なぜ髪を伸ばし続け、なぜ髪を切る決断をしたのか? おそらく声優初の断髪式となった「福山潤断髪式」をレポート&独占インタビュー|これからは“爽やかな福山潤”で頑張っていきます
声優ファンのみなさんなら一度は思ったことがあることでしょう。「福山潤さんって、なんであんなに髪が長いの?」「なぜ伸ばしているの?」「いつ切るの?」と。
そんな福山さんが長年伸ばし続けた美しい長髪は、ついに切られることとなりました。
2025年2月23日(日)に東京総合美容専門学校マルチホールにて開催された福山さんによる「福山潤断髪式」。
本稿では、2020年から髪を伸ばしていた福山さんの断髪式のレポートと共にイベント終了後のインタビューをお届け!
髪を伸ばし始めた経緯や長髪を体験したことで見えてきたという新たな発見についてなど、たっぷりと語られた貴重な機会となりました。断髪の貴重なシーンの写真もお見逃しなく。
▲断髪前の福山さんの様子
【写真】おそらく声優初の断髪式となった「福山潤断髪式」レポート&独占インタビュー
長髪エピソードを披露!規格外のスイムキャップに会場騒然?!
盛大な拍手のなか、福山潤さんが登壇! 嬉しそうな様子で「満員でございます」と爽やかに挨拶を終えると、本イベント前半が福山さんによる「台本がなくマイク一本でしゃべってマイク一本で帰る漫談」が披露されることが明かされました。「ですが、今日はマイク一本だけではありません。(後半の断髪式で)髪の毛を一本二本持つことになるので」というトークで早速、会場の笑いを掴んだ福山さん。
まずは髪の毛を伸ばし始めた理由について。2020年のコロナ渦以降に髪を伸ばし始めたとのことで、緊急事態宣言により中止になってしまったライブ(「福山潤 Special Live 2020「P.o.P -PERS of Persons-」」)の本番3日前に髪を切ろうと思っていたけれど、「この緊急事態宣言中、やったことないことをチャレンジするというモチベーションで日々に新たな活力を養ったり、髪を伸ばして他の人に会ったときにどんな反応になるのか」ということを考えるようになったのだそう(『マイケル・ジョーダン: ラストダンス』の影響でスニーカーにハマり60足を購入したという話題もありました)。
実際の髪を伸ばしてからの周りの反応が「伸ばしてるんですか?」「切らないんですか?」「伸びましたね!」の3パターンであったという言葉に続き、「髪が耳から下くらいからは大体、(会った人が)首を傾げるんです」とコメント。最後は「どこまで伸ばすんですか?」と尋ねられたと語ります。
最初はコロナ禍があけたら髪を切るという半分願掛けのような気持ちで髪を伸ばしていたものの、髪を伸ばすことによる周囲の反応や髪を伸ばせるうちに、「体験を持つこと」を重要視するようになったと言います。今回、カットした髪はヘアドネーションをするとのことですが、それも最初は考えていなかったと明かしました。
そして長髪を体験してみて、普段髪を伸ばしたことがない人が髪を結ぶと皮膚が引っ張られて痛くて1時間以上結んでいられないことが分かったとのこと。そこから興味は広がり、YouTubeで「結び方 ゆるふわ」と検索して動画を観たり、シュシュを購入し実際に使ってみてその利便性を理解したと熱く語る姿も。
さらに、走ることもジョギングも長髪には不向きであるという発見もあったそうです。それなら水泳をやろうと長髪でも被れるスイムキャップを購入するも、届いたのはブーブークッションのようなスイムキャップだったと語ります。実物を客席に見せると、スイムキャップの規格外な大きさに客席からは「えっ?」という戸惑いと笑い声、拍手が溢れました。
笑いに拍車をかけるかの如く福山さんが「これを被ってみたんです。海パンを履いて、ゴーグルもつけてみたんです。……迷惑だろ!」とコメントをすると、笑いの波はさらに広がっていきました。
しかし、長髪が影響してアフレコ中に片方に首を傾げてしまったり、少しずつ首の痛みが出てくるようになってしまったそうです……!「これはことだぞ。一生、声優としてやっていくためには僕はロン毛をどこかでグッバイしないといけない」と悟ったようにお話しされるのでした。
笑いが絶えない漫談では今回のイベントに合わせて発売されたグッズに使用されている写真の紹介もありました。コンセプトは「髪型×服装×スタジオ」を全てミスマッチにすること(しかし、チャイナだけ髪型と衣装を合わせた)。
一番恥ずかしかったと話すツインテール×クラシックスーツやサザエさん、昭和初期の玉ねぎ頭、日本髪×スーツ、中国時代劇風など、さまざまな顔を見せてくれる写真たちを福山さんの解説とともに楽しむ客席の姿が印象的でした。
断髪式スタート!髪型は客席に委ねられるスタイルで
「福山潤断髪式」にて福山さんの髪を切るのは美容師の早坂光雄さん。ヘアサンプルとして用意されていたヘアマネキンの商品名が、偶然の奇跡で『JUN ReBorn』という名称。「潤・再生」。福山さんの断髪式を祝福しているかのような商品名に笑いが絶えませんでした。
「これより福山潤、断髪式を執り行います」という言葉で断髪式はスタート。断髪式では事前に早坂さんが用意していた「ショート」「ミディアムショート」「ベリーショート」の3パターンの髪型の中から観客がヘアスタイルと決めるという驚きの展開です。
吟味された末に観客が選んだのは「ベリーショート」。観客は断髪されている福山さんを正面から見るスタイル。「正面から人が散髪する様を見たことがないと思います」との福山さんのコメントには笑い声が巻き起こっていました。
また、髪の束を切る際に願掛けをしようということになり、観客からリクエストを募集する一幕も。選ばれた2名の願いを祈るべく、「客席のお子さんがサッカーチームのレギュラーを取れることをかけて」「能登の復興を、そして全ての人たちの幸せを願って」という心温まる願いを込めて断髪は執り行われました。
いざ、入刀……! 早速、頭頂部の毛束が早坂さんの手に取られ、ジョキジョキとハサミが入れられていきます。観客もなんだか不思議な緊張感に包まれ、目が離せません。その間も終始、楽しそうに笑っている福山さん。
そして、最後の一握りで毛束は福山さんから切り離されます。その瞬間、観客席からは盛大な拍手が! 福山さんもそれまで自分の身体の一部だったものを握りしめ、客席のみなさんが見えるようにステージの前方へ。某「取ったどー!」のポーズとでも言えばいいのでしょうか。こんなイベントはこれまで誰も見たことがありません。力士の引退か、福山潤かしかないでしょう!
そこからは観客のみなさんと楽しく談笑しつつ、福山さんの髪がさっぱりとしていくのを眺めることに。そう思えば、人が髪を切られているのをまじまじと見るということもあまりないので、この体験もレアなのかもしれません。
あれだけ長かった髪も切ってみればあっという間。断髪が終わると拍手が巻き起こります。ご自身の姿を見た福山さんは「下野系統になってきてる?」と笑いを交えながら声優仲間の下野紘さんと雰囲気が近いことに言及すると、客席からは同意の意味を含んだ拍手が送られました。
ほかにも質問コーナーが実施され、「お肌のケアは?」という質問に対して「僕はめっちゃ乾燥肌なんです。6月を過ぎると湿気があるので化粧水もあまりつけなくなるんです。冬場だとヒリヒリして乾燥しちゃうので、化粧水と乳液をつける。時々、先行美容液を買ってみたり……」と回答。さらに、キュレルやアスタリフトを使用しているといった様々なエピソードが披露されたり、イベント終了まで福山さんと客席が会話を楽しむ時間が続いていました。
なんとも自由に、そして楽しくイベントを終えた福山さんは今日も輝いていました!
インタビュー:福山潤、長髪にすることによって知ることができた発見
本稿の最後に、イベント終了後に福山さんに行ったインタビューの模様をお届けします。
――ショートヘアすごくお似合いです。近くで見るとブルー系の色味が入っているんですね。
福山潤さん(以下、福山):慣れないというわけではなく、「あ、こんな感じになるんだ」という新鮮な気持ちですね(笑)。
ロングヘアにする前も含めてですが、年齢的に白髪がちらほら出てきて、黒染めが嫌いだったんですよ。ブリーチして色を入れるという選択肢もありましたが、ブリーチ自体も嫌だったんです。
それにあまり色が抜けにくい毛質でもあるので、そこで「じゃあ、(ブルー系の強い紫)マニキュアで全体的に染めたら白髪にも色が入るんじゃない?」と思ってやってみたら色持ちが良くて!
マニキュアなら3~4ヶ月は色が持つので、「じゃあ、マニキュアでいいや」という流れで続けるようになりました。そうしたら髪が長くなればなるほど紫が目立つようになってきて、結果として今このような仕上がりになっています。
――先ほどの配信でも断髪式を終えたご感想をお話しされていましたが、改めてお聞かせください。
福山:感想はいくつかありますが、「ほっとした」という気持ちと「楽しかったな」という思いですね。断髪式自体はある意味ワンアイデアで5年間伸ばし続けた髪を切るというものですが、これまで「なんで伸ばしてるの?」と聞かれたり、短い髪のほうが好きな方からは「早く切ってください」と直接言われたり、さまざまな反応がありました。ですが、こういう仕事をしているからこそ、そういう反応も含めてありがたい言葉だなと思っています。
やっぱり僕にとっては、「体験すること」がとても重要なんです。髪を伸ばすことでどんな感覚になるのか、どんな不都合があるのか、どんなメリットがあるのか、もしくは日常生活で気をつけるべきことは何か? とか。イベントで話したこと以外にも、細々とした出来事がいっぱいありました。
ただ、ここまで髪の毛を伸ばす方がそんなに多くない中で、ある一定の長さを超えると「大変なことも増えてきたな」と感じることもあり、今回切ることなりました。実は「髪を切る」という行為が「断髪式」というこんなにもスペシャルなものになるとは思っていなかったんです(笑)。
僕自身は「また変なことをやってるな」くらいの感覚で少し酔狂な方がイベントには100人くらい来てくださったらいいなと思っていたのですが、想像以上の反響があって、最初は全く考えていませんでしたが、「ちゃんとショーアップをした方がいいのかな?」と考えるようになりました。
僕らの業界では、企業がしっかりお金をかけてイベントを開催し、お客さんから料金をいただいて、良いエンターテイメントを提供するのが一般的です。だけど、今回は利益をあまり考えていないやり方なので、企業や作品が関わるイベントとは一線を引き、「内容だけでどこまで楽しめるか?」という点を大事にしていきました。
だから基本的に舞台ではマイク1本だけで僕がただ話すことにこだわっていて、お客さんにも良いものを提供し、いかに楽しくコミュニケーションを取ろうかと考えていました。
正直にお話しすると、話の内容はスイムキャップを持っていき、どこかでネタとして使おうということしか決めていませんでした(笑)。
――大きすぎるスイムキャップのくだり、めちゃめちゃウケてました!
福山:本当に良かったです!
やっぱり、直接お客さんの顔を見ながらだと話せたり、お客さんのアクションを見て言葉が出てくるものです。僕は芸人さんではないですが、それでもマイク1本で約40分間のなんちゃって漫談をやれたのは楽しかったですね。
あと、もちろん気持ちの面もですが「ほっとした」というのは単純にこの季節なので……。
――「季節」でしょうか?
福山:本当はインフルエンザが流行っていない夏が良かったんです。正直、この1週間はストレスでしたね(笑)。1週間前なら感染してもギリギリ回復できるのですが、月曜日以降にかかってしまうと、イベント当日の日曜日には間に合わなくなる。
だから、毎日「今日も大丈夫か?」と確認しながら過ごしていました。幸い、現状のところはめっちゃ元気なので何の問題もないですが、それでも「もしも」があるかもしれないので、ずっと気を張っていました。昨日の朝も「よし、今日も大丈夫」、今朝も「お、大丈夫」と確認してイベントに臨みました。
――先ほど、「発見もあった」とおっしゃっていましたが、例えば「トリートメントの減りが早い」など、そういった細々とした発見がいくつもあったということでしょうか?
福山:トリートメントの減りは確かに早かったですね。だけど、それだけではなく、トリートメントの重要性も改めて実感しました。
髪が短いと別になくてもいいと思ってしまいますが、あそこまで長くなると、トリートメントをしないと髪が絡むし、摩擦が増えることで髪が痛んでしまうんです。でも、トリートメントをすると水分量が上がるため、パサつきは防げるし、まとわりにくくなるという面もあって、いろんな意味で都合が良くなるなと。
やっぱり、髪の毛が綺麗に見えたほうが人に不快感を与えないじゃないですか。だから、そういう部分に気を遣うようになったのは、とても良かったなと思います。
あとステージでは話しませんでしたが、シャンプーの香りについても発見がありました。実は僕、「無香料」が好きだったんですよ。髪が短い状態だと、香りがあってもなくても変わらないし、正直、匂わないんです。
そこで髪が肩口くらいまで伸びて顔が髪に包まれる状態になったときに、「なんでもいいや」と思って、いろんなシャンプーを試してみたんです。試していくうちに、「好きな香りのとき」と「嫌いな香りのとき」の不快感の差がすごく大きいことに気づきました。
シャンプーなどの「香りが大事」と言われるのは、こういうことかと。髪が耳より下まで伸びると、自然と香りに包まれてしまうから、「シャンプーの匂いは超大事なんだな!」と発見でした。
「このシャンプーは洗いやすいけど、香りが苦手」とか、「この香りは好きだけど、泡立ちがイマイチ」とか。シャンプーの選び方で、短いときには全く気にしてこなかった部分に自分の好みが出てくるようになったのも面白かったです。
――福山さんといえば「LUX(ラックス)」の生電話キャンペーンも印象的でした。
福山:起用されたタイミングで、たまたまロングヘアだっただけなんですけどね(笑)。でも、髪にまつわるお仕事は「LUX」が最初で最後だったので、そういう意味でもすごく楽しい経験でした。
――ほかにも美しい髪質を保つために、特に気を遣った部分はありますか?
福山:おそらく、元々の髪質に助けられた部分もあると思います。でも、何もしなければさすがに傷んでしまいますね。
とはいえ、僕は基本的にあまり手をかけず、ドライヤーをかけてブラッシングをする以外は特別なケアはしていませんでした。今振り返れば、それが一番ダメージを抑える方法だったのかなと。
綺麗に見せるために、アイロンを頻繁に使ったり、カールをつけたりもできたとは思いますが、それをやってしまうと熱による髪へのダメージが増えてしまいます。そういった場合のヘアケアの知識があればいいんですが、僕はあまり詳しくなかったので、分からない状態でアイロンなどをしていたら髪質はもっとパサパサになっていたかもしれません(笑)。
でも、終盤になって熱から髪を守る方法でヘアオイルがあったりとか、そういう知識もだんだん分かってきました。ヘアケアとして、不要なダメージを与えないように心がけていたわけではないけれど、結果的にこういうふうになっていました。
――寝るときも摩擦で髪が傷んでしまいそうですが、ナイトキャップなども試されたりしたのでしょうか?
福山:試しました! が、寝る時が一番髪が痛みましたね。やっぱり寝てる間に取れてしまうんですよね。それに、髪をキャップの中に収めるのが結構大変で……。
髪を全部上に流すようにして、寝ている間は自分の肩から下に髪が落ちないように工夫をして寝ていました。最終的には何もしないで寝ていましたが、寝返りなどで特に襟足の毛が絡まってしまうことが多かったです。朝起きたら、まずブラシで梳かすのが日課になっていました。
長髪の方や女性の共演者からは「枕カバーをシルクにするといい」とアドバイスをもらったのですが、僕が使っている枕は特殊な形状をしていて、シルクのカバーが見つからなくて、それは諦めましたね(笑)。
――“長髪卒業記念”写真集の撮影も終えられたとのことですが、注目してほしいポイントを教えてください。
福山:写真集のことまでありがとうございますw。ラジオの企画でクラウドファンディングにてご支援いただいて作っている写真集なのですが、日常的なシーンもあれば、ちょっとアラカルトとしてユニークな要素を入れたものもあります。「幻想的」と言うとハードルが上がってしまうかもしれませんが、想像していないようなジャンルの写真もあると思います。
例えば、「アニメキャラにこういうのいそうだよね」というような雰囲気のカットもあります(笑)。
――お話しいただきありがとうございました! 最後に改めてファンの皆さんにメッセージをお願いします!
福山:「福山潤 断髪式」と、そしてアニメイトタイムズさんに取材をしていただくような、そういう注目を浴びるつもりが一切ないような状態で始めたなかで、色々なご協力をいただきました。
イベントを面白く、満足していただけるものにしようと尽力してくれたスタッフの方々のおかげで、自分のアイデアが120%の形で実現できました。
また、僕自身の"身一つでやる(漫談する)"という部分に若干こだわりを持っていたのですが、それはお付き合いいただける皆さんがいるからこそ、こういう形が成立するんですよね。今回のイベントは、今後の自分の活動のなかのひとつの大きな支えになると改めて感じています。
そして、やっぱり「会話」は大事だなと。観に来ていただいているお客さんであっても、やっぱり会話だよねと。受け答えはなくても会話ができるんだということが自分の中で実感できたことは、この断髪式のなかでもひとつ勉強になったことでもあります。皆さんのリアクションを見て、「髪を切るだけでこんなに面白いイベントになるんだ!」というのも新たな発見でした。
僕自身、今後また同じようなことをやることはないと思いますが(笑)。(長髪にすることに対して)もし興味のある方がいればぜひ参考にしていただければ!
最後に配信を含め、興味を持ってくださった皆さんに心から感謝いたします。これからは、“爽やかな福山潤”で頑張っていきますので、ぜひともよろしくお願いします!
[取材・文/笹本千尋 撮影/胃の上心臓]