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【松本市美術館の公募展「第10回 老いるほど若くなる」】 70歳以上の公募展。静岡県内からの作品4点を確認。「超老芸術」稲田泰樹さんを発見

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は長野県松本市の松本市美術館で4月26日に開幕した公募展「第10回 老いるほど若くなる」を題材に。静岡県の4人の作品も展示。

2004年に始まった70歳以上の公募による同展は10回目を迎えた。これが最終回という。過去9回は審査員の選考を経て入賞・入選作のみを展示していたが、今回は規定を満たした全ての作品を展示する「アンデパンダン形式」を採用している。30都道府県の300作品の応募があり、展示作品リストには286点の名前がある。

年代別の統計をみると、今回は約4割が80歳以上。応募者の平均年齢は、第1回(2004年)の75.7歳から今回は77.9歳に上がっている。20年間の社会の高齢化と軌を一にしていると言ってもいいだろう。

稲田泰樹さん「スーパームーン」


展示作品を一つ一つ見て回っていると稲田泰樹さんの作品「スーパームーン」が目に入った。2019年の第46回二科静岡支部展の県二科賞に輝き、県内各地で個展も開いている。アーツカウンシルしずおかが取り組む「超老芸術」の代表的な作家としても知られる。

巨大な甲殻類が都市を圧する細密な作品の印象が強い稲田さんだが、今回はスクラッチで夜空に浮かぶスーパームーンを東京の夜景に重ねた。黒い画面に浮かび上がる線が、それ自体光り輝いているように見える。大宇宙の原則に人類の創造物は到底かなわない。そんなメッセージも読み取れる。

矢部みどりさん「風越山」


矢部みどりさんの水彩「風越山」は正確なスケッチをベースに、美しい稜線と深く濃い緑で画面を構成。さまざまな素材を駆使した上原良子さんのコラージュ「お城」、ロシアの最高権力者への怒りとウクライナへの連帯を示した山本正雄さんの油彩「平和ー不戦」も会場内で存在感を放っていた。

上原良子さん「お城」

山本正雄さん「平和ー不戦」


高齢者の表現活動は、「生きがい」だけでなく「健康寿命」という具体的な数値を伴う目的に資するものとして、今後より一層注目が高まるように思う。彼らがのびのびと創作に打ち込める環境が確保されてほしい。

「老いるほど若くなる」展は最終回とのことだが、こうした美術館や公的なアート機関が関わる発表の機会が全国でもっと増えたらいい。

(は)

<DATA>
■松本市美術館「第10回 老いるほど若くなる」
住所:長野県松本市中央4-2-22  
開館:午前9時~午後5時
休館日:月曜(祝日の場合は開館し翌平日休館)
観覧料(当日):一般1000円、大学生と70歳以上の松本市民600円、高校生以下無料、障害者手帳携帯者とその介助者1人無料
会期:6月1日(日)まで

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