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堤真一と瀬戸康史がジョナサン・マンビィ演出の『A Number―数』で初共演 互いのことや公演への意気込みを語る

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(左から)堤真一、瀬戸康史

『トップ・ガールズ』『クラウド・ナイン』などで名高いイギリスの劇作家キャリル・チャーチルの二作品が同時上演される。日本初演となる『What If If Only—もしも もしせめて』と、日本でもたびたび上演されてきた『A Number—数』で、SF的な雰囲気をたたえたこの二作の演出を手がけるのはジョナサン・マンビィ。葛藤を抱えた父と、自分がクローンであることを知ったその息子の会話劇である『A Number—数』で初共演する堤真一と瀬戸康史に作品への意気込みを聞いた。

ーー出演が決まってのお気持ちをお聞かせください。

:ジョナサンとまたご一緒できるならば、どんな作品でもよかったんです。そうしたら、まさかこういう作品が来るとはなあと(苦笑)。ジョナサンはどちらかというと、コロスというか、結構大人数を使った演出が多い印象だったので、まさか二人芝居とは思わなくて。それにしてもこれ、手ごわいホンだからね。やってみないとわからないですね(笑)。

瀬戸:僕は、ジョナサンさんとは結構前にワークショップでお会いしていて。堤さんは先ほど初めてお会いしたんですが、お二方ともすごくご一緒したかった方たちなので、ものすごくうれしいです。ワークショップって自由にやるじゃないですか。ジョナサンさんは、そこを尊重してくれて、いろいろなことをやらせてくれる演出家だなとそのとき思って。堤さんは、僕、ドラマ『やまとなでしこ』が大好きで。

:おお。約25年前ですよ。

瀬戸:僕が子供の頃から活躍されていた方で、これまでまったく共演の機会がなかったので、こういう二人芝居でご一緒できるということに本当に興奮しています。

(左から)瀬戸康史、堤真一

ーー脚本を読んでいかがですか。

:これ、お客さんも最初は何を話しているのかまったくわからないと思うんです。ジョナサンのことですから、最初からわからせるような流れにはしないと思いますし、最初はお客さんもわからないままで進んでいって、徐々にわかってくるのか……。でも難しいですね。もしかしたら最後までわけがわからず終わってしまう人がいてもおかしくないぐらいの作品かもしれないですね。科学とか、技術が進んでいったとき、人はどこまで人の命というものに関わっていっていいのか、どの程度神の領域に介入していっていいのかという話だと今は捉えているところですが、最先端技術というものは、すばらしい成果を人間の生活にもたらしてきましたが、一方では、その使い方によっては、人間の良心に関わってくる部分がとても大きいと思います。そういう力は、絶対に良いことだけに使われるわけではなく、犯罪にも使えてしまう。そのあたりの葛藤がある作品かな、と今は感じています。でも、そういう問題に答えはないですし、こういう答えがないタイプの作品を、観てくださった人がどう感じるかですよね。観た方が最終的に、「何が言いたかったんだろう……」となって終わる可能性もあると思いますが、ジョナサンもわかることだけを求めていないと思うんです。『What If If Only―もしも もしせめて』と二本合わせたときにお客さんにとってどういうものが生まれてくるのか、二本の作品での相乗効果もあるとも思います。

瀬戸:脚本を読む前にプロットみたいなものを読んだんですが、クローンとか、父と子の関係性とかあって、割と重かったり悲しいテーマの話なのかなと思ったんです。でも、読み終ったとき、とても希望がもてる作品なのかなと感じました。それは、最後に出てくる、僕が演じるマイケルという人間の人生のとらえ方、生き方が、わかりやすく言うと前向き、ポジティブで、そういう生き方をしたいと僕も日々思っているので、そこに共感したんです。観てくださる方はどうとらえるかわからないですけど。

ーー現時点で演じる役をどうとらえていらっしゃいますか。

:僕の演じる役はね、本当のことを言ってるのか嘘をついてるのかよくわからないんです。息子に対する思い入れは間違いなくあると思うのですが、どこまで本当なのか。これが全部本気だとしたらめちゃくちゃ天然の愚か者という気もするし。それは稽古でどういう解釈でやっていくかジョナサンと話しながら作っていこうと思っています。

瀬戸:そうですね、自分にもしクローンがいましたって言われても、へえくらいの感じですかね。何だろう、その相手と合体して、その人が送ってきた人生が自分の中で全部思い起こせるというわけでもないでしょうし。たまたま遺伝子情報が一緒なだけの人みたいな感じですかね。僕は今回三役やらせていただくんですけど、今のところは違う人たちを演じていくという気持ちですね。

(左から)瀬戸康史、堤真一

ーーお互いの印象をお聞かせください。

:CMでよく見てます!

瀬戸:(笑)。さっき初めてお話しして、とても気さくで、話がしやすい方だなと思いました。

:ジョナサンも本当に全然くだらない質問から入って大丈夫だから。

瀬戸:なるほど。

:役者ってどこか知的作業をしているような気持ちになるじゃないですか。だから、バカと思われたくない。ましてや、演出家には。だけど、僕は僕なりに理解してますっていうことを一生懸命やるよりは、わからないところから始まって、そこからこう紡いでいこうという、ジョナサンはそういう作業をしてくれる演出家。自分たちの正解を見つけていこうという感覚の持ち主で、1+1は2じゃなくて、僕らにとっては3だったらそれでいいという考え方だから。先生じゃないんですよね。一緒に何かを作り上げていく人。ジョナサンには、自分の無知さ加減とかも全部さらけ出していっていい。そういう稽古がまたジョナサンと一緒にできることが楽しみです。

瀬戸:今の話を聞いているだけでわくわくしました。ジョナサンさんとちょっと話したときに、このお話を日本人にわかりやすくはしたいけれども、舞台を日本に変えるとかそういうことはもちろんしないと。ただ、イギリスの階級制度みたいなものは、訛りだったり服装とかで日本よりもすぐわかっちゃうと。僕が演じる三役も、どういう階級でどう人と接するのか、この人はどう暮らしてきたか、イギリスの人は観ていてすぐわかると言っていて。でも、日本って割と階級があるようでなくて、ないようであるみたいにふわふわしてるので、僕もどうしたらいいのかわかりませんと言ったら、そこは一緒に作っていきましょうと。だから、堤さんがさっきおっしゃっていた通り、先生と生徒みたいな関係ではなくて、一緒に作っていくっていう感じの人なんだなと思って、すごく楽しみですね。

:僕、二人芝居は何度かやってきましたが、毎日毎日違うんです。急に、ああそういうことかって、もう公演が終わるこんな時期に今頃わかるのかって思ったり。気づきの連続というか、逆に言うと型通りのことができない。お互いに助け合うことで全然違うものが見えたり、お客さんには見えない、二人だけの秘密の楽しみみたいな感覚になることがある。それが二人芝居の楽しみですね。

(左から)瀬戸康史、堤真一

ーーどんなところに難しさを感じていらっしゃいますか。

瀬戸:いっぱいありますね。階級の問題とか、三役をどう演じ分けるかとか。心を作っていけば、例えば、役によって猫背になるとか、そういうところもできていくと思うんですけど、その違いを自分は伝えられるんだろうかという不安もあります。

:まだ一緒に稽古はしていないですが、今の話を聞いていて、きちんとお芝居に向き合っている人だという印象を受けました。イケメンですけど(笑)、それだけではなくて、演劇、お芝居をすることに対して真剣に向き合ってきた人なんだな、と感じました。今の話しぶりを聞いていてとても芯がある人なんだなって思いましたね。

瀬戸:ジョナサンさんに対してもそうですけど、質問も含めていろいろなことをお話しできそうだなと思いました。僕は昨年初めて二人芝居をやったんですけど、またやってみたいなと思って。やる前は、自分がちゃんと舞台に立って二人だけで成立させられるのか想像もつかなくて、不安の方が大きかったんですが、舞台に立つとやっぱりすごくわくわくしている自分がいて。これを二人だけでやってるのかって客観視している自分もいて、すごく興奮しました。昨年やったのはコメディだったので、例えば笑いとか、手を叩くとか、お客さんの反応がダイレクトに伝わってきたので、そう感じられたのかもしれないです。でも、今回も、お客さんが一緒に緊張している感じとかめちゃくちゃ伝わってくると思うので、それも楽しみですね。

:僕はもう一本の作品の方にも参加したいぐらいで、二本でどういうものが生まれるんだろうと楽しみにしているんです。でも、自分が出る作品については、まだ粘土をポンと渡された段階。そこからどうやってゼロから形作っていくのか、ジョナサンと瀬戸くんと一緒に稽古を通して見つけていきたいと思っています。

■堤真一
ヘアメイク:奥山信次(B.SUN)
スタイリスト:中川原寛(CaNN)

■瀬戸康史
ヘアメイク:小林純子
スタイリスト:田村和之

取材・文=藤本真由(舞台評論家)     撮影=山崎ユミ

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