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チェッカーズの音楽にサックスは欠かせない!藤井尚之とジョージ・ハリスンの共通点は?

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1984年12月15日 チェッカーズのアルバム「もっと!チェッカーズ」発売日(Lonely Soldier 収録)

独自のムーブメントが形成された久留米で生まれたチェッカーズ


ロックバンドの結成というのは、だいたい同じ地域で育ち、年の近い面子が揃うというのが通例である。つまり、そこには “共通言語” というのが極めて重要となる。同じ時代に同じ場所で、同じ音楽に感動する。年の近い先輩から後輩へと音楽を継承。そこから「バンドやろうぜ!」へと発展する。また、土地それぞれの音楽的土壌というのも重要になってくる。この部分が顕著に表れている土地が博多だ。

ここには、東京のメインストリームとは異なり独自性が高い音楽的土壌があった。ブルースや60年代のビートグループから大きな影響を受けた博多のバンドは “めんたいロック” と呼ばれるムーブメントを形成する。この博多をほどなく南下した場所にある久留米もまた、独自のムーブメントが形成されていた。久留米の主流はオールディーズやドゥーワップだった。古き良きアメリカの音楽に恋焦がれ、50’sファッションの本家、クリームソーダの服を着てステージに上がる。この街で結成されたザ・チェッカーズ(以下:チェッカーズ)のメンバーにしてもそれは例外ではなかった。

チェッカーズの7人は、年長組の武内享、藤井郁弥(現:藤井フミヤ)、大土井裕二、高杢禎彦、そのひとつ下の鶴久政治。1964年生まれの徳永善也、藤井尚之は、グループ内最年少となる。

ジョージ・ハリスンと藤井尚之の共通点は?


今回は、このチェッカーズの最年少メンバー、藤井尚之の音楽性について紐解いてみたい。

メンバー最年少といえば、どうしてもビートルズのジョージ・ハリスンを思い出さずにいられない。ジョージの訃報に際し、ポール・マッカートニーは「弟みたいなやつで、いつも僕の周りをウロウロしていたんだ」という愛が溢れるコメントを残した。しかし、”弟みたい” なジョージはメキメキと頭角を現わし、中期以降の独自性は高く評価されるようになる。インド楽器のシタールやシンセサイザーをビートルズ・サウンドの中にいち早く導入。特筆すべきは、自作の「タックスマン」が7枚目のオリジナル・アルバム『リボルバー』のA面1曲目に抜擢されたことだった。アルバムの1曲目というのは、どのアーティストも相当悩むはずだ。この曲がアルバム全体のイメージを確立させてしまうと言っても過言ではないくらい重要な部分だ。

この出来事は、ジョンもポールもジョージの才能が特出していることを認めた瞬間だったと思う。そして、同じくジョージ作の「ヒア・カムズ・ザ・サン」は数多のビートルズナンバーの中でトップクラスのストリーミング再生回数を誇る。それでもどこか控えめというのがジョージの印象だろう。そんな彼を人は親しみを込めて “静かなるビートル” と呼ぶ。

藤井尚之もまた、”静かなるチェッカー” だった。控え目のはにかむような笑顔の印象が強いのもそう思える理由でもあるし、尚之が初めてオリジナリティを打ち出し、リードボーカルをとった「Lonely Soldier」もそんなイメージだった。

チェッカーズ流の反戦ソング「Lonely Soldier」


セカンドアルバム『もっと!チェッカーズ』に収録されたこの曲は、チェッカーズ流の反戦ソングだ。雪が降りそそぐ、ちょうどこんな季節の静かな原野に銃声が鳴り響く… そんなシチュエーションを脳裏に描く、短編映画のようなストーリー性の高いバラードを紡ぎ出した。当時、パーティーバンド的な側面が強かったチェッカーズが、その印象とは異なる「Lonely Soldier」は、このセカンドアルバムのアーティスト性をグッと高めることになる。また、こういったアティテュードの楽曲を初期からアルバムに収録することからもチェッカーズが最初から純然たるロックバンドであったことの証だろう。

周知の通り、86年にオリジナル路線へと舵を切った時リリースされたシングル「NANA」は尚之の楽曲だった。そして、「Blue Rain」「運命(SADAME)」「Blue Moon Stone」などのシングル曲をヒットチャートに送り込み、メインのソングライターとして欠くことのできない存在となった。まさしく “弟のようだった” 尚之はバンドの屋台骨を支えることになる。

”静かなるチェッカー” の高い音楽性とは?


ソングライターとしての藤井尚之の特徴は、幅広い層のリスナーを想定した絶妙なフックの効かせ方にあるが、それと同時に繊細なバラードから骨太なロックまで、レンジは幅広い。

1987年、メンバーとして初のソロアルバム『NATURALLY』をリリース。翌年には、今も交流が深いTHE MODSの9枚目のアルバム『EASY COME EASY GO』のレコーディングに参加。柔軟な姿勢でバンドから離れることで得たインスピレーションやスキルをチェッカーズのサウンドに反映させていった。特に後期のチェッカーズでは尚之のサックスがメロディの主体となり、それぞれの楽曲のイメージを形成していった。

解散後もソロ名義、F-BLOOD、アブラーズ(チェッカーズ楽器演奏陣が結成したバンド)、そして数多くのアーティストへの楽曲提供と、音楽ジャンルを問わない活動をコンスタントに続けている。その変幻自在の飄々としたスタンスは、ミュージシャンのひとつの理想形ではないだろうか。

”静かなるチェッカー” は、その高い音楽性と飾らない性格でファンから愛される。チェッカーズの楽曲を思い浮かべる時、まず、サックスのメロディが頭の中で鳴り響くのは僕だけではないはずだ。

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