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【打楽器奏者鈴木彩さんインタビュー】 ベルギーから帰国、5年ぶりに地元沼津でコンサート。映像と音楽のコラボレーション

アットエス

沼津市出身で現在はベルギーに活動拠点を置く打楽器奏者鈴木彩さんが2月15、16の両日、約5年ぶりに地元でコンサートを開く。静岡県東部を中心に芸術活動を行う一般社団法人スケラボのプロデュースで、会場は過去に何度も演奏した沼津ラクーン。「ホーム」での演奏を控えた心境や、ベルギーでの生活の実際を聞いた。(聞き手・写真=論説委員・橋爪充、ライブ写真=スケラボ提供) 

今回は新しい要素も取り入れた演奏をしたい

-沼津での演奏は同じ会場で2019年末に行われたスケラボの「空中音楽会」以来でしょうか。

鈴木:そうですね。だいぶ前になるので、ここの響きがどんなだったか、思い出しながらリハーサルしたいと考えています。今回は三島市にお住まいの美術家の永冶晃子さんとのコラボレーション。大きなスクリーンと、床に映像を投影します。映像を邪魔しないように楽器を配置する予定です。

-沼津ラクーンでは6台のマリンバを6人で演奏する「360°marimba」(2018年)をはじめ、何度も演奏されていますが、あらためて会場の印象を聞かせてください。一般的な音楽ホールとはかなり構造が違いますよね。

鈴木:ステージと客席が分かれていないので、自由度が高いと思っています。どう客席を配置するかといったことですね。柱が空間を制限していますが、その制限の中で遊ぶ、といったこともできます。

-「360°marimba」は強烈な演奏でしたね。あらためてこのような実験的な編成でコンサートのアイデアはどうやって出てきたのか教えてください。

鈴木:ベルギーでいろいろなものを見たからでしょうね。特に10人の打楽器奏者が浜辺にあるような丸い石をたたく演奏に参加したことが影響したかもしれない。10人がそれぞれ一定のリズムを打つんですが、ちょっとずつ違うんですよ。ちょっとずつずれていく。いろんなリズムが13分の間に繰り広げられて、一番最後は最大公倍数で戻ってくる、みたいな。これを輪になってやりました。

-会場は旧西武百貨店の8階に位置していて、窓が大きく取られています。夜景が目に入るのも特徴ですよね。演奏しているときは景色は目に入っているのですか。

鈴木:夜景は、演奏している私の背中にあることが多いですね。今回は、プロジェクターから出る映像とのコンビネーションを研究する必要があると思います。

-共演する永冶さんとは面識があるんですか。

鈴木:初めてご一緒します。(スケラボ理事でアートマネージャーの)住麻紀さんのご紹介です。2024年にベルギーでCDを出したんですが、音のイメージに合うような映像を作っている方がいないかと相談したら、永冶さんがいいと。

-コンサートに向けて期待感が募りますね。

鈴木:音楽以外のジャンルのアーティストと共演する時は、即興的な要素が強くなります。今回もそう。今のところ音楽の構成が頭の中にありますが、映像とぶつけたときに何か誘発されるものがあったらいいなと。インスパイアされるものがきっとあるはず。自分なりに新しい要素も取り入れた演奏をしたいと思っていて、今回初めて人前に出すものもあります。楽しみにしています。

2018年に沼津ラクーンで実施した6台のマリンバを6人で演奏する「360°marimba」

CD制作が決まり、曲を作り始めた

-2024年6月発表の「Winged Seeds」について。ベルギーのレーベルからリリースされていますが、制作のいきさつを教えてください。

鈴木:ソロコンサートにレーベルの人が来て「CDを出さないか」と。何を収録しても良かったんですが、収録したい曲が3曲ぐらいしかなくて、最初はどうしようかと思いました。それで、自分で曲を作り始めたんです。

-フレデリック・ジェフスキー、エリック・グリスウォールドらの名前がありますが、これらは「カバー」でしょうか。

鈴木:カバーというより、楽譜通りに演奏していますね。

-そうなんですか。だいぶオリジナルな感じがします(笑)。これまで作曲はしていなかったんですか。

鈴木:即興演奏にあたり短いモチーフを作っておく、というのはやっていました。ただ今回のように楽曲の長さをあらかじめ決めて作るのは初めて。結構プレッシャーがかかりましたね。

-1曲目「Leaf Vein」はビブラフォンのループが気持ちいいですね。ギターのフィードバックのような音も聞こえます。

鈴木:「5」(拍子)で数えています。ご指摘の長い音はコントラバスの弓を使っています。ビブラフォンを右手で演奏しながら弓も動かしています。

-ポエトリーリーディングが入った楽曲も含め、全て一人で演奏しているのでしょうか。

鈴木:はい。アルバムリリースのコンサートが入ってくるだろうと思ったので、全部ライブで演奏できるように考えて録音しています。

-グリスウォールド作の「SPILL」には金属的な音が入っていますね。

鈴木:あれは漏斗のようなものを天井からつるしてお米を10キロぐらい入れ、お米が下に落ちてきたところにいろんなものを置いて音を出しています。楽譜ではなく、ガイダンスのようなものがあるんです。米の量や、(落とすための)高さが書いてある。今回のコンサートでも演奏する予定です。

2019年に沼津ラクーンで行われた「空中音楽会」での鈴木さんの演奏

「どこまでできるか」で10年が経過

-ベルギーに拠点を移して10年ほど経過します。

鈴木:2年間勉強したら帰ってくる予定だったんですが、少しずつお仕事をいただけるようになって。どこまでできるかやってみようと思っていたら、10年たってしまいました。おかげさまで忙しくさせてもらっています。

-ベルギーの文化芸術の状況、そこでの生活はいかがですか。

鈴木:現代音楽がかなり盛ん。そこに予算がたくさんある国の一つだと思います。日本ではクラシックの打楽器を勉強していましたが、最近はシアターの分野でも働いています。演奏だけでなく、頼まれたらパフォーマーとしてもやっていくという感じ。音楽家として認められるとさまざまなことができる環境だと思いますね。

-ベルギーにはどんなタイプの人が多いのでしょうか。

鈴木:おおらかで細かいことは気にしません。大胆な人が多いかな。大局を取ると言うか、引きで見た時に良ければいい、という価値観なんですよね。小さいミスを気にしません。大胆なアイデアもたくさん出しますね。

<DATA>
■デビューアルバム発売記念 AYA SUZUKI SOLO CONCERT Winged Seeds~翼果(ヨッカ)~
出演者:鈴木彩
会場:沼津ラクーン8階
住所:沼津市大手町3-4-1 
日時:
2月15日(土)午後6時半開場、7時開演、8時終演予定
2月16日(日)午後6時開場、6時半開演、7時半終演予定
入場料:前売2500円、当日3000円、U25(25歳以下) 500円
※未就学児の入場不可
販売場所: スケラボオンラインショップ、 ハンの辻村(沼津市高島本町2-27)

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