「ツキノワグマとヒグマのハイブリッド個体がいる?」「温暖化で冬眠しない?」クマのウワサQ&A5選【秋田県に学ぶ②】
温暖化で冬眠しないクマが増える?
ドングリを山でまけば出没を防げる?
クマにまつわる、よくある疑問一つひとつについて、丁寧に回答しているWEBページがあります。
書いたのは、秋田県の職員です。答えている質問の数は、30個にのぼります。
Q&A全体のポイントについては、すでにこの連載の中でお伝えしましたが、ツキノワグマ・ヒグマの生息する全国各地にとって、一つひとつが参考になる内容です。
「正しく知って、正しい知識に基づいてきちんと対策すれば、無駄な衝突をせず暮らしていけると思う。ひとり一人に、正しい知識を身に着けてほしい」
そんな秋田県の思いに共感し、SitakkeでもQ&Aのいくつかを抜粋してご紹介します。
今回は、ウソ?ホント?クマに関するウワサ編です。
【Q&A全体についてのインタビュー記事:「最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?」よくある疑問30個に回答!秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと】
連載「クマさん、ここまでよ」
この記事の内容
①温暖化の影響で雪の少ない年や暖かい冬が増えると、冬眠しないクマも増えるのでは
②秋田県にはツキノワグマとヒグマのハイブリッド個体がいると聞いたのですが
③クマが人の生活圏に出てくるのはクマが増えすぎたからではないのですか
④ドングリなどのクマが食べるものを山にたくさん置いてあげれば良いのではないですか
⑤電気柵は危険ではないですか。触った人がケガをしないか心配です。
秋田県のホームページ内「クマについてよくあるご意見・ご質問」から、よくあるクマのウワサについての解説文を抜粋して5つご紹介します。(画像はHBC「クマここ」より)
①温暖化の影響で雪の少ない年や暖かい冬が増えると、冬眠しないクマも増えるのでは
クマは寒いから・雪が降るから冬眠するのではありません。食べもののない季節をエネルギー消費を抑えて乗り切るために冬眠するのです。
雪の少ない年や気温の高い冬であっても、山の中には食べものがありませんので、クマが冬眠せず活動し続けることはないと考えられます。
ただし、冬も人の生活圏にある食べもの(生ごみ、コンポスト、枝に残ったカキなど)にありつくことができている限り、冬眠せずに起きていることができます。人の生活圏でクマに食べさせないことが重要です。
②秋田県にはツキノワグマとヒグマのハイブリッド個体がいると聞いたのですが
いません。
秋田県に生息しているのはツキノワグマです(日本で野生のヒグマが生息しているのは北海道のみです)。
過去に県内で飼育されていたヒグマが逃げ出した事故が発生していますが、逃げ出した個体はその場ですべて捕獲されています。
なお、ツキノワグマとヒグマは別種の動物であり、自然界で交配し繁殖する可能性は極めて低く、現在のところ県内でそうした個体が確認された事実はありません。
③クマが人の生活圏に出てくるのはクマが増えすぎたからではないのですか
出没の多寡はクマの数「だけ」で決まるものではありません。クマの「数」のほか、「居る場所(分布)」や「山の中の食物量」などのバランスによると考えられます。
たとえば、2023年の秋はクマの大量出没が発生しましたが、2022年は出没が非常に少ない秋でした。クマはたった1年で急激に増える動物ではありません。2022年と2023年の大きな違いは、クマの数ではなく山の中の食物量だったと考えられます。
一方、山の実りがそろって不作になった年は過去にもあったはずですが、これまで無かった規模の大量出没が2023年に起きたのは、過去と現在のクマの数と分布の違いだったのではないかと考えられます。人とクマの生活空間が近接・重複した状況下で、人の生活圏にある食物にアクセスしやすい状況と山の実りの不作が重なったため、2023年の大量出没が発生したと推測されます。
④ドングリなどのクマが食べるものを山にたくさん置いてあげれば良いのではないですか
野生動物に対し、給餌などの人為的介入を行うことは基本的に望ましくありません。
クマに限らず、本来食物が不足することで生息数が抑えられていたはずの鳥獣が、給餌によって増えすぎてしまう懸念があります。加えて、本来そこになかったはずのドングリ(種子)やそれについている虫が他所から持ち込まれることで地域の生態系のバランスが崩れる可能性もあります。
野生動物は自然の中でたくましく生きています。野生動物は野生のままに。
なお、秋田県ではナラ枯れ対策や針広混交林化事業を行っており、自然の植生回復や生物多様性の確保等を図っています。
⑤電気柵は危険ではないですか。触った人がケガをしないか心配です。
市販されている電気柵を使用する限り、危険なものではありません。
過去には電気柵(のようなもの)による死亡事故が起きていますが、それは自作のものによる事故でした。
市販されているものは電気事業法や関連する省令に基づいて製造されており、流れる電気量や間隔がコントロールされているほか、安全装置が整備されています。きちんと市販品を使用すれば、電気柵は安全で有用性の高いものです。
一方で、「触ってもケガをしないくらい弱い電気でクマ対策に効果があるのか」という疑問も聞かれますが、ケガはしなくても痛みは感じます。電気柵に触れると痛いと学習することによって、クマをはじめとした野生動物は電気柵を忌避するようになります。
秋田県のホームページでは、「電気柵をクマに突破されました。効果が無いのでは」という質問に対しても、写真付きで解説されています。Q&A全文は、「クマについてよくあるご意見・ご質問」からご確認いただけます。
秋田県でツキノワグマ対策にあたっている職員へのインタビュー記事も、連載の中で紹介しています。
【①Q&Aのポイントについて:「最近のクマは、鈴やラジオの音では逃げない?」よくある疑問30個に回答!秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと](https://sitakke.jp/post/13536/)】
【②これからの自治体に求められるクマ対策について:クマ対策の「大きな前進」?法改正が進む今こそ必要な“自治体の体制” 秋田県から学ぶ、全国に通じる大切なこと】
連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。
取材協力:秋田県自然保護課
編集:Sitakke編集部IKU
2025年3~4月上映の劇場版「クマと民主主義」で監督担当。2018年にHBCに入社し、報道部に配属されてからクマの取材を継続。2021年夏からSitakke編集部。