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【藤枝MYFC 食中毒を乗り越えた舞台裏】前日練習12人、ギリギリ状態で臨んだ激闘の結末は?みんな胸アツの試合を振り返る!

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「J2藤枝 食中毒乗り越え今季初勝利の舞台裏」。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2025年3月6日放送)

(寺田)サッカーJリーグ2部の藤枝MYFCが3月1日、選手、スタッフ25人が集団食中毒になりながら、ホームでブラウブリッツ秋田を2対1で下し、見事今季初勝利を収めました。

これが激アツな試合だったんですよ。当日、私は取材で別の現場におり、ちょっと気になってスマホの速報を見ていたんですが、勝利が決まった瞬間はガッツポーズしてしまいました。

(山田)そうですか(笑)

(寺田)3月6日に藤枝MYFCは、オフ明けで練習を再開しました。私もグラウンドに行ってきて、須藤監督と選手に話を聞いてきましたので、その内容含めて、激アツだったこの試合の舞台裏を紹介したいと思います。

まず、経緯ですが、試合4日前の練習後に食べたお弁当が原因だったようです。クラブが用意して選手スタッフ全員が食べたんですが、1日経ってから症状が現れ始めました。試合2日前の朝になると嘔吐(おうと)、下痢、発熱といった食中毒症状を訴える体調不良者が相次ぎ、あっという間に20人以上になっちゃったんですね。

(山田)20人以上ですか。
 

(寺田)実は、我が社の情報網でMYFCが発表する前に、藤枝でスポーツ合宿していた大学生の中で食中毒が出たっていう情報が入っていたんですよ。その原因になったと思われる事業者の名前を聞いて、ピンときてしまったんです。その事業者は、MYFCにもお弁当を提供していたので、担当記者に確認してもらったところ、悪い予感が当たってしまいました。

保健所の調査によりますと、原因はノロウイルスだということです。ノロウイルスは、今回の藤枝の件だけではなく、最近連日、県内外の感染事例が紙面にも載っていますね。食中毒は、夏場に起こる印象がありますが、ノロは主に冬場に多発するんですね。11月から2月はピークなんだそうです。3月になりましたが、各ご家庭でもしっかり手洗いを手洗いをして、ご注意いただけたらと思います。

(山田)気をつけなきゃいけないんだ。冬だとちょっと油断しちゃいますけどね。

(寺田)結局、MYFCは選手とスタッフ合わせて25人発症してしまい、試合前日の練習に参加できたのは全選手34人のうち12人だけだったんです。

ご存じの通り、サッカーは11人いないと試合ができないんですよね。ギリギリの人数で、安全面からクラブ内部では試合の延期や中止を求める意見もあったそうです。
 
試合日が迫る中で、クラブはJリーグと協議を重ねました。新型コロナについては厳格な実施規定があるんですが、食中毒のような状況はリーグ発足から32年の歴史の中でもほぼ前例がない異常事態で、試合ができなければ戦わずに勝ち点3を相手に献上する可能性があったんです。

(山田)なるほど。

(寺田)また、ホームゲームでチケットも既に売ってしまっているので、延期でも中止でも払い戻しなどの手続きが大変な上、損失も出てしまいます。もちろん、試合ができるかどうかは選手の健康状態が一番大事な要素ですが、クラブとしてもギリギリの選択を迫られました。社長は「J2クラブとして予定通り試合を行う責任がある」と判断し、厳しい戦いになることを覚悟して試合を決行しました。

スタメン大幅変更、ベンチ入りも足りず…

(寺田)当日のスタメンは、前節から6人変更したんですよ。FWが4人先発し、DFも人数が足りず、MFが最終ラインに入ったんですよね

(山田)普段やっていないポジションをやっている。

(寺田)実は、スタメンの中にはレギュラーじゃなかった選手もいたんです。さらに、ベンチには最大20人の選手が入れるのですが、数が揃わず18人しか入れなかったそうです。

後で須藤監督に聞いて分かったのですが、スタメンに選んだ選手の中にも体調不良者がいて、ベンチに入ったサブ組の中には、寝た方が良い状態の選手もいたようです。須藤監督自身も、症状があったそうなんです。そこは、もう気合いでというか、「それどころじゃない」ということで、ベンチに入ったんですけどね。

(山田)相当ギリギリの状態での試合だったんだ。

(寺田)そうなんですよね。この状態で、普通、勝てると思います?

(山田)思わないです。

(寺田)我が社の番記者も試合直前に先発メンバーを見て、「さすがに無理だろう、見えない力に期待するしかない」って神頼みをしたそうです。

このメンバーでどう戦うかという時、堅く守って引き分け狙いかなと思うんですが、そこは須藤監督ですからね。常に勝ち点3を取りにいくという、いつも通りの戦い方で挑んだんですよ。

(山田)この状態でも「超超超攻撃的サッカー」

(寺田)今季の主将はDFの中川創選手が務めているんですが、彼も熱い選手で、試合直前のロッカールームでは「(試合が終わった)100分後、この中の誰かがヒーローになってるよ」とチームメートを鼓舞したそうです。

(山田)その気概がすごいですね。
 

(寺田)でも当然、試合は苦しい展開になり、前半に先制点を許してしまいました。さらに苦境に陥ったところで、起死回生の同点弾を決めたのがMF浅倉廉選手。静岡学園高時代の全国選手権制覇メンバーで大卒2年目。今季開幕前にこの「3時のドリル」で紹介した、番記者の一押し選手です。

彼が前半終了間際に持ち前のテクニックを見せてゴールを決め、試合を振り出しに戻しました。彼は、今季金髪にしていて、見た目はチャラい感じですが、素直で真面目。本当にいい選手なんです。

技術が高くても、まだ球際の強さや貪欲さに欠けるところがあると感じていたんですが、この日は得点を挙げただけではなく、後半13分に至近距離からの相手シュートを顔面ブロックで防ぐ気迫を見せたんです。

(山田)みんなで守っていこうっていうように。

(寺田)ボールを受けた後は倒れ込んでしまい、その後、起き上がって10分間くらいプレーを続けたんですが、結局、脳震とうの疑いで途中交代しました。昨日、直接本人に話を聞いたら、後半のプレーの記憶がないって言うんです。「今どっちに攻めてるの?」って聞かれたチームメートがおかしいと感じ、審判に申し出て試合を止めたそうです。

「よく体を張ったね」と声を掛けたら、「泥くさくプレーするのがこのチームの信条。これで自分も藤枝の選手だって証明できた」と誇らしげでした。

「食中毒がなければ、先発出場はなかった」

(寺田)この試合のハイライトは後半43分でした。決勝点を決めたのは、浅倉選手と同期入団のMF前田選手。前田選手は藤枝市出身で清水桜が丘高から常葉大に進み、MYFCに入った選手です。静岡から出たことがないっていう生粋の地元選手なんですね。

この前田選手は、高校時代からスター選手だった浅倉選手とは対照的で、高校時代は目立った成績を収めることができなかったんです。「雑草」と言ったら失礼かも知れませんが、原石のままJリーガーになりました。

スピードとシュート力に秀でているものの持久力と守備に課題があり、これまで出場機会に恵まれず、この試合がプロになって初めての先発出場でした。本人も「集団食中毒がなければ、スタメン出場はなかった」と言っていました。

(山田)そうなんだ。

(寺田)浅倉選手とは同期の絆があり、盟友が脳震とうの疑いで途中交代になり、担架に乗って運ばれた時、「大丈夫だ。任せろ」と伝えたそうです。

(山田)格好いいな。好きだな、そういうの。
 
(寺田)そんな前田選手が、コーナーキックの跳ね返りをダイレクトで蹴り込み、勝利の立役者になったんです。「常に準備をしていた」そうで、これまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすようなスーパーゴールでした。

(山田)やはり、そういう努力があってこそなんですよね。
 

(寺田)「何かあったら、自分がやる」という覚悟ですよね。そうでないと、ここで決められないですもんね。私も、歓喜の瞬間の映像を後から見ましたが、勝利を告げるホイッスルが鳴ると、ピッチに倒れ込む選手や、ベンチ前で輪を作って踊り出す選手がいて、多くの選手がうれし涙を流していました。須藤監督も「クラブとして全員でつかみ取った1勝で、普通の1勝とは重みが違う」と話し、勝利をかみしめました。
 
今は選手もスタッフも体調は回復していて、改めて須藤監督に話を聞いたら「ピンチはチャンス。食中毒があってクラブの一体感は確実に高まった。医療関係者ら支えてくれた人たちのおかげ。サポーターの熱量からも大きなパワーをもらった」と周囲の支援に改めて感謝していましたね。
 
(山田)食中毒は当然大変だったけれども、その舞台裏は、めちゃくちゃ胸熱な試合だったんですね。

控え組も活躍したMYFCの今後に期待!

 (寺田)藤枝の選手も、いつまでも感動に浸ってはいませんよ。練習ではまだ病み上がりでコンディションが万全じゃない選手もいたと思うんですが、須藤監督は「一日一日が勝負だ」と厳しい言葉を投げかけていました。
 
前田選手も「継続しないと意味がない」と、もう気持ちを切り替えていましたし、須藤さんも次に向かって歩み始めていますからね。

(山田)これを機に絆が強くなった藤枝MYFCでいてほしいですね。
 
(寺田)今季はまだ始まったばかりですが、控え組が活躍してレギュラー陣も安泰ではないので、チーム内の競争力を高め、ぜひとも悲願のJ1昇格を果たし、藤枝を盛り上げてもらいたいと期待しています。

(山田)みんなで応援していきましょう。今日の勉強はこれでおしまい!

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