2人の巨匠監督が描くドイツの“ゼロ年”から、今、何が見えるのか?『ドイツ零年』『新ドイツ零年』公開
第二次世界大戦後の廃墟と化したベルリンを舞台に、ひとりの少年を通して戦争がもたらす残酷さを描いたイタリアの巨匠ロベルト・ロッセリーニの『ドイツ零年』(1948)と、ベルリンの壁崩壊の翌1990年、東ドイツに潜伏していた老スパイの帰還の旅を描いたジャン=リュック・ゴダールの『新ドイツ零年』(1991)が、特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]として、12月20日(土)より公開される。
ドイツの[ゼロ年]から、今、何が見えるのか
ジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーをはじめヌーヴェル・ヴァーグの監督たちに多大な影響を与えた、ネオレアリズモの旗手ロベルト・ロッセリーニが『ドイツ零年』で描くのは、第二次世界大戦後の廃墟と化したベルリンの街に生きる少年とその一家の物語。病気の父と無職の兄に代わり、学校に行かずに働く少年エドモンドは、ある日、街中でかつての担任教師エニングに出会う。今は闇商売に手を染めるエニングが説くナチス思想に、無垢なエドモンドは次第に感化され……。
1947年の夏にドイツの市街で撮影された本作は、『無防備都市』(45)、『戦火のかなた』(46)とともに《戦争三部作》と呼ばれ、ほぼオール・ロケ、素人俳優の起用といったネオレアリズモの手法を駆使し、戦争の悲惨さをロッセリーニ独特のドキュメンタリー・タッチで描いている。当時のベルリンの映像が、圧倒的な迫力で観る者に迫ってくる。
ナチス・ドイツが崩壊した1945年を、ドイツにとっての<ゼロ年>と示したロッセリーニに対し、東西ドイツが統合された1990年を<新ゼロ年>としてゴダールが作り上げたのが、現在公開中の遺作『シナリオ』にも引用されている『新ドイツ零年』だ。冷戦期に東ベルリンに潜伏していた老スパイの“西への帰還の旅”を、主にドイツに関連した哲学や文学、音楽、映画などを膨大に引用しながら描いている。
前年にベルリンの壁が崩壊した1990年のドイツ。西側のスパイとして東ベルリンに30年間潜伏していた諜報員レミー・コーションのもとへ、軍情報部のゼルテン伯爵がやってくる。「すべて終わった」と告げられたレミーは、ゼルテンに勧められるがまま、西側への帰還を目指して東ドイツを大きく迂回する旅に出る……。主人公のレミー・コーションを演じるのは、50年代に“FBI捜査官レミー・コーション”を演じたシリーズで一躍フランスのスターとなったエディ・コンスタンティーヌ。ゴダールのSF映画『アルファヴィル』(65)でも同名の探偵役で主演し、一躍カルト的存在となった。
『ドイツ零年』の主人公エドモンドと『新ドイツ零年』の主人公レミー、何かを見つめる2人の横顔を大きく囲む数字の0(ゼロ)がインパクト大のポスタービジュアルが公開された。2人の監督が描く、それぞれの[ゼロ年]を続けて観ることのできる貴重な機会となる。
特集 ロッセリーニ×ゴダール[2つのゼロ年]は、12月20日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国公開。ポストカード2枚付きの前売り券2回券2,600円(税込)が、シアター・イメージフォーラムにて10月18日(土)より発売開始予定。