行き過ぎた指導はもう昔?クラブ活動の新常識を調査してみた
令和のクラブ活動新常識。
行き過ぎた指導や勝利至上主義はもう昔?
クラブ活動はどう変化しているのか、広島県内で調査しました。
【高校野球=丸刈りはもう古い】
今週末に開会式を迎える第106回全国高等学校野球選手権 広島大会。高校野球も昔のイメージとは変わりつつあります。
広島国際学院高等学校の野球部では、高校野球のイメージを変える新ルールが適用されています。
高校野球=丸刈りはもう古い!
昨年秋から髪型のルールをなくしたそうです。
「選手から『髪を伸ばしていいか?』と提案が出た。自分たちのスタイルというものが表現できればいいかな」
と経緯を説明してくれた長延公平監督。
部員同士で髪のセットについて話題になったり、チームのモチベーションアップにもつながっているそうです。
また、罰則で何かをするのはやめたそう。
「『失敗したからこれをしろ』というのはやめました。部員の方から練習の提案や今までにないことを言ってきます。そういうプロセスは大事にしたい」
考える習慣が練習に反映されていると長延監督は実感しています。
【世代によって違うクラブ活動の指導】
クラブ活動の思い出について、広島の街でインタビューをしてみると
「悪いことしたら部内全員で丸刈りということがありました……。」
「水飲むなとか。死ぬと思いました」
と苦い思い出がある30代、40代の方がちらほら。
一方、高校生や中学生のクラブ活動現役世代にこうした話をすると
「水飲むなとか言われたことない。ありえない」
と驚いていました。
世代によってなぜ指導が変わってきたのか。
日本部活動指導研究協会の中屋晋さんに話を聞きました。
「スポーツの指導が科学的なエビデンスをもとに行うことが、日本は遅かった。『生存バイアス』というものがあって、指導者が自分の経験のみで指導する。生き残った人の意見はそうですけど、その厳しい練習や怒鳴りつけられて辞めた人が山ほどいて。
生き残った人の意見を全員にあてはめてしまう」
「休憩をとりながら進めることは科学的に意義があることだと証明されているので、その辺は昔と変わってきている」
と、科学的なエビデンスの浸透が指導変化につながっているのではと分析します。
【“怒らない”がスローガンのバレーボール部】
“怒らない”をスローガンに掲げ、令和のクラブ活動新スタイルを目指す「川上スポーツ少年団女子バレーボール部」。
過去に一部の指導者による過度な叱責や暴言が発覚。
それに異を唱えた今の監督たちと協議し、その指導者は退部。
不適切な指導を繰り返さないためにも、“怒らない”方針に変えたそうです。
子ども達がミスをしたときも
「センターに来てまっすぐ(ボールを)上げないように」
と、怒ることなく、具体的なアドバイスを送ります。
こうした指導の変化に子ども達は、
「前よりもすごく楽しいからやめたくない」
「楽しくやったら体にもしみついてくるので、全員上達している」
と前向きにクラブ活動ができているよう。
日本部活動指導研究協会の中屋さんも
「恐怖による指導は短期的な効果で、長期的に効果がないことは実証済み。大事なことは自分達が決めた目標に向かっているか?ということ」
と話します。
自分達で決めた目標に対して、自分達で考え行動をしていく。
そうした目標達成までの過程を学びに生かすことが、クラブ活動の意義なのかもしれません。
広島ホームテレビ『ピタニュー』(2024年7月3日放送)
ライター:神原知里