対人関係が苦手で強いこだわりがある?!自閉スペクトラム症(ASD)の大きくわけて2つある症状の特性とは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】
・人とのコミュニケーションが苦手
・非言語の意思疎通が苦手
・言葉の表面的な意味にとらわれやすい
・特定の物や事柄に対するこだわりが強い
・同じ行動を繰り返す
共感が苦手でこだわりが強い
「自閉スペクトラム症(ASD)」は、『DSM-5』によって新設された診断名で、それまで「自閉症」「アスペルガー症候群」「特定不能の広汎性発達障害」と呼ばれていたものを、ひとつにまとめたものです。
これらの症状には程度の差こそあるものの共通した特性が認められるため、別々の症状とするのではなく、さまざまな特性が含まれるひとつの連続(=スペクトラム)している症状として捉えることになりました。
この症状の特性は、大きくわけてふたつあります。ひとつは、「社会的コミュニケーション障害」と呼ばれるもので、他人との意思疎通が苦手で、特に相手の表情や視線、声のトーンから感情を読みとることができず、いわゆる「空気が読めない人」と思われてしまいます。また、他人に対する興味がないこと、言葉の表面的な意味にとらわれやすく、比喩や冗談などが理解できません。
もうひとつは、「限局された反復的な行動」と呼ばれるものです。「限局」とは「狭い」という意味で、同じ行動を繰り返したり、特定の物や事柄に強いこだわりを持ったりします。そして、これらが妨害されると、パニックに陥ってしまうこともあります。
自閉スペクトラム症の特性
■ 社会的コミュニケーション障害
相手の視線や表情から感情を読みとることが苦手で、他人との意思疎通がうまくできません。他人に関心を持たず、親交を深めることをしません。また、言葉の表面的な意味にとらわれ、慣用句や比喩、皮肉、誇張、冗談などを理解することが苦手です。
具体的な行動
•相手の視線や表情から感情を読みとることが苦手
•家族を含め他人に対する関心が低い
•あまり言葉を話さない
•慣用句や比喩、あいまいな表現が理解できない
•皮肉、冗談、誇張などの表現が理解できない
•挨拶のタイミングがわからない など
■ 限局された反復的な行動
体を揺らす、飛び跳ねる、物や空間をじっと見つめ続けるなど、特定の動作を繰り返します。また、必ず同じ道で通学する、特定の言葉を繰り返す、特定分野の固有名詞を暗記するなど、特定の物や事柄に強いこだわりをみせるという特性もあります。
具体的な行動
•体を揺らす、くるくる回る、飛び跳ねる
•ひとつの物を触り続ける
•物や空間をじっと見つめ続ける
•必ず決まった道順で通学する
•特定の言葉を繰り返し口にする、書く
•特定分野の固有名詞などを暗記する など
■ 自閉スペクトラム症はその他の発達障害と併存しやすい
自閉スペクトラム症の人は、その他の発達障害と併存しやすいという特徴があることがわかっています。約88%の人がひとつ以上の症状と併存しているというデータがあり、その症状は多岐にわたります。また、診断基準には含まれていませんが、視覚、聴覚、嗅覚、味覚などの感覚が異常に鋭くなる「感覚過敏」、その逆で異常に鈍くなる「感覚鈍麻」になっていることも多くあります。
<ミニコラム> ひとり一人が個性的!ASDの子どもや大人たち
ASDの特性は、全体的には似ているように見えますが、好きなもの、行動、言動などを細かく見れば、個々に違います。ひとくくりにできるようで、実は違うのです。個性的な面には、本人の才能や、素晴らしい個性が隠されていることもあり、それらを発見することで新たな理解が生まれることがあります。
【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊
監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。