【ことし一番の絶景】気象条件が合わなければ見られない…贅沢な朝のマジックアワー/北海道・十勝
数多くの「絶景」を持つ北海道。
観光情報にはなかなか載っていない、「日常の絶景」も多くあります。
今回は、HBC帯広放送局のカメラマン・大内孝哉さんが撮影した、十勝平野に雪が積もった早朝の風景をお届けします。
連載「テレビカメラマンがとらえた“一瞬”の北海道」
ことし一番の写真も
11月1週目の十勝平野、紅葉も終わりを迎え、カラマツがまだ少し彩りを残している時期に、雪が舞い降りて来ました!
夜中のうちに降り始め、朝起きたら、うっすら地面に積もっていました。
天気は晴れの予報。東の空を見て雲がないことも分かり、天気が良い日だというのは確信しました。
でもなんとなく、きょうは撮影はいいかな…と迷っていたのですが、外に出てみると、絶景が待っていました。
11月に見た景色の中で最も美しい光景だったので、みなさまにお伝えさせてください。
僕の中で、ことし一番の絶景写真になったかなという一枚も撮影できました。
向かった先は芽室町。
道中から積もっている雪の量も増えてきて、朝霧も発生。すでに幻想的。
「あれ、きょうすごい早朝になるかも」と思わず独り言が出てしまいました。
太陽が昇ってくるちょっと前の時間帯、この光景です。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/100
・絞り f/13
・ISO 2000
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
日高山脈も雪化粧をまとっています。たびたび見ている景色なのに、空の色のグラデーションも濃く、雄大さに圧倒されました。
この景色を見ただけで、やはりきょうの朝はいつもと一味違う!と確信です。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/100
・絞り f/13
・ISO 400
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
一本に続くまっすぐな道。
傍らに防風林。両脇には雪が積もり、畑の緑色もうっすら見えてます。
北海道らしい光景ですよね。
これはまだ日の出前の、早朝6時頃です。
でも、あと数分で太陽が昇ってきます。
この先に上がってくると予想していたのでじっと待ってみました。
ちなみに気温も一桁台。しかし美しさで寒さは忘れています。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/8000
・絞り f/11
・ISO 3200
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
待った甲斐がありました。
やはり一本道の先に太陽が浮かび上がって来ました。
奥には朝霧が発生していて、そのおかげで太陽のフォルムがくっきりと見えます。
ここからが時間との勝負。朝のマジックアワーが始まります。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/100
・絞り f/13
・ISO 1000
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
太陽の光によって赤とオレンジ色に染められている日高山脈。
実はこの光景、とても貴重な景色であり、一瞬の光景です。
登山用語でもあるのですが、「モルゲンロート」と呼ばれています。
ドイツ語でモルゲンは「朝」、ロートは「赤い」という意味だそうです。
まさにその通りの光景ですね。
先に述べた通り、本当にわずかな時間の光景です。太陽がまだ低い位置にあるときに出る色合いです。
少し時間が経つとこの色合いも薄まっていき、消えてしまいます。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/800
・絞り f/11
・ISO 3200
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
後ろを振り返ると、防風林もこの色合いです。
手前は青く、奥はオレンジ。陰影がしっかり出るのもこの一瞬ならではの光景です。
周囲のどこを見渡しても美しくて、シャッターを切る時間が足りません。
時間がもっとほしい!この色合いが一日中続けばいいのに!
なんて思いながらシャッターを切っていました。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/800
・絞り f/10
・ISO 3200
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
僕の中でことし一番の写真になったかなという一枚です。
何度もお伝えしますが、本当に特別な光景でした。
手前の緑は、これから越冬する秋まき小麦です。
薄い緑色ときれいな稜線、そして雪のコラボレーション。
そして奥には、朝霧とまだモルゲンロート現象をわずかに残している日高山脈。
気象条件が合わなければ撮れない、贅沢な光景を一枚に詰め込んだ写真となりました。
一瞬の光景を撮影でき、感無量です。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/800
・絞り f/10
・ISO 3200
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
カラマツの色合いも残っていて、秋と冬のコラボレーションです。
オレンジと雪の白がとても相性がいいです。
・撮影日:2024年11月
・場所:芽室町
・シャッター速度 1/320
・絞り f/11
・ISO 3200
・カメラ:SONY a7Ⅳ
・Edit. Adobe Photoshop Lightroom
冒頭で、この日は写真を撮りに行くか迷っていたとお伝えしましたが、こういう気持ちのときほど、いい意味で景色が裏切ってくれることが多いです。
撮影が終わった後、カメラマンとして朝の感情に反省の念を抱きつつも、こんな景色にめぐり会えて本当にラッキーだったなと感じました。
雪が降っている日は、くもりの日が多いように感じます。この日のように日高山脈がはっきりと見える晴天も、なかなかないなと思います。
もちろん撮影に行って、撮れ高なしのダメだった日も多々あります。
朝は眠いですし、寒いですし、この気持ちを乗り越えるのが一番目の試練。
しかしそんな気持ちも乗り越え、自然相手に何度でも挑むことで、ごほうびのような1日もあるのだなと感じた日でもありました。
早朝の撮影を終え、満足していたところ…またなかなか出会えない、貴重な自然現象が起きているのを発見しました。
これは逃せない…と、向かった先があります。
次回の記事でお届けしたいと思います。
【樹氷のトンネルをくぐった先に…「ここに来てよかった」冬の北海道】
連載「テレビカメラマンがとらえた“一瞬”の北海道」
撮影・文:HBC帯広放送局 大内孝哉
2015年からテレビカメラマンとして、主にニュースやドキュメンタリーを撮影。担当作品に映画/ドキュメンタリー「ヤジと民主主義」や、ドキュメンタリー「核と民主主義」「ベトナムのカミさん〜共生社会の行方〜」「101歳のことば ~生活図画事件 最後の生き証人~」「クマと民主主義」など。
2023年10月から帯広支局に異動。インスタグラム@takayasunset0921では、プライベートで撮影した北海道の写真を公開中。
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は記事執筆時(2024年12月)の情報に基づきます