忘れ物問題は高校生の今も継続中!?発達障害親子、ルーティン崩れでバタバタの毎日でも
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
高校生になったコウの新生活が始まりました
息子のコウが高校生になり、新学期が始まってからしばらく経ちました。今までの中学校生活にはなかったお弁当作りや電車通学などが加わったことで、親子ともども少し落ち着かない毎日を送っています。
これまでのコラムにもしばしば書いてきたことですが、ADHD(注意欠如多動症)のコウはなくし物や忘れ物が多いです。年齢が進んだこととADHD(注意欠如多動症)治療薬の服用をしていることにより年々減ってきてはいるのですが、高校生になった今も早速忘れ物が続いています。
新生活が始まると、コウの忘れ物はだいたい二通りのどちらかのパターンに振れます。ひとつは、環境の新鮮さによる緊張感と刺激の効果でしばらく忘れ物が減るパターン。もうひとつは、慣れない環境による緊張と疲れから忘れ物が増えるパターンです。
今回はどうやら後者だったようで、最初の一週間で、いきなり二度も大きな忘れ物をしかけました。
一度目は宿題のワークブック。二度目は、授業で使うプリントを挟んでいたファイル。どちらも、コウが玄関を出てしばらくたってから私が気づき、慌てて自転車で追いかけることになりました。
駅まで徒歩で通学しているため、私が自転車に乗れば何とか追いつける状況だったのがせめてもの救いでした。
「アレ持った!?」悲喜こもごもの新生活(字余り)
コウの忘れ物の多さは今に始まったことではありません。そのため、これまではコウが玄関に向かった時点で、リビングや学習スペースに忘れ物がないか私は大まかにチェックしていました。
(コウは出かける直前でなぜかカバンの中の物を出していることがあるので、コウが玄関に向かってからチェックするのが一番よいタイミングなのです。玄関での忘れ物も、見送ってからチェックするのが一番です)
コウからは「高校生になってからも必要に応じて朝の確認のサポートは行ってもらえると助かる」と言われています。そのため、手伝える範囲で手伝いたいと思っているのですが、慣れない早起きとお弁当作りで私自身も手一杯になってしまいました。私の朝のルーティンが確立するまでは当分見落としが続きそうです。
そんな感じでいつも通りの新生活をスタートさせたコウですが、少しだけ「あれ?コウも少し変わりつつあるのかも?」と感じることがありました。
先日、保護者向けの学級懇談会があったときのことです。教室に入って息子の机に座ってみると、中の収納には数枚のプリントがたまっていました。でも、それらは机の奥でグシャグシャにはなっておらず、平らな状態のまま教科書やノートと一緒に積まれていました。教科書やノートも雑に押し込まれることなく、収納の中にきちんと並んでいました。
提出期限が迫っている保護者向けのプリントはないかチェックしながら、私は「折れていないプリントってめくりやすいな~!」と感動していました。いつもはまずプリントのシワを伸ばすところから始めていたので、プリントを読むだけで一手間かかっていたのです。
コウが高校生活に慣れてきた頃にはプリントたちも再び机の奥で畳まれてしまうかもしれませんが、「すごい!プリントが真っすぐだ!!」という驚きは新鮮なものでした。
先のことは分からないからこそ、今を大事にしたいと思いました
コウの『自分ではまだ気づいていない無自覚な忘れ物』は、担任の先生との懇談で発覚しがちです。小学生の頃から今に至るまで、忘れ物に対する本人の自覚と実際の抜けの間には、いまだに一定のズレがあるからです。そのため、高校生活が始まった今も、私は「再来月の個人懇談で課題の未提出について言われる可能性大かもな~!」と予測して心の準備をしています。
このように相変わらず悩ましい状況が続いているコウの忘れ物事情ですが、始業式の後に撮影されたクラスの集合写真に写るコウは、明るい表情で笑っていました。「気がかりなことはいろいろあるけれど、この新しいスタートを今は素直に喜ぼう」と思わされる一枚でした。
執筆/丸山さとこ
(監修:初川先生より)
コウくんの新生活、そしてコウくんをサポートするさとこさんの新生活についてシェアありがとうございます。これまでの“新生活”における「傾向と対策」から、心の準備をしたうえでの実際になっているのが何よりだなと思いますし、まっすぐのプリントからコウくんの成長も感じますね。高校生になるとお弁当を用意することであったり、家を出発するのが早くなったりするので保護者の方々の生活にも多かれ少なかれ変化があります。まだまだ慣れない時期と思いますので、慣れるまでは多少の苦労もやむなしと腹をくくりながら、コウくんやさとこさんに合ったルーティンが見つかっていくことを願っています。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。