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【天才の育て方】#23 大森陽生~最年少で天文宇宙検定3級に合格した少年のルーツ

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【天才の育て方】#23 大森陽生~最年少で天文宇宙検定3級に合格した少年のルーツ

KIDSNA STYLEの連載企画『天才の育て方』。#23は、6歳のときに最年少で天文宇宙検定3級に合格し、3年生で数学検定2級を取得した大森陽生さん。年齢制限を知りつつも2年生でJAXAの宇宙飛行士に応募した行動力や、学びを楽しむ姿勢はどのように育まれたのか。お父様の治幸さんにも同席いただき、興味に向かって突き進む彼のルーツに迫る。

「検定を受けるのも遊びのひとつなので、うまくいかなかったら、うまくいくまでやればいい」

「身長や年齢の制限があることは知っていたけど、おもしろそうだと思って宇宙飛行士に応募してみた」

こう語るのは、6歳で当時最年少となる天文宇宙検定3級に合格し、宇宙飛行士を夢見る大森陽生さん。現在10歳の陽生さんは、3歳から宇宙に興味を持ち始め、天文宇宙検定の他にも数学検定2級や英語検定準2級と次々と合格。

年齢制限があると知りつつも宇宙飛行士に応募した際は、熱意溢れる自己PRにJAXAから称賛の返信をもらった。テレビ朝日『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』の出演も話題を呼び、活躍の場を広げている。

今回は父親である治幸さんにもご同席いただき、才能が育まれたルーツに迫った。

3歳で天体や星座に魅了され、宇宙探究を始める

ーー6歳のときに当時最年少で天文宇宙検定3級に合格した陽生さんですが、宇宙にはまった背景について教えてください。

陽生さん:宇宙に興味を持ったきっかけは、3歳のときに科学博物館の展示を見たことです。天体や星座に魅了されて、そこから天文の施設にも通うようになったのですが、施設のスタッフの方が天文宇宙検定の受験を薦めてくれたんです。

父:まだ保育園の頃だったので検定試験は漢字も多いしまだ難しいかなと思いつつも、寝る前にいっしょに本を読んで勉強したりして、合格することができました。

ーー宇宙の魅力はどんなところですか?

陽生さん:謎が尽きないところです。なにかひとつの謎が解明されても、そこからさらなる謎が出てきて、宇宙の研究は永遠に続くと思うんです。

特に興味がある分野は、「無重力での生命の反応」です。たとえば将来我々が他の惑星に移住するときに、どのような条件であればペットを連れていけるのか、そのような研究にもつながります。そして、人類は火星に向かおうとしているので、火星の環境についてもとても興味があります。

父手作りプリントの勉強法

ーー天文宇宙検定の他にもさまざまな検定に合格していると聞きました。

陽生さん:宇宙に関連して数学が好きで、数学検定にも挑戦しています。3年生のときに2級に合格して、最近準1級を受けたので、もしかすると合格できているかギリギリかなと思っています。

父:陽生が検定にチャレンジするときは私も一緒に受けているのですが、今回の数学検定準1級は、私は撃沈でした……(笑)。

陽生さん:あとは英語検定は準2級を取得しています。

ーーどんどん難しいことに挑んでいる陽生さんですが、壁にぶつかったことはありますか?

陽生さん:あまり思いつかないですが、強いてあげるとすれば数学検定2級は一度不合格になったことですかね。ただ、「また次やればいっか」と思ったので、そんなに落ち込んだりはしませんでした。

数学検定準1級の勉強を始めたときは、やっぱりそれまでの問題よりもずっと難しいと感じました。それでも諦めることはなかったですね。まずは比較的簡単なところから。難しい問題は後からできるようになればいい、と考えながら勉強をしていました。

父:勉強を親子で頑張っていてすごい、と捉えてもらうことが多いのですが、息子も僕も遊びの延長だと思ってるんです。検定を受けることも遊びのひとつなので、「うまくいかなかったらうまくいくまでやればいいよね」と、余裕を持てているのかなと思っています。

ーー先日受験したという数学検定準1級は高校3年レベルとのことで、学校の勉強とは全然違うと思いますが、どのように勉強しているのでしょうか?

陽生さん:お父さんがA3サイズのプリントを毎日2枚作ってくれて、それを解いて勉強しています。まずは自分でやってみて、お父さんが仕事から帰ってきたら分からなかったところを一緒にやります。

父:市販の問題集だと計算スペースが足りないので、問題にのびのびと取り組めるようにプリントを作っています。プリントを作るのも遊び道具を作る感覚なので、苦ではないですよ。

陽生さん:お父さんのプリントは問題集で勉強するよりも、最初から問題が指定されているし、計算スペースも気にしなくていいので、集中して解けると感じています。

JAXAから称賛された10歳の自己PRシート

ーーJAXAが宇宙飛行士を募集したときに、応募書類を送ったと聞きました。

陽生さん:はい。2年生のときに、児童館の先生が宇宙飛行士の募集をしてるから送ってみたら、と本気で薦めてくれたんです。身長や年齢の制限があることは分かっていましたが、応募してみるのもおもしろそうだと思って、応募書類の他に自己PRシートも作って送りました。

自己PRシートには、自分で数学の本を作ったことや体力もあること、宇宙が大好きなことなどを写真を交えて英語で書きました。

父:児童館の先生が息子のことをすごく想ってくれるのが嬉しかったし、自分のことを知らない人に自己をPRするという経験にもなると思ったので、応募を後押ししました。

陽生さん:もちろん年齢や身長の制限があるので通過することはありませんでしたが、僕のことを応援してくれるようなメールがJAXAから届いたんです。メールのなかでもらったアドバイスを守っていきたいと思っています。

ーー陽生さんの好奇心旺盛で好きなことに熱中できる性格は、小さい頃から変わらないんですか?

父:そうですね。陽生が保育園のときにトランプにはまったときがあって、休みの日は「もう一回やろう」というのが7時間くらい続いたことがあって、すごい集中力だなと思いましたね。

陽生の祖父母が近くに住んでいて、一緒に将棋をしてくれるんですが、それも6時間くらい付き合ってくれたりして。学校の先生もそうですが、陽生のことをおもしろがって、個性を生かせるように心遣いしてくれる方々が周りにいて、それがありがたいなといつも思っています。

子どもの前でスマホは見ない

ーー大森家ならではのルールや、他の家庭と違うと思うことはありますか?

陽生さん:ルールというわけではないのですがテレビは見なくて、ラジオをよく聞いています。ラジオのほうがBGMのような感じで何かをしながら聞けるし、エネルギーを使わないんです。あと、お父さんは僕の前ではなるべくスマホを使わないと言っていました。

父:そうですね。スマホは何も考えずにボーっと見てしまうので、息子の前でダラっとした親父の姿を見せるのはどうかなと思って(笑)。あとは、特にルールを決めているわけではありませんが、家族の生活スタイルが早寝早起きなので、それが息子のいろいろな力につながっているのかなと思います。

陽生さん:僕は早ければ4時半に起きます。

父:早すぎですよね(笑)。夜も21時前には寝ますし、寝る前にいっしょに英語の本を読んだりして、それが親子の時間でもあって。一日の終わりを幸せな気持ちで終わるように習慣化しています。

親子二人三脚でいっしょに高めあう関係性

ーー子どものやりたいことを尊重するという教育方針に、なにかルーツはあるのでしょうか?

父:うーん……。僕の両親はけっこう変わっている人なので、その影響が大きいのかもしれません。少し話が変わるかもしれませんが、たとえば小学生のときに自治体主催の5年生以上が参加できるキャンプがあったのですが、僕が1年生のときに母親は「5年生のフリして行ってこい!」と言うんですよ(笑)。

そこで周りの年上の子たちに「お前本当に5年生か?」と言われて、どうしたら受け入れてもらえるか、サバイバル力を試されるような経験でした。年齢制限などの枠の中で頑張ることも大事だけど、そういう枠を取っ払った母親の教育を受けてきたので。宇宙飛行士の年齢制限があるのに抵抗なく応募してみたのも、そんな自分の経験と関係があるのかもしれないですね。

ーー陽生さんの好きなことを、お父様がいっしょに楽しんでいる印象を受けます。

父:たしかにいっしょに楽しむスタンスですね。親はどうしても教える立場になってしまいがちですが、子どもとしては教えられる、指導されるというのはあまり気分のいいものではないと思うんです。子どもなりのプライドもあるだろうし、いっしょに高め合っていくほうが、子どもにとってもいいのかなと。

陽生さん:そのほうがラクだし、お父さんのそういうスタンスをいつも嬉しく感じています。お父さんは僕が保育園のときまでは新聞記者の仕事をしていてすごく忙しくて、なかなか会えない日もあったんです。でも僕との時間を過ごしたいという理由で転職をしてくれて。それが僕はすごく嬉しかったです。

ーー陽生さんのやりたいことに一生懸命向き合ってるのが伝わってきます。ただ、どの家庭でも、時間や精神的な余裕がないことが多いですよね。

父:家庭ごとに事情が違うし偉そうなことは言えませんが、もし余裕がないときは、子どもに何かをしてあげることではなくて、あえて距離を置いてみるやり方もあるかもしれません。親が教えてないことで子どもは失敗するかもしれないけれど、失敗する経験も大事だし、あえて何も言わずに見守ってみることも必要ですよね。

もちろん余裕があれば子どもにしてあげられることも増えますが、必ずしもそれだけではないというか。時間や余裕がないなかでも、そのときにあったやり方を家庭ごとに工夫できるといいのかなと思いました。

天才が思う天才

ーー陽生さんが「この人は天才!」と思う人はいますか?

陽生さん:ただ賢い人が天才ではなくて、自分の知識や経験を活かして、それを社会や他人のために活用できる人が天才なのかなと思います。

ーーお父さんが考える「天才の育て方」を教えてもらいたいです。

父:息子が天才かどうかは一旦置いておいて、天才といわれる人は突っ走る力を持っていると思います。それを、僕のような凡人が邪魔をしないことが大切なのかなと。

たとえば植物を育てるときに、あっちを切ったりこっちを切ったり手を加えすぎてしまうと、気付いたときには他の木と同じ形になってしまっているかもしれません。その人がもともと持っている素材を活かして、あまり口を出さずに見守って、伴走することが大切なのかなと思います。

陽生といっしょに過ごしていると、あきらめずにコツコツ続けることは、すごくいろいろな可能性を広げることなんだなとあらためて感じます。本気で熱中してやっていると、周りの人が助けてくれたり見守ってくれたり。息子を通じて貴重な経験をさせてもらっていると思っています。

ーー最後に陽生さんの将来の夢を教えてください。

陽生さん:将来の夢は宇宙飛行士ですが、宇宙を地上から見守る仕事にも興味があるし、数学者や英語を使う仕事もしたいし、たくさんあります! 小学校の間には、数学検定1級を取りたいです。

編集後記

取材中も陽生さんとお父様がお互いに気にかけるコミュニケーションが多く、終始楽しそうな様子が印象的であった。「勉強も遊びのひとつ」という言葉があったが、このように素晴らしい親子関係のなかで、楽しみながら切磋琢磨してきたことが伝わった。

陽生さんはその並外れた好奇心で、宇宙の謎を解き明かし、我々の生活に変化をもたらしていくことだろう。彼が「遊びの延長」で研究する世界ではどのようなことが起きるのか、期待せずにはいられない。

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