浅煎りコーヒーの面白さにふれる。沼垂テラスにオープンした「VOST COFFEE」。
イベント出店を中心に、無店舗で活動を続けてきた「VOST COFFEE(ボストコーヒー)」が、沼垂テラス商店街に実店舗をオープンしました。店主の渡辺さんが自家焙煎したこだわりのスペシャルティコーヒーを、一杯一杯ワイングラスで提供しています。コーヒーショップをはじめた経緯や提供しているコーヒーのことについて、お話を聞いてきました。
VOST COFFEE
渡辺 和輝 Kazuki Watanabe
1997年村上市生まれ。高校卒業後、大学に進学。卒業後は上京しシステムエンジニアとして都内のIT企業に勤める。コーヒーの活動をはじめるため転職し、新潟にUターン。「VOST COFFEE」の名前でイベント出店を中心に活動。今年9月に沼垂テラス商店街で実店舗をオープン。「FRUITS ZIPPER」のファン。
刺さる人には刺さる、「面白い」コーヒー。
――実店舗のオープンおめでとうございます。まずは渡辺さんがコーヒーショップをはじめるまでの経緯を教えてください。
渡辺さん:もともとはまったく別業種で、東京で大学を卒業してからIT企業でエンジニアをしていたんです。
――飲食業とはまったく違うお仕事ですね。
渡辺さん:ただ僕が大学を卒業したのが2020年で、コロナ禍に差し掛かったタイミングだったので、入社してからは家でのリモートワークがほとんどでした。その頃に毎日、眠気覚まし用にスーパーで買った溶かすタイプのインスタントコーヒーを飲んでいたんです。
――リモートワークをきっかけにコーヒーが生活の一部になったわけですね。
渡辺さん:そのうち、カフェのような体験もしながら自分のしたい作業ができるコワーキングカフェを経営したいと考えるようになりました。それならコーヒーの知識もちょっとは必要だよなと思ってITの仕事と両立しながら勉強をしはじめたら、どハマりしちゃって。気づいたら新潟に帰ってきてコーヒー屋になっていました(笑)
――コーヒーのどんなところに魅力を感じたんでしょう?
渡辺さん:はじまりがインスタントコーヒーだったので、勉強をしはじめたときは「コーヒー=苦い」とか「いいものだと香ばしい香りがする」っていうふうに思っていたんです。
――それが実際に勉強してみたら違ったと。
渡辺さん:あるとき行ったお店で、浅煎りのコーヒーに出会って。これもコーヒーなのかと驚きました。苦くもないし、素人だった自分でもフルーティーさを感じたし、奥深すぎるなと思ってすごく魅力的に感じました。
――「VOST COFFEE」さんのラインナップも浅煎りのコーヒーがメインだと思うんですけど、それはコーヒー屋さんとして活動をはじめる前から決めていたことだったんですか?
渡辺さん:決めていました。万人受けするようなお店を目指しているわけではないんです。深煎りは置いていないし、僕が「面白いな」って思った豆だけを厳選して置いているので、刺さらない人には刺さらないし、刺さる人には刺さるのかなって。
――焙煎もご自身でされているんですよね。どこかで学んだんですか?
渡辺さん:焙煎は独学です。同じ業種の先輩に話を聞ける関係性になれたので、よかったなって思います。
――他のコーヒー屋さんからも勉強しているんですね。
渡辺さん:他の有名なお店の豆と自分が焼いている豆とで同じ種類を使っていることがけっこう多いので、飲み比べたりしています。「ここはもうちょっと改善しなきゃな」って、その繰り返しですね。ジュースみたいに飲めるコーヒーを目指して焙煎しています。
――置いている豆の種類は定期的に変わるんですか?
渡辺さん:めっちゃ変わります。買った分の豆だけ出して、なくなり次第新しく追加していくっていう感じですかね。今置いているのは4種類なんですけど、今後は10種類くらいから選べるようにしたいと思っています。
練り切りと浅煎りコーヒーのペアリング。
――気になっていたんですけど、メニューに和菓子があるようですが……。
渡辺さん:西区にある「にむらや菓子舗」さんにご協力いただいて、オリジナルで作っていただいた練り切りを提供しています。
――じゃあコーヒーとの相性も考えて作られているんですね。どうしてコーヒーに和菓子を合わせようと?
渡辺さん:僕、去年の11月から今年の3月まで静岡の熱海に住んでいたんですよ。静岡ってお茶が有名じゃないですか。散歩をしていたときにイートインもできる老舗の菓子舗にふらっと入って、お抹茶と練りきりを一緒に食べてみたらめちゃくちゃ合って。
――そんなに相性抜群だったんですね。
渡辺さん:お抹茶って、ジュースみたいにインパクトがある甘さはないし、コーヒーみたいな強い苦味もないし、すごく繊細な味だと思うんです。なのに練り切りのあんこと合わせても喧嘩しないし、どっちの良さも感じられたんですよね。
――お互いが上手く引き立て合っていたと。
渡辺さん:浅煎りコーヒーの味わいの繊細さは、お抹茶との共通点なんじゃないかなと。実際に静岡のお店から練り切りをテイクアウトして、家で浅煎りコーヒーとペアリングしてみたらめっちゃ合ったんです。その頃から「店を持ったら練り切りも出したいな」って考えていました。
――ホットもアイスもワイングラスで提供されているんですね。
渡辺さん:コーヒーの味わいって、飲む器によっても多少変化するんです。でもそれって専門的なところで、お話ししてもなかなか伝わらないことが多いんです。それならカップで飲むよりもワイングラスで飲む方が圧倒的に特別感を感じていただけるかなと思って、ワイングラスで提供しています。
いつかは地元でスペシャルティコーヒーのお店を。
――実店舗をオープンされてまだ間もないですけど、はじめてみていかがですか?
渡辺さん:ただただ楽しいです。実は去年の秋頃までは、東京に本社があるIT企業の仕事をリモートでしていて、コーヒー屋の活動と両立していたんです。
――じゃあITの仕事がお休みの日に「VOST COFFEE」としてイベント出店を?
渡辺さん:そうなんです。「休みの日=コーヒー屋」だったので、毎日コーヒー屋をやれている今は気持ち的に毎日休みみたいな感じです(笑)。自分が楽しいことができているし、仕事をしている感覚がないですね。
――すごく楽しんでお店をやられているんですね。最後に、今後挑戦してみたいことってありますか?
渡辺さん:変わらず面白いコーヒーを出し続けたいですし、業界のトレンドもしっかりと捉えて、最先端のコーヒーをどんどん揃えていきたいなと思っています。それから漠然とした夢ではあるんですけど、地元が村上市なので、スペシャルティコーヒーを出すお店を村上でやりたいですね。今はちょっとずつ動いているところです。
VOST COFFEE
新潟市中央区沼垂東3-5-18 沼垂テラス商店街