この涙は懐かしさ……なのか? 展示「あの職員室」で特大感情を揺さぶられたレポート
学生時代、入りたくても入れない「聖域」のような場所だった職員室。その風景を再現し、自由に探索できる展示「あの職員室」が、11月15日から12月7日まで、東京・飯田橋の学校跡地で開催されています。会期に先駆けて行われた体験会に参加しました。(※この記事は展示のネタバレを含みます)
飯田橋駅の近く、オフィスビルが立ち並ぶ一角に、その学校跡地はひっそりと建っています。玄関を入って突き当たりまで進むと、昔懐かしい雰囲気がムンムンに漂う「職員室」が見えてきました。
これから足を踏み入れるのは、15年前の2010年に閉校したという設定の架空の中学校「七橋(ななつばし)中学校」の職員室。「職員室に入る際はノックをして、元気よく挨拶を」という張り紙に従い、いざ入室します。
目の前に広がるのは、まさに「あの職員室」。山積みの教材、無造作に上着が掛けられた椅子……。無機質な学校の中で、ここだけは人間の熱が感じられる空間だったな、と思い出しました。
先生たちの個性が色濃く現れる机の上。
体育会系の先生の机にはスポーツ選手の本が、音楽の先生の机には合唱コンクールの課題曲が入ったCDプレーヤーと生徒からの寄せ書きが……。先生それぞれの仕事への向き合い方が垣間見えます。
生徒が描いた似顔絵を大事に飾る先生も。あぁ、こういうのに弱いんです。じんわりきてしまいます。
「没収ボックス」の中身も時代を感じさせます。「恋空」、懐かしい……! 2010年設定なのに、書籍化が2006年の本があるのはご愛嬌。ちょっと背伸びしたい生徒は、いつの時代もいるものです。それにしても、中学生で都こんぶは渋い。
「サイン帳」もありました。1990年代末に流行りましたが、そのブームは2010年代になっても続いていたのでしょうか。
黄色いシールが貼られたアイテムは、自由に手に取ることができます。個人指導のノートなど、当時は見たくても見られなかった情報が満載です。
「いつも怒られていたあいつ、今ごろ何してるんだろう……」。そんなふうに、自分自身のリアルな思い出と無意識につながってしまいます。
目に入るものすべてが、琴線に触れてくる。懐かしくて浮き立つような、それでいて、どことなく切ないような、名状しがたい気持ちで胸が満たされていきます。
……そんな感傷に浸っていると、ふと一冊のファイルが目に入りました。生徒会の議事録です。
ページをめくると、そこには閉校を阻止しようと、生徒たちが必死に考え、行動する様子が。署名活動を行うなど、最後の最後まであらゆる手を尽くしたことが綴られていました。
そして、閉校までの100日間を記念したお祭りの企画。
思い出の詰まった校舎を見送るため、さまざまな催しが計画される一方で、学校の周りでは奇妙な現象が次々と起こり始めたようです。
生徒たちの強い思いが、時空を歪ませたのでしょうか。それとも……。
この懐かしさの裏には、ただならぬ不気味な空気が隠されていました。閉校までの日々に、いったい何があったのか。その真相はぜひ、ご自身の目で、「あの職員室」で確かめてみてください。ちなみに筆者は体験後、特大の感情に揺さぶられ、しばらく動けませんでした。
展示「あの職員室」は、11月15日から12月7日まで、飯田橋 学校跡地(東京都新宿区揚場町2-28)で開催。開催時間は各日10時から21時までで、各20分ごとに入場、1回あたりの鑑賞時間は40分程度です。
参加にあたっては、事前予約チケットの購入が必要。料金は平日が2300円、土日祝が2500円となっています。
取材協力:あの職員室 製作委員会
(天谷窓大)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025112202.html