長崎県・五島列島にしか存在しない幻のカエル? 偶然発見された<ゴトウタゴガエル>
蒸し蒸しとした梅雨の空気に、ポツポツと降り続く雨。筆者の地元である五島列島の梅雨の季節には、あちらこちらでカエルの鳴き声が響き渡ります。
この声を毎年聞くたびに子どもの頃、友達と田んぼや山でカエルを捕まえ、どっちが大きいかを競い合った日々を思い出します。
手のひらの上でぴょん!と跳ねる感触は五島の自然で育った私にとっては、ごく当たり前のことでした。ところが最近、とある記事を見て衝撃を受けました。
「五島列島で新種のカエルが発見された」というのです。
発見された新種のカエルは「ゴトウタゴガエル」と名付けられました。
あの頃、何気なく触れていたカエルの中に、まだ名前がついていないカエルが混じっていたかもしれない。そんなことを考えると、なんだかワクワクしてきませんか?
世界中で五島列島にしかいない<ゴトウタゴガエル>
ゴトウタゴガエルは、世界で「五島列島にのみ生息しているカエル」。普段は山地の森林に生息しており、褐色の体、鼻先から前足の付け根まで伸びるスジが特徴です。
初めて発見されたのは2003年11月。高校の生物教諭だった松尾さんは、五島列島在住の住民から「オタマジャクシがいる」と1通の連絡を受けました。
しかし、松尾さんは疑問に感じたといいます。なぜならば、産卵の時期が他のカエルとは全く違ったからです。
通常、日本に広く分布しているカエルは春に産卵を行います。11月にオタマジャクシがいるというのは普通では考えられないことなのです。
この疑問をきっかけに、松尾さんは五島列島に生息しているタゴガエルの調査を実施。
その結果、通常のタゴガエルと鳴き声や体付きが異なることが明らかになり、DNA鑑定をしたところ既存のタゴガエルとは別種であることが明らかになったのでした。
そして、調査開始年の2003年から約20年の歳月が過ぎた2023年、ついに正式に五島列島固有の新種として記載されたのです。
<ゴトウタゴガエル>の変わった産卵方法
ゴトウタゴガエルはその名の通り、タゴガエルの生態ととても似ています。繁殖期は秋から冬と通常種とは異なりますが、タゴガエルと同様に地表の下にある水流に産卵をします。
そのため田んぼや池に産卵する他種のカエルと違い、ゴトウタゴガエルのオタマジャクシを見ることは非常に困難です。
さらに、オタマジャクシは何も食べず、卵黄の栄養だけで成体になるというのだから驚きです。
五島の自然・美しい環境を守りたい
五島の自然は、まだまだ未知の宝物に溢れている。だからこそ、この美しい環境をずっと守っていきたいと強く感じます。
普段、当たり前のように目にしている自然や生き物達も、よく観察してみると新しい発見があるかもしれませんよ!
(サカナトライター:ティガ)