正社員不足の中、「管理職になりたくない」若手は多数 企業の7割がリーダー人材不足に危機感
帝国データバンク(東京都港区)は3月18日、企業の将来を担う「リーダー人材」(管理職相当以上)の不足を感じている企業が7割近くに上るとの調査結果を公表した。背景には、育成に割ける時間の不足やリーダー候補となる人材の絶対数の不足、さらに若手を中心とした「管理職になりたくない」という意識の広がりがある。
同社が実施した調査では、正社員全体の人手不足を感じている企業は53.4%とコロナ禍以降で最多となったが、リーダー人材に限ると、それをさらに上回る深刻な状況が明らかになった。
リーダー不足の背景に「育成の時間不足」と「人材の絶対数不足」
調査によると、「リーダー人材の不足を感じている」と回答した企業は67.8%に上り、「感じていない」(21.1%)を大きく上回った。
企業からは、プレイングマネジャーの常態化により育成時間の確保が難しくなっていることや、過去の採用抑制によってリーダー候補となる人材の母数自体が減少していることが、課題として挙げられた。
・人員が少ないと、優秀な人材はリーダーになる前に実務能力が高くなりすぎてしまい、管理職になっても現場を離れられず、次のリーダー育成まで手が回らない(機械工具卸売・三重県)
・現リーダー層もプレイングマネジャーで、中途採用者や部下の育成・勤怠管理などに追われ、ノウハウを蓄積する余裕がない(調味料製造・愛媛県)
・過去に採用を抑制した影響で、育成以前にリーダー人材が不足しているのが最も深刻な問題」(石油化学製品製造・東京都)
若手の7割が「管理職拒否」 意欲喚起が最大の課題に
リーダー人材を育成する際の課題として、「リーダー職への意欲の向上」が59.8%と最も多く挙げられた。次いで「リーダーシップの発揮」(50.4%)、「部下を育てる力の不足」(49.4%)が続いた。単に能力ではなく、組織全体の力を高める観点での課題が浮き彫りとなった。
日本能率協会マネジメントセンターが2023年4月に実施した調査でも、労働者のうち約8割が「管理職になりたくない」と回答しており、意欲の醸成が喫緊の課題であることがうかがえる。
また、識学が2024年12月に20歳代・30歳代の社会人を対象に行った調査でも、「管理職になりたくない」と回答した割合は70.3%に達した。その理由としては、「責任が重くなるため」(47.9%)、「ワークライフバランスが崩れると感じる」(43.9%)が上位に挙げられた。
識学では、働く上で重視する点として「ワークライフバランス」を挙げた回答者が3割を超えたことから、企業には「仕事(ワーク)」の管理を徹底することで、従業員の「ライフ」との調和をはかる視点が求められていると指摘している。
この調査は2025年2月に実施され、全国2万6815社を対象に有効回答数は1万835社(回答率40.4%)だった。詳細は帝国データバンクの公式リリースで確認できる。