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【子どものけいれん】約8人に1人が発症「けいれんしたら口にタオル」は危険!「けいれんの正しい対処法」〔医師が解説〕

コクリコ

子どもに多い病気やケガへの対処法の最新知識を伝える連載「令和の子どもホームケア新常識」第6回。「けいれんを起こしたら口の中にタオルを入れる」という旧常識について、小児科医・森戸やすみ先生が解説。

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【旧常識】けいれんを起こしたら、口の中にタオルを入れる。子どもの体調が悪くなったとき、ケガをしたときなどに、親が家庭で行うホームケア。

現代のホームケアの中には、私たち親世代が子どもだったころのホームケアとは変わってきているものが多数あります。子ども時代の記憶を頼りに、古い常識のまま子育てをしていませんか?

本連載【令和の子どもホームケア新常識】では、子どもに多く見られる病気やケガへの現代の正しい最新対処法を、小児科医・森戸やすみ(もりと・やすみ)先生が解説。

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数。

第6回は「けいれんを起こしたら、口の中にタオルを入れる」という旧常識について。ホームケアの常識をアップデートして、いざというときに備えましょう。

8~9%の子が熱性けいれんを起こす

子どもに見られる心配な症状のひとつ、けいれん(ひきつけ)。昔はよく、子どもがけいれんを起こしたとき「舌を嚙まないように口の中にタオルを入れるといい」と言われていたのをご存知のママパパも多いのでは? 中には「親の指や腕を嚙ませる」「割り箸を入れる」という説もあったようです。

こうした対処法は正しいのか、森戸やすみ先生に伺いました。
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けいれんとは、全身、または体の一部に力が入り、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまう症状のこと。子どもにいちばん多いのは、38度以上の発熱を伴う発作性の「熱性けいれん」です。

『熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023』によると、熱性けいれんとは、髄膜炎などの中枢神経感染症や代謝異常といった、明らかな発作の原因となる病気がないもので、てんかんの既往歴がある場合は除かれます

生後6ヵ月から5歳までに多く、ある統計では約8%、最大で9%の子どもが熱性けいれんを起こすとされています。成長発達に影響はなく、脳障害などの後遺症も残りません。

熱性けいれんの中でも重篤ではないものを「単純型」といい、①全身のけいれん ②15分以内におさまる ③24時間以内に1回のみ などの特徴があります。

熱性けいれんの場合、60%以上の子どもは一生のうちに一度しか発作を起こしませんが、有病率8~9%と子どもに多く見られる病気です。遺伝することがあるため、両親が熱性けいれんを起こしたことがある場合、子どももけいれんを起こす可能性が高くなります。

また、さっきまで元気にしていたのに急に顔色が悪くなり、突然けいれんを起こすので、子育て中の親御さんは正しい対処法を知っておくと安心ですね。

口には何も入れず横向きに寝かせる

お子さんが舌を嚙まないか心配になる気持ちはわかりますが、けいれんを起こしたとき、子どもの口の中に何かを入れる対処法は実は間違いです。

けいれんは嘔吐を伴うことがよくあり、口の中に物があると嘔吐物を飲み込んでしまい、気管に入って窒息の原因になります。こうした誤嚥(ごえん)による窒息は、1分1秒を争います。大変危険なので絶対にやめてください。

けいれんには、体が硬くなったり勝手に動いたりするほか、意識がない、呼びかけても反応がない、目が合わない、呼吸が不規則・不安定になる、顔色が悪くなるなどの症状が見られます。けいれんは数秒から数十分間続き、いつもそばにいる親御さんなら「おかしい」「ただごとではない」と、一目でわかるはずです。

子どもがけいれんを起こしたら、まずは親御さんが落ち着いて、お子さんを安全な場所に横向きに寝かせます。仰向けだと吐いたとき嘔吐物を誤嚥しやすいため、横向きです。親御さんにはとても長く感じると思いますが、けいれんが何分続いているか、時間を正確に測ってください。

熱性けいれんの多くは5分以内に自然とおさまるので、5分を超えてもけいれんが続くなら、発作が長く続く「熱性けいれん重積状態」、また「髄膜炎」や「脳炎」「脳症」といった重篤な病気の可能性もあります。緊急事態と捉えて救急車を呼び、医療機関を受診してください。発作が起きている最中の動画をスマホなどで撮っておくと、医師に症状がうまく伝わります。

けいれんがすぐにおさまり、普段と変わらない様子ならすぐに受診する必要はありませんが、特に初めての発作であれば、翌日には小児科に相談するといいですね。

お子さんの様子を見て「けいれんなのかな」と迷うようであれば、おそらくけいれんではないでしょう。子どもは熱のせいで意識が朦朧(もうろう)とすることがよくありますし、手足が一瞬ビクッと震えるのは、けいれんではなく振戦(しんせん)と呼ばれる体の震えです。

何かしら意思疎通がとれる反応があったり、目が合ったりするのなら、しばらく様子を見ても大丈夫だと思いますが、心配なときは小児科を受診してください。

てんかんや大泣き 胃腸炎もけいれんの原因に

子どものけいれんの多くは熱性けいれんですが、ほかにもけいれんを起こす原因はいくつもあります。ひとつが「てんかん」で、100人に1人くらいと、頻度の高い病気です。

てんかんは、脳の神経細胞同士のリズムが突然崩れて電気的な興奮が生じ、体が勝手に動いたり硬くなったり、意識を失ったりします。熱がなくても繰り返し起こるので、小児科に相談し、脳波の検査などを受けましょう。ほとんどの場合は、薬で症状をコントロールできます。

小さい子では「憤怒(ふんぬ)けいれん」(泣き入りひきつけ)もよく見られます。大泣きをした後に息を吸った状態で呼吸が止まり、徐々に顔色が悪くなって、けいれんを起こすものです。ほとんどは1分以内におさまります。生後6ヵ月から3歳くらいまでに多いですが、成長とともに怒りをうまく表出できるようになると自然に治るでしょう。

また、下痢や嘔吐した際に起こす発作を「胃腸炎関連けいれん」といいます。軽いウイルス性胃腸炎の後、体内の水分やミネラルが失われたことで起こる数秒間の短いけいれんです。やはり生後6ヵ月から3歳くらいまでに多く、繰り返すことはほぼありません。胃腸炎の治療として経口補水液を与えると、けいれんの予防にもなります。
〔小児科医:森戸やすみ〕

【子どものホームケアの新常識 その6】
けいれんを起こしたら、口には何も入れず、安全な場所で横向きに寝かせる。けいれんの持続時間を正確に測り、5分以上続いたら救急車を呼ぶ。

取材・文/星野早百合

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