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バンドが終わるかもしれなかった冬眠期間と前言撤回。13ヶ月ぶりのワンマンライブでBBHFとファンが作った無二の空間

SPICE

BBHF

BBHF『MELT』


2025.7.10 渋谷WWW

BBHF、13ヶ月ぶりのワンマンライブ『MELT』が7月10日に渋谷WWWで開催された。

ゲリラ豪雨で冠水した渋谷の街を歩いていると、ちょっとサバイバル気分で妙なテンションにあることに気づくのだが、平日をまだ1日残してWWWに集まったオーディエンスには不思議な一体感が最初からあったように思う。昨年6月に恵比寿リキッドルームでワンマンを開催し、その後しばらく冬眠期間へ。『MELT』というライブタイトルは“溶け合う”“融合する”を意味し、メンバー3人が冬眠期間に育んできた感情や音楽的探求をいま凝縮させることで、再び再構築される姿を象徴しているという。このライブは5月1日に発表、発売と同時に完売。キャパシティを考えると当然な気もするが、いまBBHFがどんな状態にあるのかはライブで確認する他にないのも事実だ。だが、満員のフロアには飢餓感よりシンプルにまた彼らの音楽を楽しめる歓びに満ちていたのだ。

BBHF

暗転と同時に起こった歓声のブライトさがファンの待ちかねた心情を映すなか、尾崎雄貴(Vo/Gt)、DAIKI(Gt)、尾崎和樹(Dr)、そしてサポートベースにNewspeakのYohey、ギターその他にGalileo Galileiの岡崎真輝という布陣で登場。オープナーから太字でロックバンドと書きたくなるアグレッシヴさで「やめちゃる」が鳴らされた瞬間から、何か強力に吹っ切れたムードを感じた。この曲は仕事を辞めたいのに口ばかりで辞めない人のことを歌った曲だが、後でこの曲が1曲目だったことがなんとなく符牒するとは思いもしなかった。それにしても音が良い。DAIKIのレスポールの豊かな音とストイックなまでに選ばれたフレージングに射抜かれる。続く「ホームラン」は和樹とYoheyのリズム隊にマンチェビートやさらに大きく言えばUKロックに通じる不敵なグルーヴを感じてニヤニヤが止まらない。今日のBBHFはものすごく生々しいのだ。

尾崎雄貴

DAIKI

尾崎和樹

冒頭からこれまでと違う熱量を受け取っていたら、ふいに雄貴から驚きの発言が。端的に言うとBBHFが彼の中で存在が大きくなりすぎて、今回のライブで終わらせようとしていたというのだ。が、フロアが悲鳴を上げる間もなく、辞めることを辞めた、BBHFは不滅なのでと、ここでは詳しい経緯は話さなかったのだが、このことが一気にファンに安堵をもたらしこれまでに感じたことのないバイブスが発生。「メガフォン」のピアノSEのイントロへの反応はさらにビビッドで、DAIKIと岡崎のユニゾンするギターフレーズにも声にならないため息がもれる。ラテン的なリズムを持つ「花のように」も生のライブアレンジが躍動し、力強く跳ねるサビでの雄貴のボーカルには“明日の雨を待つ花のように”立っている人への憧憬を彼自身に見る思いがした。続いては、出だしにギターアンプのノイズが聴こえるのすらビビッドで何が演奏されるのか気持ちが前のめりになるなか、「どうなるのかな」がこれまでに感じたことがないほど、ロックバンド然とした存在の強さでもって鳴らされるのに驚いた。それでいて和樹のハイハットの緻密さもYoheyのフックの効いたフレーズも明確に聴こえ、まさに試行錯誤してきたバンドサウンドの現在の到達点が鳴っている感じだ。

BBHF

DAIKIがストラトに持ち替え軽快なリフを聴かせ、Yoheyが旨味とフックを加味した「愛を感じればいい」の抜けの良さは過去最高じゃないか?インディロックのメンタリティを通過して、現行の世界のポップミュージックに通じるライブアレンジを実現する。青年が成長していく過程の煩悶を長らくBBHFの音楽に見ていたし、いまももちろん軸にはあるけれど、ダイレクトに演奏に感銘するパーセンテージが圧倒的に増えた。

MCでは先ほどの話題から変わって、先日、外国人の多いとある結婚披露宴に招待され演奏してきたと雄貴。「高い酒をバッカンバッカン飲んで、映画のワンシーン、マルーン5の映画みたいだった」と話すとフロアは納得。そこでも披露し、自分は日本語で歌うのに客はかまわず英語で歌うという、欧米圏定番のパーティソング、The Killersの「Mr. Brightside」をこのタイミングで披露したのだが、ストレートな8ビートとキャッチーなサビで歌えないものの続々と腕が上がり振られていた。

尾崎雄貴

DAIKI

尾崎和樹

オーディエンスはこのカバーでさらにもう一段階開かれたバイブスを保ちながら、「死神」での雄貴のドラマチックな歌唱に集中。Yoheyのベースがまるでシンセベースのようなバウンシーさなのも瞠目した。その緊張感は続く「Torch」にも漂い、雄貴はマイクスタンドにすがるように身体を折り曲げて歌う。さらにDAIKIのセミアコの気だるげでサイケデリックなリフが曲のイメージを雄弁に語る「Here Comes The Icy Draugr」の迫力は、ちょうどオアシス再結成やグラストンバリーのヘッドライナーのニール・ヤングのことなんかが個人的には思い出されたのだった。それぐらい音楽は繋がっているのだと。深みのある曲が続いたあと、「涙の階段」では光のある場所に出てきたような音像に照らされた気分だ。

そこで本編ラスト1曲を残すタイミングで機材トラブルが発生し、雄貴とDAIKIの飾らない会話が聞けることに。雄貴が割と明確に低い声でMCする様子をDAIKIが「某バンドよりはっきりしてる。低いトーンで」と言うと、雄貴は「DAIKIくんにカッコいいって言われると、カッコいいにカッコいいって言われてることになる」と、BBHFというバンドが分かる発言も。そこからメンバー紹介となったのだが、Yoheyを「DAIKIくんのマブ」と紹介した雄貴にとって、彼らの存在感はより大きなものになってきたのだろう。予想外の時間を挟んだが、そのことでラストの「サラブレッド」の“それでも人生は進む感”というか、走るテンポのこの曲をよりいまのBBHFを投影して楽しむことができたのだった。

BBHF

アンコールの1曲目はイントロの第一音に小さく歓声が上がった「バック」。よりラップのフロウに近いヴァースが生き生きとしている。そして1回のライブでカバーを2曲やるのは初めてだと言いつつ、初めてカバーしたアーティストからリアクションがあった曲というMCに“分かった!”とざわざわするフロアの様子も楽しい。予想は当たっていて、カバーシリーズのなかでも人気の高いThe 1975の「Chocolate」が雄貴の日本語詞もシンガロングが起きる。曲が終わっても”僕らはやめない、絶対やめない”のリフレインが少し続くほどの盛り上がりを見せた。

DAIKI

その流れで今回の『MELT』に続く『ATOM』と題されたワンマンライブが来年4月に開催されることを発表。バンドも形を変えていくということを意味するタイトルの変化、そしてBBHFで曲を作ることは生半可なモチベーションでは難しいということも率直に話した雄貴。それでもこのバンドだから実現できる音楽の兆しを彼はこのライブでも感じたようなのだ。大好きなバンドも永遠は保証されず、自分たちも変化していく。この日最後に演奏されたのが、曲にそうした想いがすべて託された印象の「バックファイア」だったことが、尾崎雄貴からの表明だったと思う。融合(MELT)を経て、唯一無二の原子(ATOM)として具現化する今後のBBHFの音楽を待ちたい。

尾崎雄貴
BBHF

文=石角友香
撮影=SHUN ITABA

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