「最後は柔かい豆腐に。」中央区湊の鉄砲洲稲荷神社で針供養
2月8日の「事始め」の日に鉄砲洲稲荷神社(湊一丁目)の針塚の前にて恒例の針供養が執り行われました。明石町の東京ファッション専門学校の学生達が、日頃の感謝を込め巨大豆腐に役目を終えた針を刺して供養を行いました。
中央区湊一丁目の鉄砲洲稲荷神社。新年の寒中禊が恒例行事として有名ですが、その鉄砲洲稲荷神社で『針供養』が本殿脇の針塚にて執り行われました。
針供養とは折れたり曲がったりして役目を終えた縫い針やまち針を供養する事。事始めの2月8日あるいは事納めの12月8日に行われる祭事です。
奥の丸穴の開いた石碑が針塚
この針供養は明石町にある「東京ファッション専門学校」が主催しています。同校は松屋の和服裁縫部が発祥で1913年に創立。110年の伝統を誇る歴史ある服飾専門学校です。
1960年(昭和35年)に同校の生徒会が針塚を鉄砲洲稲荷神社に奉納。針への感謝と裁縫の上達を願って毎年2月8日に針供養を開催しています。
裏には松徳洋裁専門学院生徒会の文字
最期は柔らかい豆腐で
豆腐に刺された針を前に、神職が祝詞を読み上げ供養を行いました。針供養では豆腐やコンニャクに使えなくなった針を刺します。
これは固い布や素材を相手に頑張ってくれた針を、最期は柔らかいところで休ませようとの想いがこもった風習だそうです。
鉄砲洲稲荷神社では築地の小林豆腐店の特製豆腐を使用しています。柔かいといっても通常の豆腐ではうまく針が立たないため、ニガリ多めで通常より固い豆腐になるよう工夫しています。
この豆腐は供養が終了後、地域の方を中心に皆さんでいただくそうです。
今までの感謝を込めて
東京ファッション専門学校の皆さんにお話を伺いました
東京ファッション専門学校校長の田代健さんが皆に訓示をして針供養は終了しました。
「生徒会が針塚を奉納してから60年以上続いてきた行事です。職人やスポーツ選手が道具を大事にするのと同じように、全ての物に魂が宿る、道具に感謝するという誠に日本らしい伝統だと思います。今日一日は針に触れないというしきたりもあるので、製作活動もお休みして特別な日として過ごしてもらいたいと思います」
校長の田代さん
今回が2回目の参加という学生さんに終了後に話を伺いました。
「つい先日にファッションショー(※)があったので、とても硬い布や普段使わない布を刺したりと散々使いまわしたので、いつも以上に感謝の気持ちを込めました。」
※1月31日(水)に松屋銀座で開催
-今日は針仕事はお休みとの言葉もありましたが
「ショーも終わったので今日は針には触れません。針にもしっかり休んで欲しいと思いました。」
「ただこれから試験なので・・・。」
針はお休みでも学生さん達の心は休まらないようでした(笑)
このお豆腐はその日の昼過ぎまで境内で公開され、一般の方も供養に訪れるとのことです。
針供養は来年も2月8日に開催の予定です。仕事で家庭で針をお使いの方は供養に訪れてはいかがでしょう。