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犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】

いぬのきもちWEB

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで感じた何気ないことを語ります。

気づけばだいぶシニア犬の大福


犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


福助はまだまだ元気で毎日ドッグランを駆け回り、芝生の上でゴロゴロしているが、少し前から大吉はあまり走らなくなった。ドテドテ走る福助と違い、しなやかな身のこなしで美しく走っていた大吉だが、年齢のせいかのか。けれど14才なんだから仕方ない。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


体力的には問題なく、この前美ヶ原高原で往復4時間歩いたが、どちらも最後までバテなかった(バテ始めたら即引き返そうと思っていたけど)。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】

富士丸との思い出があり、今がある。


あと何年、一緒に過ごせるのか。いつもそんな思いが頭の片隅にある。犬と初めて暮らした人は、そんなこと想像もしたくないと思うが、私は富士丸との別れを経験しているからどうしても意識してしまう。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


しかも夕方までいつもと変わらなかったのに、数時間家を空けて戻ると息絶えていたという最悪のかたちの突然の別れだったから、ほとんどトラウマとなり、だからこそ大福にも半年に一度は血液生化学検査を受けさせたり神経質になっているんだと思う。でも逆にそのくらいの方がいいと思っている。それで突然死を完全に防ぐことはできないとしても。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


犬の時間がもっとゆったり流れてくれればいいのに、と思う。そして後になって「もっとこうしてあげればよかった」と後悔しないよう、1つひとつ潰していこうと思っている。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


富士丸がいなくなってから、自分を責めて責めて、でももうどうしようもなかった経験からそうなっている。けれど、どこまでいっても後悔はなくならないんだろうなと、なんとなく思う。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


そもそも犬に、もっと遊びに行きたかったのにと飼い主を責めたりする感情はないだろう。もちろん遊びに行くと喜ぶし、期待もするけど、一緒に知らない世界を見てみたいという感じに近いのではないかと思う。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


人間は実際に行かなくても知識として知ってはいるが、犬は経験したことしか知らない。現に大福も、何度も行った場所なら次第に「あぁ、ここね」と普通のリアクションになっていく。でも始めての場所に着くと目を輝かせて大喜びする。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


福助が実は登山好きだったことを、つい最近、始めて大福と山に登ってみるまで知らなかったのは反省したから、今後はどんどんあちこちの山に登ってみようと思っている。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


でもたぶんそれは後悔しないためと同時に、思い出を残しておきたいんだろうなと思う。富士丸と出かけた記憶が今でもしっかり残っているように。他のことは自分でも驚くほど忘れていくのだが、不思議なことに、富士丸との記憶はあまり薄れない。

犬の時間と犬との時間【穴澤賢の犬のはなし】


たぶん大福との記憶もたくさん蓄積されていっているのだろう。さて、今度はどこへ行こうかな。

プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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