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「爆豪を演じた人生とそうでない人生では雲泥の差があるとすら思っています」戦後の細かなセリフから“本当の爆豪勝己”を紐解く──『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』爆豪勝己役・岡本信彦さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2016年にTVアニメの放送が始まり、その後も7シリーズにわたって物語が紡がれてきたアニメ『僕のヒーローアカデミア』。

『FINAL SEASON』では、デクと死柄木弔の戦いがついに決着。様々な困難を乗り越え新たな時代を迎えたヒーローたちは、各々の夢に向かってそれぞれの道を歩みだしました。

今回はアニメ完結にあわせて、爆豪勝己役・岡本信彦さんのインタビュー第2弾をお届け! 『FINAL SEASON』の振り返りはもちろん、ご自身にとって『ヒロアカ』はどういった存在なのかお話いただきました。

 

【写真】岡本信彦にとっての『ヒロアカ』、爆豪勝己とは【インタビュー】

『ヒロアカ』は一生忘れられない宝物

──ついに出久と死柄木の戦いに決着がつきました。ふたりの姿を見届けた感想をお聞かせください。

岡本信彦さん(以下、岡本):敵<ヴィラン>アカデミアで育った悪のカリスマ・死柄木と、そんな彼を救う道を選んだデクの戦いというのは、もはや普通のバトルではありませんでした。どこか悲しさがあったり、別の解決策を考えさせられたり。

もしかしたら死柄木の気持ちが理解できる人だって結構いるんじゃないかなって。それくらい展開全てが、今を生きる自分たちのエネルギーになるような戦いでした。

──後半は戦後の世界が描かれました。爆豪としては第168話の病室で涙するシーンが印象深いです。

岡本:“泣っちゃん(涙する爆豪)”の収録は大変でした。作中でデクの次に泣いているので意外性は感じなかったものの、「いや……っだァ……ええ……マジで……」の部分は“デクが“無個性”になることが嫌だ”という意味なのか気になってしまったんですよね。結局、気になりすぎて堀越(耕平)先生に聞いたのですが「『いや、マジでなんなんだ』を嗚咽混じりで言っている」と教えていただいて。

このシーンの収録の際は、先生から教えてもらった「いや、マジでなんなんだ」のイメージで臨んだんです。そうしたら全くディレクションがなくて。堀越先生と音響監督の三間(雅文)さんの考えが、言葉を交わさずとも一致していて、すごいことだと思いました。

病室のシーンではほかにも、「俺の“個性” 掌 由来だもん」というセリフのト書き(台本に記載されている補足事項)に「迷いなく」と書いてあったんですけど、じゃあ「だもん」ってなんだ?と。

普段の爆豪は「だもん」とは言わないと思っていて、もしかしたらこの会話の時だけ少年の心に戻ったのかも。もしくは、これまで頑張って突っ張っていただけで、本当の爆豪勝己は「だもん」を使うような子なんじゃないかなって。

それで本来の爆豪少年のイメージで演じようとしたんですけど、今度はその前の「いーや 良いよ」の「ー」が気になってしまいました。ポロッと出る言葉なら「いや」でいいのに、なぜ先生は「ー」を付けたのだろうと。僕としては、爆豪の中で義肢にする迷いがあって、その考えている間が「ー」に含まれているんじゃないかなって思いました。

結果、ト書きの「迷いなく」は少年に限りなく近い状態であるものの、ポロッと出てきた言葉ではないというのがアフレコ現場でのオーダーだったんですね。やっぱり言葉ひとつ取っても突き詰めるのが『ヒロアカ』の現場ということなんだなって思わされました。

──アニメスタッフ側の解像度の高さがわかったのですね。

岡本:そうですね。別のセリフで「今、女性人気を意識してるでしょ?」みたいなことを言われたりして(笑)。僕としては全く意識していなかったんですけど、「泣いてるかっちゃん、かわいそう」みたいにアピールした演技になっていたらしいんです。

僕としてもそれは爆豪にも申し訳ないので、次のテイクは泣くのを我慢するようにしたんですけど、今度は冷たくなってしまったんです。結局、最後にいいテイクが録れたんですけれど、やっぱりそれも先生が言っていた通りのニュアンスになっていて。

──要所で細かなディレクションがあったのですね。

岡本:たくさんありました。だけど、その全てがありがたかったですし、僕の成長にも繋がっています。

──改めて、岡本さんにとって『ヒロアカ』はどんな存在ですか?

岡本:本当に出会えてよかったです。爆豪を演じた人生とそうでない人生では雲泥の差があるとすら思っています。それほど作品に感化され、勇気をもらい、そして、爆豪に心を動かされ、翻弄され続けた、そんな10年でした。

──いい思い出も、大変な思い出もたくさんあるのですね。

岡本:そうですね。爆豪のことは大好きですけど、とても大変で、プレッシャーを感じ続けたキャラクターでもあって。だからこそ最後まで演じられてホッとしつつ、どこかさみしい気持ちもあります。そういう意味でも、僕にとっての『ヒロアカ』は一生忘れられない宝物みたいな存在です。

【取材・撮影 MoA】

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