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52歳の<おぢさん>が英国でMBA留学 持続可能な世界のための教育を/北九州市立大学教授・眞鍋和博さん

北九州ノコト

(アイキャッチ画像:眞鍋和博さん<中央>)

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。今回のゲストは、サステナブル北九州代表・SDGsコンサルティングで、北九州市立大学地域創成学群教授の眞鍋和博さんです。

50歳を過ぎた“おぢさん”が英国留学

甲木:おはようございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。

野口:同じく、西日本新聞社 野口喜久子です。

甲木:野口さん、世の中ではリスキリングという言葉をよく聞くようになりましたよね。

野口:そうですね。私は学生時代に数学科だったんです。でも会社に入って一度も役に立ったことがないと、この間ある方に言いましたら、「AIは数学が基本なんですよ」と初めて言われまして、もう一回学び直したいなと思っています。

甲木:すごいですね。私は数学科にいくというだけで大尊敬なんですけど。今日はそのリスキリングに大いに関係のあるゲストをお招きしております。早速お呼びしましょう。北九州市立大学教授の眞鍋和博さんです。よろしくお願いします。

野口:よろしくお願いします。

眞鍋:よろしくお願いします。

甲木:私が眞鍋先生に初めてお会いしたのは、先生がリクルートを辞めて北九州市立大学に着任された頃ですよね。

眞鍋:そうですね。15年前ぐらいだと思います。

甲木:最初にお会いしたのは、旦過の辺りの飲み屋さんだったと思うんです。飲み会をセッティングしてくれた方が、今日は面白いゲストを呼んでいるということで、その時に初めてお会いしました。大学の先生っぽくない人だなという印象でしたが、今も全然変わりませんね。

眞鍋:そんなことないですよ(笑) 15年ぐらいで経っていますから。おじさんです。

甲木:皆さんにはお見せできませんが、今日も素敵なパーカーを着ていらっしゃいます。

眞鍋:パーカーおじさんです。

甲木:何回もおじさんという言葉をおっしゃっているんですけど、まさに今日“おじさんの話”を聞くんですよね。インターネットのnoteにも書いていらっしゃいますが、おじさんの「じ」は「ち」に濁点で“おぢさん留学 in UK”というイギリスに留学していらした体験を綴っていらっしゃいます。

MBAを取得するためにイギリスへ

甲木:まず、眞鍋先生は何をしにUKへというところからお尋ねしたいのですが。

眞鍋:2022年の9月から23年の9月まで1年間留学していました。当時52歳と50歳過ぎのおじさんで、しかも英語を全く話せない状態でした。

甲木:何を学ぼうと思われたんでしょうか?

眞鍋:MBAを取りに行きました。ヨーロッパの大学院でMBAを取りたいと思い、イギリスを選びました。

甲木:MBAといっても、いろいろ幅広いと思いますが…。

眞鍋:サステナビリティですね。SDGsや持続可能性というキーワードが最近巷で聞きますが、私は2012年にESDというものに出会いました。 エディケーション・サスティナブル・ディベロップメントの略称で、要はSDGsが出てくる前、2000年ぐらいから国連などの国際社会の中で持続可能なための教育が大事なんだということはすでに言われてたんです。これをきちんと学んで、学生たちに教えていこうと思いました。

ESDに出会った当時、社会に対する危機感や自分の至らなさを強く感じました。至らなさというのが2つあり、1つは社会の持続可能性が非常に重要だと考えて、いろんな文献や本を読んだりして学んでいるものの、自分が直接現場に触れていないのに、子どもたちや学生たちに教えて良いのかということです。もう1つは、学生たちに持続可能性というものを教えたとしても、学生たちが大学を卒業して出て行く社会の側が、SDGsや持続可能性に取り組んでいないと、この世の中は変わっていかないと思いました。社会の方が何も変わっていないということに気づいたんです。企業がしっかり持続可能性を理解して、経営の中で展開できるようにしていかないといけない。当時、そのサポートを私がする必要があるのではないかと思いました。

甲木:実際に留学されてMBAの講義で、サステナビリティとかESDを学ばれたという事ですけど、どんな授業があるんでしょうか?

眞鍋:サステナビリティに関連した科目、イギリスではモジュールという言い方をしますが、例えばファイナンスだとか、マーケティングだとか、ストラテジー・戦略だとか、そのすべてにサステナビリティの要素が入っているイメージです。それからイギリスの大学院は一年間なので、すごくハードなんですよ。授業は週に3コマとか4コマですが、1コマが3時間です。もちろんディスカッションなどもあるので、あっという間に時間は経ちますが、僕の英語力だとやはりディスカッションに100%入れないのでなかなか難しいです。だからこそ、予習と復習にかなり時間をかけなければいけなかったんです。

サステナブル経営の真髄は「環境」と「社会」と「経済」

甲木:大学院の講義を受けて「サステナブルな経営とは何か」の答えは見つかったんでしょうか?

眞鍋:そこはなかなか難しく、永遠のテーマだと思いますけれども、基本的に大きな考え方としては、これまで1950年代、60年代ぐらいから、新自由主義という経済のあり方がかなり重視をされてきました。これは何かというと、企業は短期的に利益を最大化して株主に還元するということです。商品を大量に生産し利益を上げろということになったわけです。このような経営が企業の役割だとアメリカを中心に高度成長も加わって世界に広まったんです。ところがそれを実行したことによって、環境が悪くなり人権搾取するような経営が行われてます。このようなことにようやく国際社会は気づきました。

それで経済だけではなく、“環境と社会と経済”。この3つを三点両立するような企業経営をしなくてはいけない。この3つのことを「トリプルボトムライン」と言ったりします。経済一辺倒じゃない経営をしていくということが、このサステナブル経営の真髄になります。どのような経営かと言いますと、短期から少し中・長期の視点を持ち、株主に還元するのではなく、「ステークホルダー資本主義」と言いまして、地球や地域、我々人間も、すべての利害関係者に利益が及ぶような経営のスタイルに変えていきましょうという大きなうねりなんですよね。

甲木:今、言われているESG投資など、そういうのも全てが基本になっているわけですよね。今は取引先の人権も全部チェックされます。児童労働で搾取してませんか?とか、自分の会社はしていなくても、取引先がしていたらアウトとか、それも全てここが基本ということですね。

眞鍋:そうなんです。

甲木:まだまだお話を伺いたいところですが、今日はお時間になってしまいました。続きはまた来週お聞きしたいと思います。本日は北九州市立大学教授で、英国の大学院でMBAを取得された眞鍋和博さんをゲストにお迎えしてお話を伺いました。眞鍋さんありがとうございました。

野口:ありがとうございました。

眞鍋:ありがとうございました。

〇ゲスト:眞鍋和博さん(サステナブル北九州代表・SDGsコンサルティング、北九州市立大学 地域創成学群教授)
〇出演:甲木正子、野口喜久子(西日本新聞社北九州本社)

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