「娘の出産が私の夢の後押しになった」まつざきしおりさんスペシャルインタビュー前編【移住から出産まで】
瀬戸内海に浮かぶ直島で暮らしながら妊娠・出産、そして育児の日々をハートフルに描くまつざきしおりさんの「たまひよ」WEB連載【えらいこっちゃ 妊娠・育児生活】が 連載100回目を迎えます。直島は周囲は約16km、人口約3000人の小さな島とお聞きしました。スペシャルインタビュー前編では、その島に住みながら漫画を描こうと思ったきっかけ、あの衝撃だった出産エピソードの裏話などを伺いました。
まつざきしおり/プロフィール
大手メーカーに勤務するが都会のコンクリートジャングルに疲れ、25歳のときに瀬戸内海に浮かぶ直島へ移住。
島の男性と結婚し、妊娠・出産。現在は古民家で家族三人で暮らしながら、のんびりとした島暮らしや育児エピソードを漫画に描きます。
娘の出産が、漫画家になる夢を後押しした
ーー直島で漫画を描こうと思ったきっかけを教えてください。
「実は漫画を描こうと思ったきっかけは娘の出産でした。
直島に移住はしたけれど、当時は若かったので永住までは考えていませんでした。
生粋の島人である夫との結婚も、島の暮らしが居心地よかったので、これも縁かなぁ、何とかなるかなぁと。
島に嫁ぐというのはそれなりの決断がいりますが、それ以上に、ここにいたいという気持ちが強かったのかなと思います。」
ーーその考えが、娘さんを出産したときに変化したのですか?
「そうですね、移住してから出産までいろいろありすぎて、ゆっくり考える暇がなかったのかもしれません。
夫と出会って、早い段階で結婚の話が出て、妊娠して出産して。この頃の人生は2倍速で進んでて、居心地良かったから流れに身をまかせてたというか。
でも娘を産んだ時に、私は直島で娘を育てるんだ、直島に腰をすえて生きるんだって、急に現実が舞い降りてきたんです。
そうしたら、子育て以外の生きがいに強く憧れを抱くようになったんです」
挫折した夢への挑戦。愛する娘が私にパワーをくれた
「もちろん、島かあちゃんとしての人生も魅力があります。
夫を仕事に見送って、日中は子どもの面倒をみて、育児が落ち着いたらまた働きに出て。
そんな未来が見えた時、本当にこのままでいいのかな、今の私でもできることはあるんじゃないかなって。
そのときに過去に挫折した漫画家になる、という熱い思いがムクムクと溢れてきたんです。
実際に島に住んでみて、わかったこと、良かったこと、意外に大変だったことを漫画にして発信したら面白いんじゃないか。
そうしたら移住仲間が増えるかもしれない。
そう思って夢を目指すことを決めました。
でも普通、漫画家になると決めたら上京するのがパターン。
しかし私は田舎に引きこもるという真逆のパターン。
ありえないなぁと思いつつ、でも開き直って好きな場所で好きなことをしようと決めたんです」
ーー反響はいかがでしたか?
「どうやら私は、島移住や田舎暮らしのコミックエッセイはその当時はまだ珍しかったようで。
私と同じように移住した人から“あるあるですよね〜”など共感してもらえたり、移住に興味をもつ人や私の漫画をきっかけに移住をしました、など、いろんな方に読んでもらえました」
どえらいタイミングで陣痛が! 壮絶出産エピソード
妊娠エピソードからスタートした【えらいこっちゃ 妊娠・育児生活】ですが、連載100回のなかでも衝撃的と名高いのが出産エピソードです。
12月の夜中に陣痛がきたため船のタクシーで本土(岡山県)へ行くことになったのですが……。
細い橋あり、荒波あり、冷たい海風あり……。まつざきさん曰く「これって何かの罰ゲーム?」という苦行レベルの出産でした。
ーーあの出産パターンは、直島ではあるあるなんでしょうか?
「わりとレアなケースのようです。
島の人から“ええ! 夜中に船のタクシーで行ったの!??”と、驚かれました。
直島の妊婦さんは里帰り出産したり、事前に本土に滞在したり、もっとスタンダードに産んでいます。
私のあのアブノーマルな出産は特別です。みなさん、直島では普通に出産できるので安心してください」
ーーちなみに里帰りしなかった理由は?
「どうしようかなぁとは迷いましたが、島の居心地があまりに良かったもので。
頼っていいよと言ってくれる義実家や、色々と相談できる友人知人も島内にいて、実母も産後は島までお手伝いに行くよと言ってくれたので安心感はありました。また、夫が立ち会い出産を希望していたのも大きかったですね。
定期便のない時間帯は船のタクシーが使えると聞いて、だったら直島でいいかなって。
小型船とは聞いていましたが、勝手に小綺麗な船を妄想していて。
まさかあんな小さなサイズで、波をまともに受けて揺れが半端なくて、窓はガラスではなく布で真冬の海風が陣痛中の体に直撃するなんて。
想像をこえていました(笑)」
ーーもしや出産後、島へ帰る時も船のタクシー?
「安心してください。帰りは定期便の大型フェリーで、おだやかな気持ちで帰宅しました」
ポジティブ夫も巻き込んで悩みに悩んだ授乳時期
ーー漫画では出産後、なかなか寝てくれない娘さんに苦戦する日々が描かれました。
「あの頃は本当に大変でした。寝てくれないし、パワフルだし。
私は母乳育児をしていたのでコマ切れ睡眠となり、寝不足で体力的にもきつくて」
ーーそんなまつざきさんを支えてくれたのは、超ポジティブと評判の夫だったんですよね?
「夫は超ポジティブ・ハッピー人間で、何も考えてない……ではなく、細かいことはまったく気にしないタイプです。
私は逆に悩むとクヨクヨといつまでも引きずるタイプで、二人一緒だとうまく噛み合うというか、ちょうどいい感じになるんです」
のちに夫の告白で知った、衝撃の事実
「最近、産後当時のことを夫婦で話したのですが、
初めての育児で私が本当に心身ともに参ってしまうこともあり、どうサポートしてあげるのが一番いいのか分からなくて大変だったようです。
産後ストレスのせいで、アメーバみたいにドロドロに溶けて落ち込んでいることもあれば、逆にムキーッとなることもあったと思うので、本当に夫も大変だっただろうと。
申し訳ないなという気持ちです(笑)」
漫画のイメージ通り、ほんわかとした笑顔が印象的なまつざきさん。話し下手なのでインタビューをちゃんとうけられるかな、とおっしゃっていましたが、面白エピソードをたくさん披露してくれました。
そんなインタビュー中に何度も出てきた「島の居心地がよくて」というフレーズ。
後編は漫画では描かれていない直島との出会い、そして居心地のよい島での育児生活の実態をお聞きしました。(文/川口美彩子)
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みーたん!