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【葉山 宿泊レポ】ホテル葉山館 - 移りゆく葉山を見守る老舗宿

湘南人

葉山町森戸海岸沿い、元町商店街の中央に位置するホテル葉山館。
スーパー元町ユニオンや旭屋牛肉店への路地にあるこの場所は、葉山住民なら誰もが一度は通る町の心臓部です。

しかし、地元民がホテルに足を向けることは少なく、館内に入ったことのある住民は案外珍しい存在かもしれません。

今回は、先代社長の矢部潔さんと現社長の矢部浩章さん親子に、葉山の歴史とともにホテルの歩みを伺いました。

画像出典:ホテル葉山館

創業時期は「誰も覚えていないほど昔」

現在の建物が完成したのは2007年。

当時1階角にオープンしたスターバックスは、葉山初出店として話題を呼びました。
潔さんが「町の中心にくつろげるコーヒーショップを」との思いで本部と粘り強く交渉した結果でした。

建て替え前、この場所にはホテル葉山館と懐石料理店「くめ吉」がありました。
潔さんは社長業の傍ら、仕出し弁当や正月料理の配達も自ら担当していました。

さらに遡れば、木造の葉山館と蕎麦店「東屋(あずまや)」、雄之屋(ゆうしや)食料品店、幸福堂書店が入る2階建て建物がありました。
潔さんは蕎麦の出前を一手に引き受け、「町中どこのお宅へでも地図なしで行くことができた」と振り返ります。

旅館としての葉山館は100年を超える歴史を持ち、葉山町で一番古い旅館で浩章さんで13代目になるそうですが、創業時期については「もう誰も覚えていない」というほどの昔なんだとか。

取材日に見せてもらった大正時代の地図には、葉山館も東屋もしっかりと記載されていました。

大正時代の葉山本町商店街地図

賑わった保養地時代

かつての葉山は企業や金融機関の保養所、国家公務員の研修施設、著名人の別荘が立ち並ぶ一大リゾート地でした。

現在のスーパーユニオンがある場所はモータープールと呼ばれる広大な駐車場で、夏には観光バスが次々と到着し、大勢の観光客が降り立ちました。
少年時代の潔さんは、バスが着くとクーラーボックスを抱えてアイスキャンディーを売りに走りました。

森戸海岸は海水浴客で埋め尽くされ、アイスは飛ぶように売れました。
旅館と海岸、駐車場を何往復もした記憶がいまでも鮮明に蘇るそうです。

夜になると保養所の浴衣を着た観光客が下駄を鳴らしながら元町商店街を歩きました。
「カランコロン」という下駄の音と笑い声が響く、活気あふれる観光地でした。

昔の葉山館(社長祖母の日記より)

木造の旅館時代に使われていた看板

地域とともに歩み、次世代へ

幼い頃からアイスキャンディー売り、学生時代は自転車での蕎麦配達、社長就任後は商店街の活動と、潔さんは常に地域と共に歩んできました。

2011年、その志は息子の浩章さんに引き継がれました。
浩章さんは大学で観光業を学び、ニュージーランドでのワーキングホリデー、国内有名ホテルでのバーテンダー経験を積んで家業に参入されました。

現在はホテル経営と2階のバー「Soul Blender」の店長を兼務しています。

現在の葉山館

客室は和洋室合わせて12室。
屋上には宿泊者専用の個室ジャグジーとデッキを完備します。
また、1階には海から帰った方のための足洗い場もあります。

2階には浩章さん経営のバーと、かつて「くめ吉」で腕を振るった板前による地魚料理店「まさ吉」があります。
「まさ吉」は宿泊プラン利用者の食事会場も兼ねています。

画像出典:ホテル葉山館

画像出典:ホテル葉山館

屋上デッキからの眺望(向こうに見えるのは江ノ島・富士山が見える日も)

交流の場への思い

バー「Soul Blender」には特別な思いが込められています。

建物設計時、潔さんは地元民と観光客の交流を願ってギャラリースペースを計画し、客室を1室減らして、この空間を確保しました。

浩章さんはその思いを継承し、美味しいお酒を通じて宿泊者と地元住民が交流できる場を目指しました。
今では近隣住民が観光客に穴場スポットを教える光景も見られます。

海外から観光客や横須賀基地のアメリカ人も訪れ、浩章さんの海外経験が活かされています。

画像出典:ホテル葉山館

多彩な利用客

宿泊客は遠方からの観光客だけでなく、実は都内など近隣からのリピーターが多いそうです。

いわゆる観光や海水浴だけでなく、「かつて住んでいた葉山の地を懐かしんで」「葉山の家族・友人に会いたい」といった理由のほか、湘南国際村での研修やヨットレースでの利用もあります。

毎年決まった時期に必ず訪れる常連客も少なくなく、かつて文豪や著名人に愛されたように、現在も多くの人々に愛され続けている証ですね。

和室があるためファミリー利用も多く、徒歩3分で行かれる波の穏やかな森戸海岸で一日遊んだ後、和室で家族全員で並んで眠るのも楽しい思い出になります。
ホテルの背後にはスーパーという立地の良さも魅力です。

家族的なおもてなし

「親戚の家に泊まりに来たような温かさ」
これがホテル葉山館の接客方針です。

浩章さんをはじめ、フロントスタッフの多くが葉山の長期住民で、地元情報の提供や子どもへの気配りなど、親身な対応を心がけています。

「遠慮なくスタッフを頼ってほしい」と浩章さんは言います。

観光と生活の両立を目指して

日本へ外国人観光客が急増する中、浩章さんが目指すのは「観光と町民生活の両立」です。

オーバーツーリズムを避けながら町の発展に貢献したいと、葉山町商工会青年部、商店会副会長として地域活動に参加。里山づくりにも取り組んでいます。

長年この地で町の変遷を見守ってきたホテルだからこそ、これからも観光客と地元住民双方の憩いの場であり続けてほしいと願っています。

さいごに

取材は開店前のバーで行われました。

幼少期から家業のために働き続けた潔さん。
その築いたものを守りながら地域のために工夫を重ねる浩章さん。

二人のお話に耳を傾けていると、時間があっという間に過ぎてしまいました。
次回はぜひ浩章さんお手製のカクテルを味わいに訪れたいと思います。

貴重なお時間お話をありがとうございました。

ホテル葉山館

チェックイン

14:00

チェックアウト

10:00

営業時間

朝食:お食事スタート時間を7:30〜8:30から選べます。
ディナー:お食事スタート時間を18:00、18:30から選べます。
※どちらも要予約

アクセス

JR横須賀線逗子駅・京浜急行逗子・葉山駅よりバスにて森戸海岸バス停より徒歩5分

住所:神奈川県三浦郡葉山町堀内980

駐車場:敷地内にあり(宿泊者の利用は各部屋1台無料)
※敷地内駐車場が満車の場合は近隣コインパーキングを案内(20時間分サービス券を無料発行)

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