【室蘭沖堤防ルアー攻略ガイド】ロックフィッシュ・青物・フラットフィッシュ…魚種別の狙い方を解説
渡船して釣りが楽しめることで今となっては全国的に貴重な釣り場といえる噴火湾に面した室蘭港の沖堤。大型ロックフィッシュの聖地として有名だが、近年はカレイやヒラメといったフラットフィッシュ、秋は青ものもロッドを絞ってくれる。実釣のようすを交えながらフィールドをガイド。
Photo & Text by Takanori Nakagawa(North Angler’s)
North Angler’sとは?:北海道での釣りを満喫するための情報誌。北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している。誌面と連動したウェブサイト『つり人オンライン』での記事展開に加え、好評放送中の『ノースアングラーズTV』や公式動画チャンネルである『釣り人チャンネル』を通じても、北海道の釣りの魅力を発信している。
注目度を増す室蘭沖堤防
国土交通省港湾局は、観光資源としての港湾における釣り施設や、既存の防波堤等の利活用を進めている。そこで地域の関係者による地方創生を目的とした、釣り文化振興の取り組みが進められている港湾を『釣り文化振興モデル』として指定。道内では2020年、苫小牧東港の通称・一本防波堤が指定されたが、今年8月、新しく室蘭港と江差港も加わった。
江差港の開放時期は未定だが、候補地は西防波堤。室蘭港は祝津絵鞆地区防波堤と、絵鞆臨海公園ボードウォークが釣り開放エリアとして予定されている。室蘭は25年にプレ開放、26年に本格開放を目指している。室蘭港に釣りで訪れる人はとても多く、宿泊や食事など経済効果は決して小さくないだろう。
室蘭港といえば、ロックフィッシュの聖地といわれる沖防波堤が有名。良型のアイナメやソイを求めるアングラーで休日はにぎわう。本誌215号(2024年7月号)で紹介しているように、遊漁船業法の一部改正により、沖堤への瀬渡しができなくなるのではと危惧された。が、渡船業を営む室蘭市『つりぶねや』は、法令を遵守して瀬渡しを継続していくという。末永く釣りができるよう、私たち釣り人はルール&マナーを守り、事故のないよう安全に楽しみたい。
今回は夏枯れ時季が終わり、魚の活性が上がる秋の釣りをフィーチャー。常連で洞爺湖町在住の玉川正人さん、室蘭沖堤には10回ほど渡ったことがあるという北斗市の石本眞那斗さんに同行。ハイシーズンにはまだ早かったが、沖堤ならではのナイスフィッシュが次々とロッドを曲げた、当日の模様を交えながら紹介したい。
アイナメの時季には少し早かったが、壁際で40cmアップを連発させた石本眞那斗さん。『パワーオーシャンカップ2023トーナメントツアー』北海道第1戦で準優勝、第3戦で3位に入り、アングラーオブサイヤーを獲得した大学生。宮城県の出島港で行なわれた東北・北海道の頂上決戦『パワーオーシャンカップ スーパーロックフィッシュ』でも準優勝と好成績を残した期待の若手アングラー
室蘭沖堤防の「南外」で狙える魚種
今回の乗船場所は『むろらん温泉ゆらら』裏の桟橋。出船は午前5時半で、それまでに受付を済ませる。渡れる防波堤は「絵鞆」、「白」、「赤」、「南外」、「北外」の5ヵ所。
事前に玉川さんと相談し、渡るのはディープエリアで青ものやカレイ、シャローエリアでアイナメ、カジカをねらえる「南外」と決めていた。基部側の大黒島から沖に突き出すように造られ、長さは約800m。基部側は底が見えるほど浅く、灯台に向かって深くなり、水深による水温差は大きい。「秋は水温変化が加速します。適水温を求めて魚のポジションが変わりやすく、シャローからディープまでラン&ガンしながら、魚の付き場を探ることから始めます」と玉川さん。秋は前述のように魚種が豊富。それぞれマッチするタックルは次のとおり。
根魚&カレイ
ねらいやすいのは産卵期のアイナメ、カジカ、エゾメバル、クロソイ、そしてカレイ類だが、汁系と呼ばれるワームならすべてねらえる。足もとの基礎ブロックや壁際の根魚をテクニカルに釣るなら7〜8フィートのMクラス前後のベイト、または14〜21gまでのリグを使えるスピニングもあると幅広い状況に対応できる。
壁際にリグを落とし、サミングしながらフォールスピードをコントロール。障害物に乗った後に数回シェイクし、フォールを繰り返してバイトに持ち込んだアイナメ。
イシガレイは肉厚で引きが強く、これからの季節は60cmアップも釣れる。マガレイも狙え35cm前後がアベレージサイズ。
石本さんは30cmオーバーのクロソイもゲット。20m先の壁から1mほど離したところにキャストし、着底後のリーリングからテンションフォールでヒット。ケーソンの隙間でも釣っていた
青もの
稀に80cmほどのブリクラスもあがる。ジグウエイト70g程度のショアキャスティングロッド、スピニングリールは5000番クラス、PE2号前後200m以上、リーダーはフロロまたはナイロンの40ポンド以上がベター。ルアーはミノー各種、バイブレーション、ジグを用意したい。
水深のある先端部でキャストを繰り返してアングラーが、ワラササイズの青ものをジグでキャッチしていた
魚種ごとにポイントを見極める
開始早々、沖めでは青ものの跳ねが見られたが、30分ほどねらってキャッチされたのは一尾のみ。そこで、ターゲットを壁際のアイナメ、遠投でのカレイにチェンジ。こちらも厳しい状況に変わりはないが、ポツポツと飽きない程度にアタリがあり、数尾のアイナメとカレイが釣れた。後半は秋の進行状況を確認すべくシャローエリアに向かった。
産卵を意識した数尾のアイナメは見られたが、あまり海水温は下がっておらず、フグにワームを千切られるなど夏を引きずっている感じ。そのため、魚のポジションが判然としない。水温が下がると、砂地のカケアガリと基礎ブロックの境目にマガレイやイシガレイ、表〜中層の壁際にトウベツカジカ、壁際全般やシャローエリアにアイナメなど、各魚種のポジションがはっきりとするのだが……。
なかでも10月下旬から産卵が本格化するトウベツカジカは、直前に壁際に集まり、産卵を終えると基礎ブロック上に陣取ることが多い。口の大きいカジカには、アピール力の大きな5〜6インチのワームやビッグベイトが有効だ。
秋はアイナメも産卵期に入る。ポジションは目まぐるしく変化するが、アクションのどこかで「速いスピード」を入れると口を使わせやすいと玉川さんは言う。そこでクランクベイトやジグを使い、高速リトリーブとフォールで誘うのが手。このほか、重めのバイブレーションによる小刻みなリフト&フォール、ジグヘッドリグでのワインド釣法もおすすめだ。
ヒラメは5〜7月のハイシーズンに比べると低調だが、近年は水深15m前後で釣果情報が多くなっている。個体数は増加傾向にあるらしく、今後は沖堤でも安定して釣れるようになるかもしれない。
「産卵を意識してなのか、良型のアイナメはシャローのほうが多い」と玉川さんは分析。外海側に60mほどキャスト。基礎ブロックと砂地の境目に対し、ときおり底を切るくらいのスピードでリーリングして釣った
良型のシマゾイをランディングしていた石本さん。ビフテキリグ10gで、ワームは『レディーフィッシュ』。水深が浅く、フォールスピードを少し遅くしたく、鉛の『ビーンズシンカー』を使用。テトラの絡む壁際に落とし込み、リフト&フォールを繰り返していると、テトラからリグが落ちたタイミングできた。サイズは44cm
渡れる条件は……
冬に向かうにつれ北西の季節風が強くなり、沖堤に渡れる日は少なくなる。とくに南外防波堤は船の接岸が難しくなるようだ。チャンスは東風が吹く条件。渡れる防波堤については、受付時に船長に確認したい。なお、北西の風が強いときは風を背にできる北、赤防波堤、大黒島に守られる白防波堤がねらいめ。ただし、北西の風が6m前後になると北、赤防波堤は外海側からの波しぶきを浴びやすい。防寒、防水対策は万全に。
厳しい条件下でもしっかり釣果を出していた石本さんは、「年に数回しか行けない室蘭沖堤ということで、すごくワクワクしていました。当日は最高の釣り日和になり、テンションが上がりました。釣れる魚種も多く、本当に楽しかったです」と振り返った。
シーズンを通じてさまざまな魚種がねらえ、陸っぱりに比べるとビッグフィッシュに出会える可能性が高い室蘭沖堤。とはいえ近年はプレッシャーが高く、一筋縄ではいかなくなっている。ウデを磨くフィールドとしても渡る価値があるだろう。
渡船の予約は『つりぶねや』まで。8月から大人4,000円、子ども2,000円に料金が改定。朝便と昼便のほか、午前9時集合の中便が新たに設定された。通常は写真の場所から出船するが、風向きにより乗り場は変わる
当日の使用タックル
石本さんのタックル
(左)
ロッド:ジャッカル『リボルテージRV-C66M』
リール:ダイワ『スティーズA TW』
ライン:クレハ『シーガーR18フロロリミテッドハードバス』10lb
全体的に張りのあるロッドで、ベリーからバットにかけて強く、良型を掛けても力負けしない。20~30mの中距離、または足もとを7~14gのビフテキやフリーリグ、チャターベイト、スピナーベイトで攻略するのに向く
(中央)
ロッド:シマノ『エクスプライド270MH+』
リール:ダイワ『カルディアLT2500S』
ライン:ダイワ『UVF PEデュラセンサーX8EX+SI3』0.4号
リーダー:クレハ『シーガープレミアムマックスショックリーダー』8.5lbを1m
ロッドはバスのパワーフィネス用。ティップからベリーかけてしっかり曲がり、繊細なティップを備えつつバットはしっかり。7~14gのリグに対応し、近距離をねらうときに好適。ボートからの釣りでも万能に使える
(右)
ロッド:ダイワ『HRF AIR 910H/XH』
リール:ダイワ『ルビアスLT4000-CXH』
ライン:ゴーセン『ルーツ PEx8マルチカラー』0.8号
スペーサー:ゴーセン『ルーツ PEx4』1.2号を4~5m
リーダー:クレハ『シーガープレミアムマックスショックリーダー』16lbを1.5m
主に28~56gのリグを使うときに用いるタックル。磯のロックフィッシュねらいでも重宝する。ロッドは全体的に硬めで、遠投した先の障害物にスタックしてもリグを外しやすく、フッキングも決まりやすい
石本さんの使用ルアー
(左)
ワーム:ノリーズ『3-1/2レディーフィッシュ』ブルーキャスティーク
シンカー:ジャングルジム『ビーンズTG』10g
フック:ケイドリーム『ロッキーフック』#1/0
(中央)
ワーム:ノリーズ『3-1/2レディーフィッシュ』パンプキンシードスモールグリーンFlk.
シンカー:ジャングルジム『ビーンズ』10g
フック:ケイドリーム『ロッキーフック』#1/0
(右)
ワーム:エコギア『熟成アクアリングマックス3インチ』青イソメ
シンカー:ジャングルジム『ビーンズ』42g
フック:リューギ『ダブルエッジ』#2
遠投時は42gが基本で、近距離は7~14gがベース。どちらもビフテキリグを使うことが多く、風の強さやボトムのタッチ感などに応じてシンカーを選ぶ。飛距離を出したいとき、より感度を求めるときはタングステンタイプの出番。ワームは季節のベイトを参考にチョイスする。カラーは濁っているなら派手め、クリアならナチュラルまたはクリア系がよい
玉川さんのタックル
(左)
ロッド:シマノ『エクスセンスジェノスS97MH/F』
リール:シマノ『ツインパワー3000MHG』
ライン:XBRAID『アップグレードX8』0.8号
リーダー:クレハ『シーガーグランドマックスFX3号』1.5m
遠投によるアイナメ、カレイねらいで使用。砂地から基礎ブロック上のズル引き、またはスイミングで操作。このロッドは軽量ゆえ、片手で繊細なアクションを加えやすく、ほどよく柔軟なティップで繊細なバイトをはじきにくい
(右)
ロッド:ゼナック『スピラドブラッカートB3-70』
リール:ダイワ『スティーズSV TW 1016SV-SHL』
ライン:クレハ『シーガーR18フロロリミテッド』14lb
壁際のアイナメねらいで使用。このロッドは高弾性ながらも追従性がよく、スピナーベイト、クランクベイト、メタルジグなど幅広いルアーに対応する。ラインを20ポンド程度まで上げ、14~21gのリグを操作するときにも重宝する
玉川さんの使用ルアー
(左)
ワーム:ゲーリーヤマモト『ヤマタヌキ』ウォーターメロンペッパー
シンカー:ジャングルジム『ビーンズ』24g
フック:リューギ『インフィニ』#1/0
ビーズ:ハリミツ『カットビーズ』5mm
アイナメねらいのズル引き、基礎ブロックの面にぶつけながらのスイミングで使用。シンカーは基礎ブロックの間に入り込まない程度で、レンジキープ可能なウエイトを選ぶ
(右)
ワーム:ゲーリーヤマモト『モコリークロー』ブラック/ブルーフレーク
シンカー:スタジオ100『タングステンラウンドショットシンカー』3/4oz
フック:リューギ『インフィニ』#2/0
ストッパー:第一精工『テキサスストッパー』L
基礎ブロックやテトラと堤防の間の穴撃ちで使用。転がりやすいラウンド形状のシンカーにストッパーを装着し、確実にワームを奥底に届けることが釣果アップの秘訣