世代超え つながる笑顔 釜石・平田地区の地域交流カフェ 30回目、中学生が盛り上げる
住民同士の交流を促す「平田つながるカフェ」は6月30日、釜石市平田の上平田ニュータウン集会所で開かれた。30回目の今回、福祉学習に取り組んでいる大平中(髙橋信昌校長、生徒75人)の3年生18人が企画・運営に挑戦。軽運動や歌、遊びなどを通じて高齢の住民と未就学児の触れ合いをサポートし、世代を超えた「顔の見える関係性」のつなぎ役として力を発揮した。
つながるカフェは市、平田地区で特別養護老人ホーム「あいぜんの里」を運営する社会福祉法人清風会が主催し、市社会福祉協議会が協力する。高齢者らの孤立予防や心身の健康維持などにつなげようと2021年11月に始まり、月1回の開催を継続中。地区の住民もサポーターとして関わり、地域が一体となり「住み慣れた場所で安心して生活できるまちづくり」を進めている。
同校の福祉学習は総合的な学習の一環で、同法人が支援。3年間の連続した学び(座学・実技)で、世代や障害の有無を超えた福祉の視点を身に付ける。現3年生は、学習初年の1年生の時に“お客さま”としてカフェに参加し高齢者と交流。地域社会の一員として積極的に関わる意識を高め、これまでの学びの成果を確かめる機会にと今回、企画運営に挑んだ。
この日は、地域住民ら約40人が参加した。平田こども園の年長児(17人)が招かれ、「ちゃちゃつぼちゃつぼ」など手遊び歌を披露。さらに、一緒に歌えるようにと練習してきた「川の流れのように」を元気いっぱいに響かせ、大人たちを驚かせた。
園児のかわいらしさにほっこりした後、大平中生が用意したプログラムを楽しむ時間がスタート。子どもから大人まで手軽に遊べる紙飛行機飛ばしでは、中学生のアドバイスを取り入れて作った紙飛行機を「せーの」の掛け声で放った。スピードはあっても滞空時間が短い機体や、ゆっくりと旋回しながら飛距離を伸ばす機体など、それぞれが個性を発揮。大人は童心に帰り、子どもたちと笑顔を重ねた。
カフェタイムをはさみ、高齢者と中学生は健康体操を行った。「涙そうそう」など聞きなじみのある曲に生徒が考えた簡単な動きを付けたオリジナルの体操で、高齢者は見よう見まねでチャレンジ。「北酒場」ではマイクを手にした生徒が“こぶし”を回しながら気持ちよさげに歌う姿に会場から笑いが沸き起こり、体とともに心もほぐした参加者の表情にはすがすがしさが共通していた。
終始笑顔の女性(94)は「小さい時に遊んだ紙飛行機が、今の子どもたちにも遊びとしてつながっているのがうれしい。若い人たちとのつながりが地域づくりには必要で、小さくてもこうした触れ合いがずっと続いてほしい」と期待。カフェは初参加だったが、「差別なく、みんな優しく接してくれた。地域のつながり、大切さを身にしみて感じた。人はひとりでは生きていけないから、皆さんに目配り、気配りをしてもらい、居場所をつくってもらってありがたい気持ちでいっぱい」と感激していた。
3年生は6月から、市出先機関の平田地区生活応援センターや同法人の職員らの力を借りながらプログラムや担当する係を決め、参加者の名札づくり、茶菓の購入など準備を進めてきた。当日は会場設営の後、▽受付▽案内▽おもてなし▽進行▽イベント▽体操―の6つの係に分かれ活動。カフェの終わり、進行係の中嶋真帆さんが「来てくれてありがとうございます。運営、進行は難しく、スムーズに進められないこともあったけど、さまざまな支えで成功させることができました」と感謝の言葉を伝えた。
生徒らは会場の片付けも手際よく進めた。「それぞれの係が自分の仕事をてきぱきとやって、イベントが盛り上がった」とうれしそうに話したのは、進行係の庭璃美亜(りびあ)さん。カフェでは、高齢者や幼児など対面する相手と「同じ目線」で、そして「はきはきと、口を開けて」話すことを意識したという。住民との積極的な関わり合いは刺激になったようで、「周りの人とコミュニケーションを取って互いに助け合うことは学校生活や社会に出た時にも役立つはず」とうなずいた。
今後、3年生は認知症サポーター養成講座やステップアップ講座を受講。3年間の学習の集大成として演劇にも取り組み、10月に学校文化祭や市内の認知症サポーターらの研修会で発信する予定だ。