土居麗菜、私の新章のタイトルは「どいれな、天下獲りたい!」
表現者として新たな活動に臨んでいる人物の現在地に迫るインタビュー連載「new chapter -私の新章-」。
第2回目に登場したのは、今春立ち上がった芸能プロダクション『NRC PRODUCTION』への所属を発表した土居麗菜。これまでハロプロ研修生やダンスボーカルグループでの活動を通じて、多彩な表現を魅せていた彼女は、これから新しい環境で、どのような姿を届けていこうと考えているのか。
土居麗菜が、これまでの活動とタレントとしての新章への想いを語る。
編集協力:竹内伸一
ファンの方がいてくれたことが、自信につながりました
――これまでの活動で印象的な出来事と言われると、どんなことを思い浮かべますか?
土居:
私は12歳からアイドル活動を始めたんですけど、そこで初めて歌とダンスを習ったんです。周りの子はもともとダンスのスクールに通っていたり、違うグループで活動していたりした子が多かったんですけど、私はその時が初めてで、いきなりそういう子たちと一緒にやることになって。ホント、ダンスなんて全然できませんでした。やっている人からしたら超初歩的なこと……簡単なステップなんかも、“1・2・3・4っていうのは何?”みたいな感じでした(笑)。
――前途多難でしたね(笑)。
土居:
ははは(笑)。動画をもらって“これを観て覚えてきて”って言われるんですけど、そもそも覚え方がわからない(笑)。だから、立ち位置も3列目の1番端っことかでした。大変だったなあっていうのが最初の想い出です。
――それはハロプロ研修生の時代ですか?
土居:
そうです。やっぱりできる子からセンター、前列って決まっていくんですよね。
――できないからこそ努力したんでしょうね。
土居:
そうですね。やらないといけないので。できないっていうのは通用しないですから。それで先輩に“どうやって覚えていますか?”って聞いてみたんです。そうしたら“もらった映像をアプリで反転させて、スローで再生するんだよ”“ここの振りは、手はグーなのか、ちょっと柔らかく握っているのか、それだけで全然違うから、そういうところも細かく観て覚えているよ”って教えてくれました。それで、1個1個動きを確認しながら覚えるんだなってわかって、それからはめっちゃ頑張って覚えていました。
――まだ12歳でダンス経験がなければ、覚え方も知らないですよね。
土居:
小6から中学生くらいにかけての時ですね。大体、リハーサルの1週間くらい前に曲を渡されるんですよ。1回で5~6曲を覚えるんですけど、5~6曲って言うと大したことないように思えるかもしれないけど、1曲5分くらいありますからね。それが“×5”なので大変でした。さっき話したみたいに動画を反転させたり、スローにしたり、わからない動きはYouTubeで調べていました。ダンスの先生みたいな人が、たくさんレッスン動画を上げているじゃないですか。もうイチから教えてくれるんですよ。それを観ながら鏡の前で練習していました。そうやって覚えたものを、リハーサルの時にがむしゃらにやっていました。
――ご自身の中で転機というか、“私、何か掴んだかも?”と感じたタイミングはありましたか?
土居:
ハロプロ研修生の時の話だと、歌割りが多くなった時期がそうかもしれないですね。1年くらい経って、歌割りをけっこうもらえるようになったんです。ただ、ハロプロ研修生から昇格してデビューみたいな感じで、上の先輩たちがどんどん抜けていくので、序列が自然と上がったんですよね。それもあって歌割りが多くなったとは思うんですけど。でも、自分よりも後輩が入ってきちゃったし、しかも後輩とか関係なく自分よりもできる子が入ってくるので、もうやらないといけなかったんです。
――“最年少だからできません”みたいな言い訳もできなくなりますしね。
土居:
そんな言い訳できないですよ。それで“もうやるしかない”って頑張っていたら、歌割りがちょっとずつ増えていって、ダンスの位置も3列目の端っこから2列目の真ん中くらいになって。
――その当時、ご自身の武器は何だと思っていました?
土居:
どうだろう……頑張ってはいましたけど、パフォーマンスが上手な子ってホントいっぱいいたんです。歌とダンスは、いつまで経っても自信は持てなかったですね。だけど、目力をほめられることはすごく多かったんですよ。
――それってアイドルをやる上では絶対に武器になりますよね。
土居:
そうなんです。“熱意が伝わってくる”とか“頑張っているのが目を見てわかる”って言ってもらえるようになって、チャームポイントは“目力”って言うようになりました(笑)。
――ダンスがすごく上手だったり、音程やピッチが完璧な歌が歌えたとしても、観ている人を感動させられるとは限らないじゃないですか。
土居:
もちろん100点満点のパフォーマンスは大事なんです。そこはできて当たり前の部分だったりするので、その上で自分の個性を出していくことが必要……アイドルは歌うだけの人でもないし、ダンサーでもない。やっぱりアイドルは“アイドルという職業”なんですよね。それは、何か惹きつけるものがないとダメなんだと思います。それが私の場合は目力なのかなと。でも、惹きつけてきたのかな……よくわからないです(笑)。ただ、大人の方からも目力はよくほめてもらいます。あと、ハキハキしているところも。
――観ている側は、土居さんの目力から自信を感じるんじゃないですかね。自信がないように見えてしまうと、“この子大丈夫かな”って心配になって、惹きつけられなかったりしますから。
土居:
自分ではよくわからないですけどね。アイドルに限らず、どの分野でもそうだと思うんですけど、回を重ねたら誰でもウマくなるし、自信もつくと思うんです。アイドルの場合、そうなってくるとファンの方が増えていくんですよ。それこそペンライトの数だったり、自分のTシャツを着ている人の数だったりが目に見えて増えていくのを目の当たりにすると、歌とダンスはもしかしたらまだ100点ではないかもしれないけど、自信にはなるんですよね。少なくとも私はファンの方がいてくれたことが、自信につながりました。
今の私はたぶん二刀流、“アイドル界の大谷翔平”って書いておいてください(爆笑)
――ハロプロ研修生を卒業してからもアイドルグループ(Ange et Folletta)を続けますよね。
土居:
そうですね、ちょっと間がありましたけど。
――ハロプロとはまた違う世界観を持つグループでしたよね?
土居:
全然違いました。やることが全部違うんですよ。それにアイドルというよりもガールズグループ……K-POPとかを踊るグループだったんです。それこそ、それまではアイドルダンスを頑張ろうってやってきて、ようやくある程度のレベルまで来たのに、今度はK-POPのガールズダンスをやってくださいって……ここの動きがちょっと違うとかじゃなくて、もうジャンルが全然違うんですよ。基礎レッスンをたくさんやるグループだったんですけど、それに加えて個人練習もたくさんやっていました。先生とマンツーマンで。今までみたいに(ポーズを決めてニッコリ)ではなくて、(クールな表情で)“キリッ”みたいな感じで、可愛いではなくてクールでセクシーを求められるというか。そうすると魅せ方も変わってくるんですよね。ダンスのスキルの違いにも戸惑いましたけど、魅せ方の違いにも悩みました。それまでは“アイドルウィンク”みたいな感じだったのに、今度はバッキバキでセクシーですから(笑)。最初は苦労しました。
――そもそもそういったクール&セクシー系のパフォーマンスは好きだったんですか?
土居:
K-POPのグループを観たりするのはすごく好きでした。だから見よう見まねでやっていました。それこそ先輩の真似をしていましたね。“こういうふうに踊っているんだな、そこは真似してやってみよう”っていう感じで、いろいろな先輩のいいところを吸収しようと思っていました。
――ハロプロ研修生の時も先輩に聞きながら、YouTubeを使って研究していたと言っていましたけど、この時もすごく研究したんですね。
土居:
研究するのが好きなのかもしれない(笑)。
――研究していると奥深さも見えてくるじゃないですか。“こういうふうにやると、こういう伝わり方をするんだ”とか、いろいろな発見があると楽しいですよね。
土居:
そうですね。ハロプロ研修生の時も、先輩や自分よりも上手な子、魅せ方がウマい子、自分とは全然違う魅せ方をする子、いろいろな子がいるので、レッスンの時には、周りも見ながら踊っていた気がします。映像も見返して1人ひとりの踊り方も確認して、ここはこの子の動きを参考にしてみよう、あそこはあの子を真似してみようっていう感じで、自分に合ったものを見つけたら取り入れてみるというような研究は好きなんだと思います。
――ご自身としては、キラキラなアイドルとクールなガールズグループでは、どちらがフィットしました?
土居:
もともと好きだったのはキラキラのアイドルでした。もう“Theアイドル”っていうグループをすごく見ていたので、自分がやるならアイドルだなって思っていたんです。でもガールズグループをやってみたら“いいじゃん!”ってなりました(笑)。だから、今の私はたぶん二刀流なんですよ、“アイドル界の大谷翔平”って書いておいてください(爆笑)。
――あはは(笑)。
土居:
ホントにどちらも経験しているので。アイドル的な要素も、K-POPの大人っぽいセクシーな感じ、しなやかな感じも。どちらもいい部分を吸収できたんじゃないかなと思っています。そこには自信がありますね。いい経験をしたと思います。
ホント、アイドルやりたい(泣声)
――新たにNRC PRODUCTIONに所属することになりました。これはどういういきさつで?
土居:
スカウトしてもらって。できたばかりの事務所なので、ゼロから一緒に歴史を作り上げていく、物語を作っていくっていうのがいいなと思ったんです。そこは1つの決め手でした。それと、社長さんがめっちゃポジティブで、めっちゃ褒めてくれるんです(笑)。それに“天下を獲るぞ!”みたいな熱意もあって。私もそういう気持ちで今まで頑張ってきたから、ここなら一緒に頑張れるんじゃないかって思って、所属することに決めました。
――事務所を決めるにあたって、誰かに相談はしましたか?
土居:
普通にお父さんとお母さんに。普通に“いいんじゃないの”っていう感じでした(笑)。あ、2人とも“新しく始まるところで改めてイチから始めるっていうのがいいね”って、私と同じように思ってくれていて。親の後押しもあってここでやろうって思いました。
――新しい環境になって、これから挑戦していきたいことは?
土居:
そうですね……やっぱり天下を獲りたい(笑)。
――“天下を獲る”といっても、いろいろありますよね?
土居:
確かに(笑)。えっと、アイドルをやりたいです。やっぱりアイドルが好きなんですよ。ちっちゃい頃から憧れていたし、目指していて……やばい、泣きそうです(泣笑)。いろいろ挫折もあったけど、改めて頑張りたいなって思って。
――アイドルのどんなところに魅力を感じますか?
土居:
元気になりますよね、ファンの方も自分も。
――ファンの存在は大きいですか?
土居:
おっきいです! 前の活動から2年くらいやっていないんですけど、“麗菜ちゃんのペースで頑張ってね”って言ってくれて。そうやって言ってくださるファンの方がいなかったら、心が折れていたかもしれないから、やっぱりファンの方の存在は大きいですね。そうやって待っていてくれるから、その人たちのためにも頑張ろうと思って。ファンのみなさんを勇気づけたいなって思うし、自分が応援されてばっかりだったから、恩返ししたいというか、応援してくれている気持ちに応えて、みんなを楽しませたいなって思います。もっと上を目指したいです(涙目)。
――誰かのためにという想いがないと、アイドルはなかなか続けられないですよね。
土居:
ホントにそうなんですよ。自分もアイドルをいっぱい見てきて、“こういうふうになりたいな”とか“こういうところは憧れるな”って思ったし、勇気づけられたんですよね。それで、自分もそういう存在になりたいと思って、ずっとやってきたんです。今もその気持ちは変わらなくて、今いるファンの人たちもそうだし、もっともっといろいろな人たちに勇気を与えられる存在になりたいってすごく思っています。それができる職業がアイドルなんだと思います(涙声)……泣き虫ですみません。想いがあふれちゃってすぐ泣いちゃうんです。でも、強い気持ちは持っているから、真面目にすごく頑張りたい、天下獲りたいって思っています。ホント、アイドルやりたい(泣声)。
――土居さんは、これまではグループ活動の途中でコロナ禍になってしまって、完全燃焼できていなかった部分もあったんじゃないですか?
土居:
それはありますね。それこそデビューして定期公演をやっていたんですけど、全部中止になっちゃったし。全世界がストップしちゃったんで、仕方ないのかもしれないですけど、私たちの活動もけっこうダメージはありましたね。やれることと言えば、オンラインでのトークとかしかなくて……それまでだったら直接会って握手できたのに、会うことすらできなくて。距離ができちゃいましたよね。物理的にアクリル板を挟んでしか会えなかったりしましたし。そんな中でも頑張っていたし、活動自体は楽しかったんですけどね(涙声)。
――今は物理的制約がなくなった状況なので、アイドルをやりたいと思っているのであれば、楽しみですよね。
土居:
ホント、楽しみなんですよ!
――“天下を獲る”という意味で、目指すステージはありますか?
土居:
“みんな言ってるからお前もそう言ってるんだろう”って思われるかもしれないですけど、私、日本武道館に立ちたいです。先日、FRUITS ZIPPERさんの日本武道館公演を観に行かせていただいて。彼女たちは2年であのステージに立って、しかも2日間も。すごいですよね。ライブはもちろん楽しかったんですけど、自分もそうなれるかなって、そんな目線でも観ていました。自分もそこを目指していきたいなって思いましたね。ただ、自分のペースと言うと、なんかのんびりやるみたいに聞こえますけど、着実に進んでいきたいと思うんですよ。例えば、事務所は渋谷にあるんですけど、渋谷で言えば、まずLINE CUBE SHIBUYAでやりたい……そのステップを経て武道館へ進みたいです。LINE CUBE SHIBUYAの隣には、NHKホールがあるから、武道館はそこも成功させてからじゃないと。着実に輪を広げていきたいです。
――NHKホールでは『NHK紅白歌合戦』もやっていますしね。
土居:
あ、それ自分で言いたかった(笑)。『NHK紅白歌合戦』出たいです! ただ、武道館を頂点って決めているわけじゃなくて、東京ドームやスタジアムにも立ちたいです。だから、地道に、謙虚に、真面目に、芯を持って頑張る……できることって、それしかないと思うので、着実に進んでいきたいなと思っています。
――では、最後に土居麗菜さんの新章のタイトルを教えてください。
土居:
“どいれな、天下獲りたい!”がいいかな(笑)。
――“アイドル界の大谷翔平”じゃなくていいですか?(笑)
土居:
それもいいですけど(笑)、“どいれな、天下獲りたい!”で!