【東京レトロゲームさんぽ】ゼビウス~大人も熱狂したシューティングゲームの金字塔
1980年代、スマホどころかインターネットも一般には存在していなかった頃。行き場所のない日に足が向かう先が「ゲームセンター」だったという同志は少なくないだろう。『ペンゴ』『パックマン』といったヒット作はもちろん、そこにしかないマイナーゲームもあった。前触れなく新作が入って喜ばせてくれたかと思えば、大好きだったゲームが急に撤去されて世の理不尽さを学習させられることもあった。そんな時代に、突然登場した『ゼビウス』は、今までのゲームとは全く違うものだった。
ゼビウスとは?
1982年にナムコ(当時)から発売、マニアと感度の高い子供の間で大人気になり、1984年にファミコン版が発売。累計127万本を超える大ヒットとなり「ゼビウスの登場により、ファミコンの天下が決定づけられた」といわれるほどのキラータイトルとなった。2024年8月現在、ゲームセンター版・ファミコン版ともに、Nintendo Switch、Playstation4、PCの各社サービスで、800円・300円ほどの価格で楽しむことができる。
これからくる“未来”そのものに見えた
それまでのゲームはおおよそ1、2画面に収まるものだったのが、画面がスクロールすることで、どこまでも続く地平の先を目指して飛んでいるように思えた。音楽もキャラのデザインも、何もかもが新しかった、これからくる“未来”そのものに見えた——。のちにファミリーコンピュータへ移植された時に、同じ体験をした諸氏も多いのでは。
『ゼビウス』以前のゲームは、ほぼ1978年に登場した『スペースインベーダー』の延長線上にあったが『ゼビウス』は違った。そこには訴えかけてくるような「世界観」があった。
例えば「3機いる自機にはそれぞれ3人の主人公が乗っているの!? じゃあ1機も死なせられないじゃん……」「ボスの“アンドアジェネシス”と、壊せない空飛ぶ板“バキュラ”は同じ素材で造られてるのか。だからボスはコアにしか攻撃が効かないんだ……」などと考えさせられる、説得力のある細かい設定が散りばめられ、設定とゲームの展開に、それまでにない興奮を覚えた。
また、隠しキャラの“スペシャルフラッグ”の位置だの、壊せないはずの“バキュラ”が壊せただの、ゲームそのものの魅力的な要素に加え、ファミコン版では隠し要素で自機が無敵になる裏技があるなど、そんな話に熱くなったものだ。
レトロゲーセンのみならず、ゲームバーや大型アミューズメントセンターの片隅、ドライブインの一角などに、『ゼビウス』がある可能性は低くない。
あの時の風景は今も待ってくれている。当時、どんな未来を夢見ていたか確かめるため、レトロゲーム探しの散歩にでかけてみるのはいかがだろう。
ゼビウスから続く“縦シュー”の系譜
『ゼビウス』は「縦スクロールシューティングゲーム(以下縦シュー)の始祖」と言える作品で『ゼビウス』の後を追った作品はゲームセンター、家庭、携帯機用など問わず限りない。下写真の『スターフォース』(1984年)はゼビウスフォロワー中最も知られているものの1つだろう。
地上と空中物の撃ち分けをなくし、ゼビウスと異なったゲーム性を生み出している。
また、緊急回避というシステムを導入した『1942』(1984年)、ポップな世界観がキュートな『ツインビー』(1985年)などゲーム性が進化。さらに、敵も自分も強くなる『究極タイガー』(1987年)を皮切りに、新しい爽快性のある「弾幕系」が縦シューを受け継ぎ、現在も進化を続けている。近年、ネットで人気のゆるキャラ『ゆっくり霊夢』で一般層にも知られる『東方』も縦シューのブランドとして有名だ。
ゼビウスが遊べるのはここ!
高田馬場ゲーセンミカド in オアシスプラザ
JR・私鉄・地下鉄高田馬場駅早稲田口から徒歩2分。
10:00~24:00、無休。
東京都新宿区高田馬場4-5-10
☎03-5386-0127
ナツゲーミカド
JR・私鉄・地下鉄高田馬場駅早稲田口から徒歩1分。
13:00~22:00(土・日・祝は12:00~)、無休。
東京都新宿区高田馬場4-8-8
☎03-5386-0127
取材・文=来栖美憂 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2024年10月号より
来栖美憂
フリーライター
雑誌・新聞・ネットなどメディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。ゲーム関係では雑誌『月刊アルカディア』『闘劇魂』『GAME JAPAN』など各誌で執筆。近著に『サムライスピリッツネオジオコレクション対戦攻略ガイド』(スタンダーズ)。