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【教育評論家 親野智可等先生が解説】親はなぜ気づかない? 「国語の次は算数も頑張ろう!」でやる気になる子どもはいない

コクリコ

「国語の次は算数も頑張ろう!」は、子どもにさらなる頑張りを求める残念な言葉。親が何気なく使っている表現や伝えている言葉が子どもの成長に与えるデメリットについて、教育評論家の親野智可等先生が解説。言い換えフレーズなども紹介します。

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公立小学校で23年間教師を務め、現在は教育評論家として講演活動などを行っている親野智可等(おやの ちから)先生。経験に基づいた具体的なアドバイスを参考にする子育て世代は多く、その丁寧な解説で救われた方はあとを絶ちません。

本連載では、親が何気なく使っている表現や伝えている言葉が子どもの成長に与えるデメリットについて解説。親野先生による言い換えフレーズなども紹介します(全3回の3回目)。

「国語、頑張ってすごいね! 次は算数も頑張ろう」で、子どもが感じることとは?

子どもがテストで前回よりもいい点数を持ち帰ってきたとき、「もっと頑張れば、もっといい点がとれるよ」、「国語がこれだけできたんだから、次は算数も頑張ろう」といってしまう親御さんは多いものです。

反射的に親の口からこぼれる言葉に、子どもは一体どんなことを感じているのでしょうか。

「親は褒めたあとに子どもの意欲をさらに引き出そうとしますが、そんな言い方をされても子どもは全然うれしくありませんし、次への意欲にもつながりません。

我が子は頑張ろうと思うどころか、『まだまだ頑張りが足りないんだ』と、自分が不十分であることを感じてしまいます。

ですから、褒めるときは余分なことはいわないこと。親の欲は不要です。純粋に我が子が努力したことを褒めてあげたほうが、実は意欲を引き出せます」(親野先生)

親が心がけたい言い換えフレーズ

「もっと頑張れば、もっといい点がとれるよ」
「国語がこれだけできたんだから、算数も頑張ろう」
「国語、頑張ったんだね。パパママもうれしいよ」

いい点数がとれたことを子どもが喜んでいるなら、パパママも一緒に喜んであげることはもちろん大事です。しかし、点数にこだわりすぎないことも大切。それでないと、結果が悪いときに子どもは見せにくくなってしまいます。点数よりも、「一生懸命にやったもんね」と努力を褒めてあげましょう。

また、悪い点数をとった場合は、それを責めるのもNG。子どもの悔しい気持ちに共感して、一緒に悔しがってあげてください。そうすれば、悪い点数をとったときもちゃんと見せてくれるはずです。

親が表現を間違えると、きょうだい仲は悪くなる!?

「親御さんが反射的に使っている言葉では、きょうだいやお友だち間のことで、『仲良くしなきゃダメだよ』というフレーズがあります。

このようにいわれた子どもたちは、「自分たちは仲が良くないんだ」と思ってしまう可能性があります。否定的な言語化によって、子どもの中に否定的な自己イメージができてしまうからです。

したがって、子どもには肯定的な言い方を意識しましょう。肯定的な言語化は肯定的な自己イメージになり、それが設計図になってきょうだいもお友だち間も仲が良くなります」(親野先生)

親が心がけたい言い換えフレーズ

「仲良くしなきゃダメだよ」
「ふたりの仲が良くて、パパママはうれしいな」

たとえば、きょうだいでテレビを見ているだけなのに、親から「仲が良い」といわれたら、「自分たちは仲が良いきょうだいなんだ」という、いいイメージを子どもは膨らませます。これによって、実際に仲良くなっていく可能性が高まります。

宿題には、意欲的にさせるコツがあります。  写真:アフロ

やってほしいことに対しては、ワンクッションという魔法を!

─問題─
遊びに夢中で宿題にとりかからなかったり、宿題はやったけれど字が汚かったり、誤字を書いていた子どもに対して、ご自身に近い対応を次から選んでみてください。

① 「宿題しなさい!」と、何度も言い聞かせる。
② 「この字がダメ。書き直しなさい」と、ダメな部分を指摘してやらせる。
③ 「宿題、ちゃんとやったら100円よ」と、ご褒美をチラつかせる。
④ 「たくさん遊んだね/よく書けているね」と、まずは状況を丸ごと肯定的に受けとめたり、褒めたりする。

「①~④の中で親御さんにとってほしい対応は、④です。

①と②は、宿題は不愉快なものだと伝えていることになります。③のご褒美作戦には副作用があり、かつて私の教え子にも『いくらくれる?』が口癖の子がいて、物事の価値観に影響が出ていた子がいました。

子どもに取り組んでもらいたいものがある場合は、まずは丸ごと肯定的に受けとめたり、褒めていい雰囲気をつくったりしてから、やってほしいことに導きましょう」(親野先生)

親が心がけたい言い換えフレーズ

「宿題しなさい!」
「この字がダメ。書き直しなさい」
「宿題、ちゃんとやったら100円よ」
「たくさん遊んだね。楽しかったね。そろそろ宿題しようか」
「よく書けているね。この字はバランス良くきれいに書けているから、これと同じようにこっちの字を直そうよ」

大人でも上からガミガミ命令されたり、「字が雑だから、書き直し」と頭ごなしにいわれてやる気が出る人はいません。

子どもであればなおさらなので、まず先にいい雰囲気をつくるというワンクッションをおいてから、取り組んでもらいたいことにつなげましょう。

〈子どもの夢中〉は脳力を伸ばす絶好のタイミング

「早く宿題をしてほしい」「早くご飯を食べてほしい」と、大人はつい子どもを急かしてしまいますが、子どもが遊びに熱中しているなら、たまには付き合ってあげることも大切です。

好きなことに集中しているとき、脳の中ではニューロン同士をつなぐシナプスが増えていっています。

情報処理を担うシナプスの数は、頭の良さに関係しているといわれているので、子どもがひと区切りつくまで見守ってあげる日をつくってもいいでしょう。

「今日も子どもと一緒に楽しく暮らそう!」で、幸せな親子関係に

親の言葉は子どもにとって最大の環境であり、子どもの成長に環境が与える影響は非常に大きいと親野先生はいいます。

実際、親御さんの中には、自身の親が何気なく口にしたひと言を大人になった今でも覚えていて、それを思い出しては苦しくなっている方もいるはずです。

だからこそ、子どもには、否定的な言葉ではなく、肯定的な言葉をかけることが大切です。

「子どもの将来を思って、親は応援するつもりでつい厳しい口調になってしまいますが、勉強やしつけに一生懸命になるよりも、『今日も子どもと楽しく暮らそう!』という気持ちを優先してください。

立派な親にならなくていいから、幸せな親子になってほしいと私は心から思っています」(親野先生)

肯定的な言葉を使うと、親子関係が良くなり、子どもの自己肯定感や他者肯定感が自然と高まります。声かけひとつで子どもは変わっていくので、今日から子どもが伸びる言葉を選んで使ってみてください。

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◆親野 智可等(おやの ちから)
教育評論家
長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。子育て世代に寄り添ったSNS投稿も話題で、「ハッとした」「泣けた」という声が多数寄せられている。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも講師を務め、オンライン講演も経験豊富。著書に『親の言葉100 ちょっとしたひと言が、子どもを伸ばす・傷つける』(グラフィック社)など。人気マンガ『ドラゴン桜』(講談社刊)の指南役としても知られている。

取材・文/梶原知恵

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