<カニの食性とハサミの特徴・形状>の秘密 カニのハサミは挟むだけじゃない?
海辺や川辺などにすむカニ。
そんな彼らには肉食系と草食系がいるのを知っていますか。また、彼らはハサミを使って器用に食事をしますが、種類によって食べ方にも特徴があります。
身近にいるカニがどのような食事をしているか楽しみながら飼育・観察すると、面白いですよ。
カニは何を食べるのか?
筆者がペットショップで見かけたカニはキャベツを食べていましたが、キャベツがない海辺すむカニは、一体何を食べているのでしょうか。
カニは基本的に雑食の生きものですが、その食性は大きく3つに分かれます。
ただし、雑食なので、植物食性に分類される種でも肉食をすることもありますし、その逆もあり得ます。飼育する際は、食性に従って餌を与えると食いつきもよくなるでしょう。
植物食性のカニ
オカガニや陸生のイワガニ、ベンケイガニなどは植物植性のカニです。植物食性のカニたちは、木の実や落ち葉、海藻など植物由来のものを中心に食べます。
例えば沖縄などで見られるオカガニは、夜になると陸に上がり落ち葉や果実を食べる姿が観察できます。
肉食性のカニ
ワタリガニやイシガニ、カラッパなどは肉食性のカニです。小魚やエビ、二枚貝、巻貝などを中心に食べ、時には死骸をあさることもあります。
甲殻類や貝類を食べるカニはハサミで硬い殻を割るのが特徴で、ハサミが発達している種が多いです。
中でもワタリガニは泳ぎが得意なカニで、泳ぎながら小魚を捕まえて食べるという少し変わった食事の方法をとります。
デトリタス食性のカニ
シオマネキやチゴガニ、コメツキガニ、オサガニなどは「デトリタス」というものを食べています。
デトリタスとは、動植物の死骸や排泄物、微生物が混ざった細かい有機物のこと。デトリタス食性のカニたちは、砂や泥に含まれるこの“栄養カス”をこしとって食べています。
食性による食べ方の違いとは?
どのカニも基本的にはハサミを使って食事をしますが、食べ物が変われば食べ方にも個性が出てきます。
植物食性のカニは<細かくしながら食べる>
ハサミで藻や落ち葉をつまんでちぎり、細かくしながら口に運びます。
硬い木の実や果物を食べる種では、力強いハサミを長時間使って殻をこじ開ける姿も見られます。
肉食性のカニは<ハサミで中身を取り出す>
獲物を押さえ込みながら鋭いハサミで肉を裂いたり、硬い殻を砕いて中身を取り出したりします。タカアシガニのような大型のカニが魚を食べている姿は迫力がありますよ。
また、肉食性であるカラッパのハサミには貝を割るための突起がついており、殻を粉砕して中身を食べます。
デトリタス食性のカニは<こして食べる>
一見するとハサミで砂や泥をつまんで食べているように見えますが、口に運んだあと食べられる部分だけをこしとっています。食べられない部分はだんご状にして捨てられます。
例外として、キンチャクガニのようにハサミを使わずに食事をする種もいます。キンチャクガニは両バサミにイソギンチャクを持っているため、脚を使って器用にエサを口へ運ぶのです。
イソギンチャクを持つためだけのハサミ……なんだか贅沢な気もしますね。
食べ物によって異なるカニのハサミの形状
私たち人間が食べ物によって使用する食器を変えるように、カニたちのハサミは食性に合う形状になっています。エサをちぎったりつまめるようになっているだけでなく、特別な特徴を持つものもいます。
例えば、肉食性のうち巻貝類をよく食べる種は缶切り状になっていることが多いです。マルソデカラッパなどのカラッパ類がわかりやすいです。
カラッパがもつハサミの片方には突起があります。脚や身体を使って対象を固定し、この突起をうまく使って殻を割るのだそう。
デトリタス食性のカニのハサミはそこまで力が強くありません。これは貝や木の実、果物を割ったり、獲物を捕獲する必要がないからと考えられます。
その代わり、ハサミがスプーン状になっており、土から餌を掬って食べやすい形状になっています。
カニのハサミの使い方を観察してみよう
カニは種によってエサが色々で、食べ方も様々です。
筆者は、デトリタス食性のシオマネキがエサを食べる様子がお気に入り。大きい方のハサミで豪快にいくのかと思いきや、小さい方のハサミでひたすらに砂を口に運んで食べる──そのギャップが面白く可愛いのです。
他のカニたちの食事の様子も見てみると、なんだか愛らしかったり豪快に食べたりと、勉強になりながらも癒されるものが多いですよ。
挟むだけじゃない、多様なハサミの用途。ぜひ水族館や動画などで観察してみてください。
(サカナトライター:バノレイ)
参考文献
名古屋大学-カニのハサミは使いよう ハサミのカタチが教えてくれるハサミの用途