量を食べる食習慣から、今は食事で体を整える生活に。自家製みそや梅シロップにもハマってます~五輪メダリスト寺川綾さんインタビュー
多くのアスリートたちから感動をもらい続けている2024年。元競泳選手で五輪メダリストの寺川綾さんがFYTTEに登場。2回目の今回は、競技生活を終えたあとの現在の暮らし、食生活などについて伺いました。極限まで追い込んできたからこその苦労など、アスリートへの興味が深まる貴重なお話を聞くことができました。
引退後は「陸」での生活がつらかった……
—-競技生活のなかで、水中で長い時間を過ごしてきた寺川さんですが、競技からの引退後は「陸」での生活に苦労されたそうですね。
「引退後は『陸』がつらかったですね(笑)。水中は浮力がかかるので、練習はつらくても体自体はラクなんです。1日のうち陸で過ごす時間がほとんどになると、重力によって体が重く、生きているだけで筋肉痛になるような状態でした。これまでとは違う疲労感があって、引退後のほうがぐっすりとよく眠れるようになったと感じます」
—-報道番組でスポーツキャスターとしてレギュラー出演され、現在はお子さんもいらっしゃいますが、睡眠時間は確保できていますか?
「7時間眠らないと体調が悪いなと感じてしまうので、睡眠時間の確保のために夜は家の中でなにごとも急いでいる感じです。子どもがいつまでも見てしまうので早めにテレビを消し、子どもが寝るときには私も疲れ果てていっしょに寝てしまいます。
だから、新幹線などの移動時間を仕事の時間にすることも多いです。家でやり出すと時間が無制限にあるので、気がついたら『食べてない』『水飲んでいない』なんてことになってしまいますが、電車だと目的地で降りないといけないので、安心して集中できます。ひとつのことしかできないところがありますね。
朝が得意なので、その日にできなかったことは翌朝にやります。目覚ましがなった瞬間起きられるような感じで、起きたらすぐに動けます」
食べなければいけなかった習慣から、いまは空腹感との戦い
—-現役時代から、食生活は変わりましたか?
「私は現役時代、体重が減りやすいタイプだったので、炭水化物を多めにとったり、朝食のさらに前のタイミングで食事をとったりして体重を維持していました。選手によってベストの体重や筋肉量、体脂肪量があるので、水泳選手はこういう体型がいいというのは一概にはいえないんですが、同じトレーニングをしていても体重が減らず、食べたぶんだけ増える人もいます。
現役時代は、1日のなかでお腹が空いている時間がないような生活を送っていたので、いまでもちょっとお腹が空くとイライラしてしまいます。それがわかっているので、仕事に支障が出ないようにちょっと食べられるものをポケットに入れておいたり、食べたくならないようにあえて予定を入れたり。
体重は現役時代と変わっていないんですよ。筋肉量が減っているのに同じって、こわいですよね。中身が違いすぎますから、いいわけがありません(笑)。でも、食べないのはよくないと思っています。車がガソリンがない状態で走っているようなものですから。だから、できるだけ体によいものを、おいしく食べたいな、と思っています」
食事で体を整えるために、これからもチャレンジ
—-SNSでは手づくりのおみその写真をアップされていましたね。
「子どもがいても簡単につくれる、がんばらないというコンセプトの料理教室に通っていたんですが、つくったものがおいしくて、簡単で、体にもよくて。同じタイミングで、知り合いの方に手づくりのおみそをいただいたら、びっくりするくらいおいしかったんです。よけいなものを入れないから体によくて、まろやかで、しかも簡単。それから私も手づくりするようになりました。
私も子どもたちも、自家製の梅シロップを炭酸で割って飲むのが好きです。だから、わが家にはジュースがないんですよ。かりんもおいしく漬けられたらいいなと思っていて、いろいろ調べているところです。
私自身、食事でなにかを予防したり、改善したりして育ってきたので、私も子どもも食事で体を整えられたらいいなと思っています。私個人としては、日々時間に追われ、常に急いでいるような生活なので、イライラに効く食事を知りたいです(笑)。めんどうなことは苦手ですが、探究心はあるので、いろいろとチャレンジしていきたいですね」
寺川綾
1984年生まれ。競泳選手としてオリンピックに2度出場し、2012年ロンドンオリンピックでは100m背泳ぎと、4×100mメドレーリレーで銅メダルを獲得。競技生活からの引退後は、報道番組でスポーツキャスターとして活躍するほか、ミズノスイムチームコーチとして競泳の指導、普及にも取り組む。50mと100mの背泳ぎ日本記録保持者。
撮影/布川航太 取材・文/馬渕綾子