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SBSの大石岳志アナウンサーが“40年の集大成”となったジュビロ磐田戦の実況を振り返る。山田大記の劇的PK「泣くのを我慢した」

アットエス

SBSラジオの静岡サッカー熱血応援番組「ヒデとキトーのFooTALK!」で、40年以上SBSでアナウンサーとして活躍し、1月末にSBSを退社する大石岳志アナウンサーに話を聞きました。聞き手はパーソナリティのペナルティ・ヒデさんと鬼頭里枝さん(2025年1月7日放送)

SBSアナとして最後の実況は

鬼頭:入社から40年経過して、最後のJリーグ実況の仕事が2024年11月30日のJ1リーグ第37節ジュビロ磐田対FC東京戦でした。

大石:J1残留のために、ジュビロは勝たなきゃいけない試合でした。

ヒデ:大一番でしたよね。

大石:引退する山田大記選手のホーム最後の試合。しかも、とにかく勝たなきゃいけない試合なんだけれども、DAZNの中継なので基本的には中立ですよ。だけど気持ち的には「ジュビロ勝って」と思っていました。

山田選手がPKを決めた瞬間

ヒデ:この試合は、後半44分に山田選手がPKで決勝点を決めるという劇的な勝ち方で終わりました。

大石:山田選手は僕がこれまで中継した試合で結構点を取ってくれてたんですよ。PKのシーンで、最初はジャーメイン選手がボールを持ってました。ジャーメイン選手は今シーズン4回PK成功してるんで、その資料について説明していたら、ぱっと山田選手にボールを渡した。「あれ?山田選手が蹴るの?」って思ったと同時に、「これまで決めてくれてたから、これは決めてくれるだろうな」っていう安心感がありました。利き足の右で蹴るような感じで逆の左足で蹴って、見事にゴールを決めました。あれは難しいよね。

ヒデ:難しいです。それも大舞台、最後の最後であれをやるっていうのが、普通のメンタルじゃ考えられない。実況していて、驚きませんでしたか?

大石:「えぇー!」って思ったんですけど、山田選手が決めた瞬間、気持ち的にはもうマックスで「うわあ~」って叫びまくってましたね。泣きそうになりましたよ。だって、あの1点ってめちゃくちゃ重たい1点だったじゃないですか。

決めるか決めないかでまさに天と地ほどの差がある1点でした。泣きそうなのを我慢しながら絶叫しまくりました。「あぁ…良かったな」っていう感じでしたね。「やっぱり山田選手は決めてくれた、ありがとう」っていう気持ちでしたね。

実況のテクニック

鬼頭:リスナーから質問が来てます。「清水エスパルスにも、奇想天外な、先の読めないプレーをする乾貴士選手や、スピードが早くて隙のない北爪健吾選手のような選手がいます。言葉にして伝えるのってとても難しいと思います。どんなところに気をつけていますか?」

大石:トリッキーなプレーをする選手については、なるべく普段から自分の中でフレーズ、引き出しをたくさん持ってるようにしますよね。選手のプレースタイルを普段から見て、受験生の英語の単語集みたいな感じで、このプレーはこういう表現しようとか、フレーズ集を事前に頭の中に入れておく。実際にそのプレーが出たらピッと出すみたいな感じです。いきなりすごいプレーを見たら、そう簡単には言えないと思うので、準備はしてますね。

鬼頭:実況者の方からすると、乾さんみたいに先の読めないタイプは大変ですよね?

大石:読めないプレーをする人は確かに大変ですね。分からなくて描写がついていかないこともあるんですね。もし瞬間的にプレーについて描写ができなくても、後から今のプレーの説明みたいな形ですぐ言い直します。そうすれば、その瞬間にパッと言えなくても、1回ワンテンポ置いて、もう1回説明、実況すれば、そのプレーは伝わると思うので。

ボールを持っている選手の名前を伝える

ヒデ:実況中は気を抜けない。ずっと脳みそフル回転させなきゃですよね。緊張感ずっと続く。

大石:そうなんですよ。ヒデさんも解説をよくやってますよね。

ヒデ:自分なりに視聴者目線で解説の方に聞きたいことや、実況の人が見ていないところを見ておいて、「こんなことしてたんだよ」みたいなことを伝えたいなといつも気をつけています。

大石:実況者とするとすごく嬉しいです。そういうことを解説の人に言ってもらうと、話もどんどん広がるし、嬉しいですよ。

ヒデ:テレビは視聴者も絵が見えるけど、ラジオは音だけなので、人に伝えるのが至難の技じゃないかなと思います。

大石:ボールの位置関係、どっちがボールを持ってるのか、誰がボールを持ってるのかを言います。僕が中継する時は、人の名前を極力言いますね。誰が持ったかという情報があれば、ボールがどっちサイドにあるのかも伝わるじゃないですか。

例えば、ジュビロで松原選手がボールを持ったと言ったら、左サイドにボールがあるっていうイメージが伝わります。あと、名前をいうことで、その選手が今日ボールにたくさん触って、ゲームに顔を出してることがリスナーに伝わります。今日この選手を経由してるとか、この選手が活躍してるって伝わるので、名前を言う効果はすごくあると思っています。

“クモ男”を「○○〇」と表現してみた

ヒデ:ご自身の中で、名実況、名台詞を残したぞみたいな実況はありますか?

大石:1993年にJリーグがスタートした頃は、ゴールが決まるとゴールって言ってたんですよ。「ゴール、ゴール、ゴール、ゴール」みたいな。

ヒデ:可愛いギャグみたい。

大石:Jリーグ初期は個性溢れる選手がすごく多かった。例えばシジマール選手は手足が長くてクモ男と言われてたんです。僕はラジオの中継で、すでに出ている表現を使いたくないなと考えて、「マジックハンド」にしようと思ったんです。「マジックハンド、シジマール!押さえた~!」みたいな言い方をしたんですけど、どうだったのかなっていう…(笑)

ヒデ:僕もそうですけど、誰かの表現はちょっと避けたいと思いますもんね。

リスナーからのメッセージ

鬼頭:リスナーから。

「岳志さんのような実況を聞くと、やはり重みを感じます。J1昇格からしばらくジュビロ磐田の試合をSBSラジオで深夜に放送されてましたよね。ビデオテープで全て録っていました」

「大石さん、サッカー実況が本当に分かりやすい。熱い。大好きです」

ヒデ:リスナーと一緒に歳を重ねていってますね。

大石:もう忘れられてる存在かなと思ってたんで、覚えててくださったっていうのが嬉しいですね。

変わらぬSBS愛

鬼頭:大卒でSBSに入って40年。転職するとか、違う局にいくとか、フリーになるとかもあると思うんですけど、この40年は変わらずずっとSBS愛を貫いてきたんですか?

大石:40年前にアナウンサーになりたいという夢を叶えてくれたのがSBSで、ものすごく感謝しています。スポーツ実況もやりたいと思っていて、この静岡ってやっぱりスポーツが盛んな県。1993年にJリーグがスタートして、ローカル局でありながらプロスポーツを実況できるスポーツアナウンサーになれたのは本当に幸運だったし、やりがいも感じられました。だから、このままあと10年、20年ぐらいいようかなと思ってるぐらいです。

ヒデ:レジェンドから見て、鬼頭さんというのはどういうアナウンサーですか?

大石:もうパーフェクトですよ。

鬼頭:どこがだよ(笑)

大石:サッカーで言えば、例えば、エゴイストのフォワードも務まるし、中盤でパス出しをする司令塔もできるし、ディフェンスラインにいて、前でミスったのを最終ラインで全部カバーもできるっていう、そういうオールマイティーで、なおかつ泥臭いこともやるというね。もう言うことないっすよね。

ヒデ:ユーティリティなんですね。

鬼頭:この後も頑張れそうです。

スポーツ実況の経験を次世代に伝えたい

ヒデ:今後の目標や夢などはありますか?

大石:40年間喋る仕事に関わってきたので、まだまだちょっと喋れるかなと思っています。今後は会社を退職したら、フリーとして、アナウンサーとして仕事ができたらいいなとは思ってますけど、こればっかりはオファーがないと単なる無職の人なんで…。

でも、引き続き喋る仕事をやっていきたいなとは思ってます。あと、スポーツ実況をやりたいと思っても、なかなか静岡には学べる場がないと思うので、講座的なもの、人に教える仕事もできたらいいなと思ってます。

ヒデ:講師とか務めていただけたら嬉しいですね。

「40年間ありがとうございました」

ヒデ:最後にリスナーの皆さんにメッセージを。

大石:視聴者の皆さん、リスナーの皆さん、本当に40年間ありがとうございました。いろんな場面で励まされましたし、この仕事を通じていろんな楽しいこともあったし、そういうことを皆さんと共有できたことも本当に嬉しかったです。

SBSを卒業して、今後はフリーの仕事、喋る仕事をやっていきたいと思っています。SBSのサポーターとして、これからSBSを陰ながら応援していきたいと思います。どこかで会ったら声をかけてくださいね。そんな気持ちでいっぱいです。40年間ありがとうございました。

鬼頭:素晴らしい。

ヒデ:ありがとうございました。新しい大石さんにまた出会えると思うと楽しみでもあります。この番組もできるだけ長く続けますので、これからもご指導ご鞭撻をお願いします。ゲストとしてまた来てください。

大石:ぜひ呼んでください!まだスケジュール真っ白ですから、いつでも来ます!(笑)

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