年収290万円だと年金いくらもらえる?貯金はいくらあれば安心?
FPオフィス「フォルテシモ」へ依頼されたお客さまの家計簿を、mymoで診断する【うちの家計簿】。今回は27歳、実家で生活されている会社員Kさんです。今の年収290万円で老後はやっていけるかという不安に関するものです。この年収だと年金はいくらもらえるかなど、不安を一つひとつ具体的に見ていきましょう。
20代女性Kさんの相談内容
大学卒業後、昨年まで首都圏で仕事をしていましたが、体調を崩しストレスも多く、どうしても続けられなくなり実家に戻りました。22歳から働いて貯められたお金は200万円ほどです。今年から働き始めましたが、年収は以前よりもかなり少なくなりました。この年収で老後やっていけるのだろうかと不安があります。どのくらいの年収があれば老後の不安はなくなるでしょうか。なんだか漠然とした不安があるのでアドバイスをお願いします。
Kさんの家計簿は…?
収入は手取り18万7000円で、実家へ支払っているお金が3万円。月々の貯蓄は8万円です。手取りの約42%を貯金に充てられています。現在の貯金額は200万円です。
まずは、不安を集めるのをやめませんか
私たちがよく集めるものに「不安」があります。
・老後、生活ができるか不安
・教育費を支払っていけるか不安
・住宅ローンの金利が上がって払えなくなったらどうしよう
・入院したときの医療費が不安
・物価がどんどん上がっていったらどうしよう
・ずっとシングルだったら将来が不安
・戦争に日本が巻き込まれたらどうしよう
情報過多の時代で「不安」をあおられていることに慣れてしまい、「不安」を抱えているのが当たり前になっているかもしれません。
わからないこと、不安なことを数え上げたら無限に広がってしまい、眠れなくなってしまうかもしれません。歳をとることは避けられない当たり前のことなのに、生きていく、長生きすることもリスクと感じて不安になってしまっている人も少なくありません。
「不安」を解決するのはお金?
情報に振り回されたりあおられたりしていると「不安」を解決する方法は「お金」であり、なんらかの「金融商品」を購入することで解決できると考えているかもしれません。
自分が気になっている「不安」と向き合い自分で考えることから始めないと、なにも解決できません。Kさんがお話された漠然とした不安は「漠然」としているため、いつまでたってもなくならず解決できません。まずは一般論から離れ、Kさん自身のことを考えていきましょう。
年収が少なくても「お金の使い方」次第で貯金はできる
【画像出典元】「wichayada suwanachun/Shutterstock.com」
年収が高くても貯金が少なく、貯金額より負債の金額が多い人もいます。一方で、年収が低くても毎月しっかり貯金ができていて負債を抱えていない人もいます。
大切なことは、年収ではなく目的を持ってお金を使い、貯めることです。自分がどうしたら幸せを感じられるかをじっくり考え、書き出してそのことに対してお金を計画的に使っているかを確認しましょう。自分が使いたくないもの、どうでもいいものに多くのお金を使っていたら、その支出を見直し、Kさんの本当にやりたいことにお金を使うことを考えてください。
「公的年金シミュレーター」を使ってまずはKさんの年金見込み額を見てみます。Kさんが22歳から65歳まで年収300万円で働いたとすると、65歳からの年金見込み額は155万円(2024年8月試算)となります。
月額約12万9000円ですが、ここから健康保険料と介護保険料を支払って12万円程度が手元に残ることが予想されます。現在のKさんの貯金を除いた生活費が12万7000円ですから、今と同じ生活費なら、あと月1万円ほどあれば65歳以降も生活ができることになります。
ただ、Kさんが65歳になったときに現在の実家で暮らしていきたいのか、実家のリフォームが必要になるのか、今後の物価の上昇などを考慮していく必要があります。
22歳で就職したとき現在のKさんをご自身が予想していなかったように、これからも予想のつかないことがおこるかもしれません。求める幸せは人それぞれ違います。これからいろんなライフプランの変化があっても、自分自身の幸せの価値観を見失わないようにしていただければ雑多な情報に振り回されることも少なくなると思います。
自分の納得できるお金の使い方ができていれば、自信がついてきます。長期的な視点で自分のやりたいことをしっかりみつけて、目的をもってお金を貯めるようにしましょう。目的が明確であればあるほどお金が貯まりやすくなります。
実家暮らし、貯蓄の目安は手取りの40%
実家暮らしの場合、家賃、光熱費、食費の負担が大きく軽減されることがメリットです。しかし、Kさんが将来ずっと今のままご実家で暮らしていくかどうかは分からないので、家を出たときに自分で家賃を支払うことも考えておく必要があります。
家賃は手取り25%程度が目安です。たとえば家賃を5万円として考えると現在の貯金8万円のうち5万円は家賃の支払いにあてなければならなくなり、残り3万円が貯金できる金額となります。
実家で暮らしていると収入を使い果たしても電気や水道がとまることもなく生活が安定します。今の生活だけを考えれば貯金への意欲が湧かなくなることもあるかもしれませんが、将来のご自身の生活の場所、必要な資金などを考え、手取りの40%以上を目安に貯金することを考えておきましょう。
長期投資の魅力、毎月3万NISAで積み立てるといくらに?
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たとえば、毎月3万円を積み立てて運用するとします。年3%の収益が期待される商品に投資した場合、10年間の投資期間で貯めることができるのは420万円程度です。20年間投資した場合では、約985万を貯めることができます。10年と20年、期間は2倍ですが複利の効果で積立額は2.34倍となります。
Kさんは20代、時間を味方につけて長期投資を続けることで将来の資金を計画的に準備することが可能になります。投資商品にはリスクはありますが、仕組みを十分に理解し早めに準備を始めることで、リスクを抑えつつ、長期投資の効果を得ることができます。
ストレスを減らすことが節約につながる
ストレスの多い環境で仕事をしていると、体調を崩してしまい医療費がかかることもあるかもしれません。また外食やさまざまな支出が増え、カード払いなども増えて家計管理もままならなくなり貯金ができなくなる可能性もあります。
ストレスの少ない幸せな環境で生活をすることで、無駄な出費を抑え、安定した家計管理をすることができるようになります。Kさんの今回の転職は年収面ではマイナスになったかもしれませんが、年収以外の面ではプラスの効果もあるのではないでしょうか。
「不安」を集めすぎないようにして、Kさんの「満足支出」を増やしていくことと、計画的な貯蓄と資産運用をご検討ください。
アドバイスを受けたKさん談
実は転職前は「貯まったら使う」ことを繰り返す生活で、収入も多かったのですが支出も多く、無計画に使っていました。眠れないことも多く、いつも体調が悪かったように思います。現在の月々の貯金は8万円ですが、もう少し増やすことも考えてみようと思います。今までも積み立ての運用なども興味はありましたが、なにも行動していませんでした。確かに、「不安」という言葉に振り回されていたように思います。今の収入でも20年後に1000万円貯められることができたら、自分に自信が持てる気がします。まずはいろんなことを自分で考えてみて1年後の目標を立ててみようと思います。
家計簿診断を終えて
相談者の中には、あふれる情報の中で、集めた不安でいっぱいになり表情が曇っていく人も少なくありません。その中で、自身の価値観と向き合って「どういう生活をしていきたいか」を具体的に考え、お金の教養を一つ一つ身につけることで、だんだん自信を持った明るい表情に変わっていく姿を拝見することがあります。ひとつ行動すると次のやるべきこと、やりたいことが見えてきます。応援しています!
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。