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40年前のお正月映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」大ヒットした理由は若者層の支持?

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1985年12月07日 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」劇場公開日(日本)

今からちょうど40年前のお正月映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」


年末から年明けにかけて公開される映画は俗に “正月映画” と言われており、業界的にはまさにかき入れ時。当然、大作や話題作が封切られ、激しくしのぎを削る。今からちょうど40年前、1985年のお正月映画は、スティーブン・スピルバーグ製作、ロバート・ゼメキス監督による『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の圧勝で、36億円の配給収入を計上した。

ちなみに2位は『グーニーズ』の19億円。前回のコラムで取り上げた『ビー・バップ・ハイスクール』(併映:野蛮人のように)は14億円以上で3位に付けている。『グーニーズ』もまたスピルバーグがプロデュースに名を連ねていたが、当時のスピルバーグ・ブランドの影響力がよくわかるというものだ。とにかく、明るく楽しいスピルバーグ映画はヒットする。そういう時代だった。

タイムトラベルを題材にしたSFエンタテインメント


で、本稿の主役『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。興行的圧勝の要因は、当時の若者層の熱烈な支持を受けたことだろう。それらを検証する前に、まずはこの映画について簡単に解説しておこう。

タイムトラベルを題材にしたSFエンタテインメントで、主人公はマイケル・J・フォックスが演じるアメリカの高校生マーティ。知り合いの発明家ドクが生み出したタイムマシン、デロリアンに乗って1955年に飛び、交際直前の両親と出会う。ところが、運命のいたずらか未来の母親は気弱な未来の父ではなく、あろうことか活発なマーティに惚れてしまった。このままではタイムパラドックスが生じ、未来が変わってしまう! かくしてマーティは父と母を無事に結び付けようと奮闘することになる。

映画スターの仲間入りを果たしたマイケル・J・フォックス


アメリカではサマーシーズンに公開され大ヒットしたが、日本公開はそれから約半年後。お正月映画らしい、おめでたさ(もちろん、良い意味での)を感じさせることを思えば、これは正解だった。タイムトラベルという題材はSF大作らしいし、笑いの要素も盛りだくさん。ラブコメディの要素も含まれているからカップル受けも良い。それでいて物語はスリリングなのだから、エンタメ性はきわめて高濃度だったのだ。

そして何より、主人公マーティのキャラクターがじつにチャーミング。危機に直面してアタフタしながらも、うまい具合に回避するバイタリティといったら! 特技はギターで、1985年の世界ではヘビメタを奏でていたが1955年のロックンロール草創期の音にも対応できる。マイケル・J・フォックスは本作で映画スターの仲間入りを果たしたが、それも納得の大熱演。とにもかくにも魅力的であったことは、劇中で彼が着ていたダウンベスト、彼が駆るスケボーが瞬く間に若者の必須ファッションアイテムとなったことからもうかがい知れるだろう。

挿入歌にはヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「パワー・オブ・ラヴ」


そして、やはり音楽について語らないワケにはいかない。アラン・シルヴェストリによるスコアは現在も映画音楽の名曲として語り継がれている。それ以上に有名なのは、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースが提供した挿入歌「パワー・オブ・ラヴ」。1985年9月に全米ナンバーワンとなったこの曲は、日本でも映画公開前から話題となっており、レコードの日本リリースも劇場公開より4か月ほど早かった。これほどの曲だから、映画の中でどんな使われ方をしているのか気になったが、劇中では前半でサラリと使われただけで肩透かしを食らった。ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースはもう1曲「バック・イン・タイム」というナンバーを提供しているが、映画を観た後ではエンドクレジットで延々とフィーチャーされるこちらの方が印象に残る。

もうひとつ、触れておきたいのは劇中、1955年の世界でマーティが黒人のバンドとともにダンスパーティのシーンでプレイするチャック・ベリーのヒット曲「ジョニー・B.グッド」。ベリーのオリジナルがヒットしたのは1958年だが、1980年代を生きていたマーティは、これをすでに知っていた。1955年の世界でこの曲にショックを受けたバンドのメンバーは、慌てて従兄のベリーに電話して聴かせる。つまり映画の世界の中では、ベリーのこの有名な曲はマーティからパクッた… というタイムパラドックス的ジョークが成立していた。この曲も映画の好評を受けて、サントラからシングルカットされている。

と、いろいろと書いてみたが、これらはあくまで当時を知る者の覚書だ。本稿を執筆するにあたり、改めて観直したが、やはり面白い。奇しくも2025年は劇団四季による舞台版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が日本で上演され好評を博したが、これは本作がエンタテインメントの普遍性を宿しているから成し得たことだろう。明るく、楽しいことこそ正義。1980年代には、そのような楽天的空気が確かに流れていたし、お正月ともなればなおさらだったのだ。

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