正規職員として採用されましたが、同期5人のうち私ともう1人以外の3人は非正規雇用での採用でした。
そんな最初の園は、今でも迷った時に「あの園の先輩たちだったらどうするだろう」と立ち戻る原点になっているほど多くのことを学びましたし、保育士として大切に育ててもらいました。
その一方で働きやすいとは言えない環境で、1日の就業時間が他の園よりも短い分出勤日が多く、年間休日は100日を下回る状況。また、保育にあたる時間(子どもの世話をする時間)だけが就業時間とみなされ、書類対応や保育室の掃除など「保育にあたる」以外の時間は、就業時間内に確保されていませんでした。
理論上は「そういった作業は子どもがお昼寝をしている間にできるから」ということでしたが、実際はみんなが同時にお昼寝するわけではありません。眠れない子や途中で泣いて起きる子の対応、睡眠中の呼吸確認もしなければならないのです。
書類仕事や掃除のためにまとまった時間が取れるのは子どもたちが帰ってから、もしくは帰宅後。つまりこれらは「サービス残業」扱いになっていました。
私だけではなく園長も先輩もみんなサービス残業をしており「みんなで頑張ろう」と言いながらみんなで疲弊しているという、園全体で感覚が麻痺している状況でした。休みが少なく体の疲れが取れないことのほか、職員旅行の積立金や保育雑誌の購入といった天引きが多く手取りが少ないことなどに嫌気がさして、3年目に退職することを決めました。
退職を決めた後も「保育」の仕事自体は好きだと感じていたので、保育士として働いた経験を生かせる場所を探しました。いろいろ考える中で「日本以外の保育の現場も見てみたい」と思い立ち、とある国で保育に関わる仕事をすることに。幼稚園教諭と保育士の資格があることが「一文無しで日本に戻ってきても何かしら仕事はあるだろう」と精神的な後ろ盾となり、思い切って踏み込むことができました。
《画像:保育園で泥遊びをする海外の子どもたち》
日本と海外との「保育」の違いにさまざまな刺激を受ける中で気づいたのが「日本では、保育士の資格を取るための仕組みがきちんと整備されている」ということでした。
私が訪れたその国では、保育園で働くための資格は必要ありませんでした。それゆえに「適性がないのでは」と思うような人が保育にあたっていることも。逆に「この人の子どもとの関わり方は素敵だなぁ」と思う人が、学歴の低さや就職時の空きポストのなさから、低いポストにとどまらざるを得ないケースもありました。
日本では、保育士の資格を取得するためには養成施設で単位を取得するか、国家試験を受けるかしなければならず、ある程度のコスト(お金や時間)をかける必要があります。その過程で「自分は保育士に合っていない」と思った人は違う道を探すことができ、一定の適性のある人が保育士資格を得て働けるシステムなのだと感じました。
帰国後、売り手市場の中でより働きやすい環境を探した
私が海外にいる間、日本では「保育園落ちた日本死ね」が流行語に。保育園不足・待機児童問題が大きく取り上げられたことで保育園の数が爆発的に増え、帰国時には売り手市場になっていました。
有資格者とはいえ「実務経験は3年“しか”ないし」と思いつつ「まずは見学を」とアポを取り園を訪ねると「3年“も”経験がある」と評価され、「来週面接できたら、再来週から働ける」と言われました。経験の浅い保育士が多い園では「若手の指導役になってほしい」とも言われました。保育士が園に選ばれる時代から、保育士が園を選ぶ時代になっていたのです。
以降、私は「どうやったら自分が働きやすい環境が手に入るか」を追い求め、転職を重ねてきました。
2園目:期間限定の非正規雇用
•転職のきっかけ
•採用スピードの圧力にビビってなかなか園を決めきれずにいたところ、ハローワークの職員さんが紹介してくれた
•良かったところ
•1日の労働時間は8時間で時間外の残業は月に1〜2回、それに対して時間外手当も出た。土曜日の出勤に対して代休制度があった
•不満だったところ
•代休制度があったものの連休は取りにくく、ボーナスもなかったので、期限満了とともに退職
3園目:複数の園をまとめるマネージャー職
•転職のきっかけ
•保育士就職イベントで見つけた園。「園長にはなりたくないけど、現場からは少し離れたい」という思いから入職
•良かったところ
•1日8時間の勤務を基本としつつ子どもの保育時間によって勤務時間が変わる「変形労働時間制(※)」の園で、周りの職員と調整すれば希望のタイミングで休みやすく、職員が充足していれば働きやすかった
•海外旅行、推し活やスポーツなど、職員それぞれがプライベートを充実させながら働けていた
•保育内容に疑問があればよりよい保育を求めて同僚とじっくりと話し合うことができ、同僚と切磋琢磨しながら園を作っていく感覚があった
•不満だったところ
•特にないが、後述する園の運営体制の変更により待遇が悪くなり、転職せざるを得なかった
4園目:同じ職場でマネージャー職から一般保育士に
•転職のきっかけ
•3園目で、ある日突然それまでの経営陣が園の運営から手を引き、別の組織が引き継ぐこととなったため、同じ場所で以前と異なる条件で働くことに
•良かったところ
•8時間以上の勤務になった場合は残業代(通常の1.25倍)が支払われた
•不満だったところ
•マネージャー職から一般保育士の扱いになり、給与も年間休日も減少し、待遇面が以前より悪くなった
•「変形労働時間制」から「完全週休2日制」に変わったことで私にとっては休みの柔軟性がなくなった
今の環境に、まだ「納得」できているわけではない
そうして、5園目となる今の認可保育園へ。面接時に「年間休日が120日以上あること」「土曜日に出勤する場合は代休日を希望できること」「給与に一定の水準があること」を確認して、就職を決めました。社会保険以外の天引きもありません。
転職活動の際は「保育士資格や保育士経験を生かした保育士以外の仕事」も紹介してもらいましたが、仕事内容や待遇面に納得できなかったほか「やはり保育園で働きたい」という思いが高まり、今の園を選びました。
紹介された他の仕事の中には、24時間体制で夜勤があるような職もあったのですが、認可保育園なら日勤しかない上、年末年始や日曜祝日は休みです。例えば旅行に行く際、早めの出勤を希望して勤務を済ませ、その日の夕方に旅行先へ移動すれば、次の日は朝から活動することができます。休暇を楽しみたい私にとって、望ましい働き方になっていると、あらためて気づくことができました。
《画像:里山整備では、焚き火でピザを楽しむことも》
一方で、今の園は保育の内容などで「自分の考え方とは合わないかなぁ」と思う部分もあるので、ここで働きつつ、より自分に合った環境を探すことも視野に入れています。
私の場合、通常の転職サイトはもちろん、保育士専門の転職サイト、ハローワークの保育士専門窓口、保育士就職イベントなどを使って選択肢を広げ、より希望に近い職場を探すことができました。
「保育士の仕事を続けたいけれど、今の環境に満足できていない」という皆さんにはぜひ、さまざまな手段を活用しながら、自分にとって働きやすい園を見つけてほしいと思います。
編集:はてな編集部