貴重な深海生物がみられる<沼津港深海水族館>に行ってみた 「深海の特殊さ」を知る?
極限の環境が広がる深海。
そんな深海の世界を見ることができるのが、静岡県沼津市にある「沼津港深海水族館」です。
沼津港近隣にある複合観光施設「港八十三番地」内に向かうと、観光客でにぎわう食事処やお土産屋さんに並んで、深海生物で飾られたユニークな看板が見えてきました。
神秘的な空間&深海生物がずらり<沼津港深海水族館>
沼津深海水族館の館内には深い海の底を思わせる神秘的な空間が広がり、普段まず目にすることのない深海生物がずらり。
ストローのような口を持つサギフエなど不思議な姿の深海魚たちが、水槽の中でひっそりと佇みながらも存在感を漂わせていました。
また、同館の2階は「シーラカンス・ミュージアム」となっており、冷凍標本や映像展示を通じて、太古から姿をほとんど変えずに生き続けてきたシーラカンスと向き合う貴重な体験ができる場所でもあります。
規模としては決して大きな水族館ではありませんが、ひとつひとつの展示が大変興味深く、時間を忘れて見入ってしまいます。
目の前に広がる駿河湾は日本で最も深い湾
沼津港深海水族館の魅力を支えているのは、目の前に広がる駿河湾の存在です。
なぜこの場所に深海水族館があるのか──それには駿河湾が日本で最も深い湾であることが関係しています。
最深部がおよそ2500メートルの駿河湾は、港からほんの数キロ沖に出ただけで水深が1000メートルを超えるという独特な地形を有します。
展示されている生物は地元の深海底引き網漁で捕獲された生き物たちで、世界的に希少な深海生物が展示されることもあるようです。
深海の特殊な環境
沼津港深海水族館の展示を見ていると、「深海」という場所がいかに特別な環境かが伝わってきます。
光がほとんど届かない暗闇、高圧低温。人間にとっては過酷すぎる条件ですが、そこに生きる生物は、発光したり、透明な体を持ったり、独自の姿へと進化していました。
暗い水槽に青白く光る生物を見ていると、まるで宇宙を旅しているような気分になります。深海にはまだまだ未知の部分が多く、研究がすすめられています。
深海の海綿から抽出された化合物ががん細胞の増殖を抑えると言われたり、生分解性プラスチックが深海微生物に分解されることが実証されたりするなど、未来の医療や産業にもつながる可能性があるそうです。
港町・沼津は地域ぐるみで深海推し
沼津港深海水族館のある「港八十三番地」は、港町らしい活気にあふれています。
深海バーガーや深海丼など深海をテーマにしたメニューや深海探索をできるアトラクションなどもあり、地域ぐるみで「深海」を楽しんでいる雰囲気も印象的でした。
周辺には沼津港大型展望水門「びゅうお」をはじめ、駿河湾の景色を堪能できる展望施設も充実。沼津港深海水族館を満喫した後に訪れると、広がる海の下に「もうひとつの世界」が広がっていることを実感することができるでしょう。
実際に沼津港深海水族館の帰り道では、深い青色の余韻が心に残り、非日常の世界を味わうことができました。沼津に行く機会があれば、ぜひ深海体験をしてみてくださいね。
(サカナトライター:こやまゆう)
参考文献
UTokyo-カイメンを気づかう共生バクテリア ―チョコガタイシカイメンの毒性物質はバクテリアが生産していた―
産総研-生分解性プラスチックは深海でも分解されることを実証