独特なステップで得点を量産する宇都宮ブレックス、比江島慎選手〈Bリーグスター選手ガイド③〉【バスケ】
Bリーグスターガイド③ 比江島慎
今シーズン、開幕9年目を迎えたBリーグ。今夏行われたパリ五輪での日本代表の奮闘ぶりも記憶に新しく、現在では強豪チームの試合でチケット争奪戦が行われるなど、絶大な人気を誇っている。そこで『ラブすぽ』では「今年からBリーグを見よう!」と考えている読者のために、「この選手は押さえておこう」という、Bリーグのスター選手を厳選してご紹介する
比江島慎
宇都宮ブレックス
背番号:6
日本代表が自力でのパリ五輪出場権を獲得したFIBAワールドカップ2023の17~32位決定戦、ベネズエラ戦の第4クォーターで17得点と爆発し、日本代表の逆転勝利に貢献した比江島慎。3Pを沈めた直後の「ベロ出しポーズ」も含め、この試合で比江島の全国的な知名度は一気に爆発したが、日本代表では長きにわたって「エース」の重圧を担い続けた男でもある。
洛南高校では1~3年時のウインターカップ3連覇に貢献し、青山学院大学でも3~4年時にインカレを制覇。各世代で結果を残し続け、大学4年時の2012年に代表に初選出される。以降、代表での存在感を徐々に高め、2016年に行われたリオ五輪の世界最終予選では「日本のエース」に。ただ、この頃の日本代表はまだ世界レベルでは結果を残せておらず、比江島が孤軍奮闘してもチームは敗れる――といったシーンがいくつも見られた。
最大の特徴は「比江島ステップ」と呼ばれる独特なリズムのドライブ。さらに、高確率で沈めるアウトサイドシュートも含め多様な得点バリエーションを持つ点取り屋でもある。特に集中力が高まったときの爆発力は日本人選手でも屈指で、いわゆる「当たり出したら止まらない」タイプ。先述したワールドカップ・ベネズエラ戦の第4クォーターもまさにそれで、国内では「比江島タイム」と呼ばれ他クラブの選手たちからも恐れられている。
191センチという身長、集中力が高まったときの爆発力、オフコートでは決して口数の多いタイプではないことも含め、そのスタイルは漫画「スラムダンク」の仙道彰を彷彿とさせる。
プロとしてのキャリアは大学卒業後の2013年4月にアイシンシーホース三河(現シーホース三河)に入団したところからスタートし、1年目からNBLのルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。Bリーグ開幕後も三河のエースとして活躍し、2017‐18シーズンにはMVPも受賞している。
その後、オーストラリアやNBAサマーリーグでのプレーを経て宇都宮に移籍。移籍後も強豪チームであるチームを牽引し、2021‐22シーズンにはチームをBリーグ年間王者に導くとともにチャンピオンシップMVPも獲得している。
今年で34歳とすでにベテランと呼んでいいキャリアを積んでいるが、昨シーズンは3ポイント成功率でリーグ最高スタッツをマークし、ベスト5にも選出。パリ五輪にも代表最年長選手として出場してオンコート、オフコートでもチームを鼓舞し続けた。年齢を重ねる中でフィジカルの衰えこそ実感していると言うが、経験とテクニックでカバーし、いわゆる「衰え」を一切感じさせないプレーで今なお第一線でプレーを続けている。
ちなみに、代表では最年長だが所属する宇都宮には田臥勇太(44歳)、竹内公輔(39歳)、ギャビン・エドワーズ(36歳)、渡邉裕規(36歳)、遠藤祐亮(35歳)といったベテラン勢がそろっており、チーム内では「中堅」。代表で見せるプレーとはまた違う、「宇都宮ブレックスの比江島慎」のプレーも必見だ。
チームは昨シーズン、B1最高勝率を挙げながらチャンピオンシップで敗退。今シーズンはほぼメンバーを変えずに挑む「リベンジ」のシーズンになる。パリ五輪出場という節目を終え、さらに円熟味が増した比江島。今シーズンもコートで「比江島ステップ」「比江島タイム」をどれだけ見ることができるのか、注目してほしい。
文・花田雪