「たかが、つわり」は命の危険も! 産婦人科医が「気合や根性で乗り越えないで」と警告! 入院が必要な「妊娠悪阻」とは
妊活中から妊娠超初期の特徴を産婦人科医・柴田綾子先生に取材。妊娠3ヵ月(8~11週)のつわりのピークと乗り越え方(全4回の3回目)。
【▶画像】7週目ごろの赤ちゃんはブルーベリーぐらいのサイズ!妊娠3ヵ月は、多くの方がつわりのピークを迎え、心身ともにつらい時期です。日常生活や仕事に影響が出る一方、お腹の赤ちゃんは人間らしい姿へと急成長しています。妊娠3ヵ月のつらい時期を乗り切るためのセルフケアや、職場・家族のサポートを得るためのヒントについて、産婦人科医の柴田綾子先生に解説してもらいました。
赤ちゃんはイチゴ大に! 妊娠3ヵ月のママと赤ちゃんの状態
妊娠3ヵ月は、妊娠8~11週までの時期です。お母さんの体は、ホルモンの影響によりつわりがピークに達する時期に入り、生活に支障を感じる方も多いでしょう。
赤ちゃんは人間らしい姿に近づき、器官の形成が進んでいきます。エコー検査では、イチゴ1個分ぐらいのサイズの小さな赤ちゃんが手足を動かす様子が見られるかもしれません。
イラスト/吉田いらこ
つわりのピーク到来! 症状を和らげるセルフケアとマイナートラブル
妊娠3ヵ月ごろにつわりのピークを迎える方も多いでしょう。吐き気や嘔吐、においへの過敏さで食事がとれず、体重が減ってしまう方もいます。無理にバランスよく食べようとせず、「食べられるものを食べられるときに少しずつ取り入れること」が大切です。冷たい飲み物やゼリー、果物などが口にしやすいこともあります。
また、ビタミンB(特にビタミンB6)を含むサプリメントやマルチビタミン(ビタミンAは入っていないもの)、ショウガ、柑橘系は、つわりの症状を軽くすると報告されているのでおすすめです。
ショウガは、ショウガ湯やショウガ飴の形が取りやすいでしょう。病院によっては、つわり中のムカムカを和らげる作用のある漢方薬の処方を受けることもできます。受診の際、産婦人科の先生に相談してみてください。
また、妊娠2ヵ月に引き続き、以下のようなマイナートラブルも多く見られます。
・強い眠気や体のだるさ
・便秘や胃の不快感
・胸の張りや痛み
・下腹の張りや腰の重だるさ
・頻尿
子宮のすぐ前側にある臓器が「膀胱(ぼうこう)」です。妊娠初期は子宮が少しずつ大きくなるため、すぐ近くにある膀胱が圧迫され、頻尿の原因になることがあります。
ただし、頻尿の原因が膀胱炎による場合もあります。妊娠中は妊娠前に比べて膀胱に雑菌が入りやすく、さらにつわりの時期は水分摂取が少なくなりやすいことで膀胱炎をおこしやすい条件がそろいます。
頻尿だけでなく、排尿時の痛みや発熱などの症状が見られたら、早めに産婦人科を受診しましょう。
写真:アフロ
仕事はどうする? 「母健連絡カード」を活用して周りにサポートを求めよう
妊娠3ヵ月は、仕事や生活の調整を考える時期でもあります。特に、つわりや妊娠中の症状で配慮が必要な場合は、職場へ妊娠を報告するひとつのタイミングといえるでしょう。
症状が強い場合には、医師が発行する「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を活用して、勤務時間の短縮や休養の必要性などを職場に正確に伝えることができます。上司に相談する際に心強い味方となってくれるでしょう。
母健連絡カードを使って、出勤時間を遅くして電車に座りやすくしたり、勤務調整をして重労働を無くしたりすることができます。症状が重い場合、在宅勤務が可能な業種であれば、一時的な在宅勤務への変更を申請することも可能です。
写真:beauty_box/イメージマート
また、家事や育児、仕事を一人で抱え込むのは大きな負担になります。夫や家族にサポートをお願いすることはもちろん、家事代行や宅食サービス、便利な家電などを取り入れて少しでも負担を減らしましょう。
こうした工夫は妊娠中だけでなく、産後の生活にも役立ちます。
「たかが、つわり」と我慢は禁物! 入院が必要な「妊娠悪阻」とは?
つわりによって食事がほとんどとれない、水分しかとれない、体重が急激に減るといった場合は、「妊娠悪阻(にんしんおそ)」の可能性があります。
妊娠悪阻とは、つわりの症状が強くなり、治療が必要となった状態を指します。入院が必要になるケースもあるため、早めに産婦人科を受診しましょう。
イラスト/吉田いらこ
特にビタミンB1が欠乏すると、「ウェルニッケ脳症」と呼ばれる命に関わる状態になることがあります。妊娠悪阻は気合や根性で乗り越えられるものではないため、我慢は禁物です。
また、妊娠12週までは、自然流産が起こりやすい時期です。安静に過ごしても避けられない場合もありますが、無理をせず、体のサインに耳を傾けながら過ごしましょう。
一人で頑張りすぎない 周りにサポートのお願いを!
妊娠3ヵ月はつわりがピークを迎え、心身ともにつらい時期です。すでに体は無理している状態のため、一人で頑張りすぎず、周りを頼ることが重要です。
家族やパートナー、職場の人など、身近な人にサポートをお願いしましょう。頼られることで、周りも自分の役割を意識し、協力しやすくなります。
普段は気にならない「におい」も、妊娠中にはつわりを悪化させる原因になることがあります。柑橘系のアロマやマスクの着用で、においによる影響を和らげる効果もあります。
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妊娠3ヵ月は多くの方がつわりのピークを迎える時期です。ママはつらい時期ですが、赤ちゃんはお腹の中でどんどん人間らしい姿に変化していきます。
エコー検査で赤ちゃんの姿や仕草に癒やされる方も多いはず。周りに頼りながら、無理をしない生活を心がけましょう。
取材・文/メディペン(広田沙織)