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早期退職の嵐、予兆はどこに出る?「ネットで“自分”を公開」がパニック回避に

エンジニアtype

早期退職の嵐、予兆はどこに出る?「ネットで“自分”を公開」がパニック回避に

最近HOTな「あの話」の実態

上場企業の早期・希望退職募集が2024年に前年の3.2倍、1万人超に急増したと報じられました。人員削減を表明した企業の顔ぶれを詳しく見てみると、その多くが業績不振からの立て直しや、構造改革を急ぐ製造業が中心のようです。

【24年に早期・希望退職募集した企業の一部】

会社名募集人数オムロン1000人コニカミノルタ2400人※グループ計資生堂1500人シャープ500人リコー1000人日産自動車9000人※グローバル含富士通人数非公開だが200億円の費用計上を発表

製造業が中心だからといって、エンジニアtypeの読者に多いIT企業のソフトウエア開発職が安泰かといえば、必ずしもそうとは言えません。

私の知る限り、事業縮小や撤退に伴い退職者を募るIT企業は増えており、不要と判断した社員を自主的に辞めさせようと仕向ける企業の噂を以前にも増して聞く機会が増えているからです。

今回は、会社から有形無形の圧力をかけられ、退職を余儀なくされた場合の対処法に加え、新天地への転職をスムーズに実現するための取り組みをご紹介します。

博士(慶應SFC、IT)
合同会社エンジニアリングマネージメント社長
久松 剛さん(

@makaibito

2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。動画転送、P2Pなどの基礎研究や受託開発に取り組みつつ大学教員を目指す。12年に予算都合で高学歴ワーキングプアとなり、ネットマーケティングに入社し、Omiai SRE・リクルーター・情シス部長などを担当。18年レバレジーズ入社。開発部長、レバテック技術顧問としてキャリアアドバイザー・エージェント教育を担当する。20年、受託開発企業に参画。22年2月より独立。レンタルEMとして日系大手企業、自社サービス、SIer、スタートアップ、人材系事業会社といった複数企業の採用・組織づくり・制度づくりなどに関わる

目次

待遇悪化はリストラのサイン? 水面下で増える「サイレント・リストラ」危機に直面してからでは遅い! 今すぐ備えるべき三つの準備自らの強み、弱みを棚卸しし、言語化に努める仕事や技術を軸にした人脈づくりに励む情報発信と自己ブランディングを心掛ける“自分の情報”をネットにあげていない人は 採用されにくい時代になる?【AIが使われた採用ツール】

待遇悪化はリストラのサイン?


水面下で増える「サイレント・リストラ」

先日、ある相談者からこんな話を聞きました。普段、現場のリモート会議などに参加しない社長がネクタイを締めて突然画面に現れ、業績の悪さについて語りはじめたかと思うと、最後にこう切り出したそうです。

「……と、いうことなので、この事業は残念ながら近々クローズします。もし、今日から2週間以内に自主的に退職を申し出てくれれば、給料3カ月分の退職加算金と次の就職先探しを支援するので……」

その相談者は、うつむき加減で原稿を読み上げる社長の姿に驚きながらも、早々に気持ちを切り替え希望退職に応じることにしたと言います。

従業員数100名足らずのベンチャーでは、撤退した事業の受け皿となりうる異動先がないことは明らかだったからです。

2022年後半以降のスタートアップではミドル・レイター期を中心に投資環境が厳しく、VCや投資家から「追加で投資が欲しいのであれば赤字を圧縮しなさい」と条件を出されるケースが多々あります。これは暗に固定費を減らす、特に大きな金額が動く正社員を減らすということを指した条件でした。

もちろん、企業が従業員を解雇するには客観的かつ合理的な理由が必要です。とはいえ、こうした正攻法を採る企業ばかりではないのが現実です。

最近、皆さんの身の回りで、コロナ禍の収束を理由にリモートワークが廃止になったり、事業戦略の見直しなどを理由に職制の変更や職種転換、また異動が伴う配置換えをほのめかされたりしたことないでしょうか。

それはもしかすると、従業員のモチベーションをあえて下げるような処遇を課すことによって、暗に自主的な退職を促す「サイレント・リストラ」のサインかも知れません。

「サイレント・リストラ」とは、暗に従業員のモチベーションを下げるような施策によって自主的な退職に追い込む手法を指す造語です。

近年、海外企業のレイオフがよく話題になりますが、解雇規制のある日本でニュースになるのはレイオフではなくそのまま退職を誘導するものです。退職に同意すれば、余裕のある企業なら給与の約6カ月分、そうでなくても3カ月分程度を支払う“退職パッケージ”つきの退職勧奨が主でしょう。

ただ、これを実行するには株主総会で議決を取る必要が発生し、少々労力が要るわけです。株主総会のようなオープンな場に出してしまうと、株価にも影響しかねません。そのため、わざと働きにくい環境を作って自然退職を促す。これがサイレント・リストラです。

待遇悪化が全てサイレント・リストラのサインではないにせよ、余剰人員や期待値を下回る従業員を辞めさせる手段として、こうしたグレーな手段を採る企業が一定数存在するのも事実です。

なぜなら、社員が自主的に辞めてくれれば、客観的かつ合理的な判断であることを証明する必要がない上、特別退職金や退職加算金など、金銭的なサポートも不要だからです。

従業員への締めつけをキツくするだけで「自然減」を装えるなら「従業員が自らの意志で辞めるよう、外堀を埋めるほうが得策」と考える経営者がいてもおかしくありません。

しかも、事業不振やリストラといった、企業イメージを損ねかねない内情を表沙汰にする必要もないのですから、まさに一石三鳥。

退職に追い込まれた当の本人すら気付かぬうちに、リストラできるからこそ、サイレント・リストラの「サイレント」たる由縁なのです。

危機に直面してからでは遅い!


今すぐ備えるべき三つの準備

しかしながら、待遇の悪化の背景に事業不振があるのか、それとも裏の目的があるのかを確かめる術は現場の従業員にはありません。

だとすると、現職にしがみつくことに時間を割くより、心機一転、転職してしまったほうがスッキリしそうですが、安易な退職は禁物です。

会社を辞めても思い通りの転職ができる人がいる一方、何の準備もないまま丸腰で転職市場に飛び込んでも、想像以上に長い浪人期間を過ごす羽目になったり、意に沿わない転職先を選ばざるをえない状況に陥ったりするリスクが高まるからです。

では、いつまでにどのような準備をすべきなのでしょうか。

もし、転職しようと考えていないのであれば「今がそのタイミング」です。

サイレント・リストラを察知したり、退職勧奨や指名解雇を受けてから動くよりも余裕を持って準備に臨めるからです。いざ退職勧奨を受けるとパニックになり、冷静な判断ができなくなってしまう人も沢山いますからね。

「中には、退職勧奨の面談時に自殺をほのめかす方もいるとか。人事側からするとより一層『退職勧奨しなくては』と思われたそうです......」(久松さん)

すぐに転職しなければならない状況ではない今だからこそできる、三つのポイントを紹介します。

自らの強み、弱みを棚卸しし、言語化に努める

まず一つ目から説明します。エンジニアであれば、以前から得意な技術や最近習得した技術、過去に担当したプロジェクトをリストアップしようと思えばすぐにできるでしょう。では、売上貢献やメンバー育成など、リーダーシップやマネジメント力をうかがわせるエピソードについてはどうでしょうか。

この連載でも度々触れているように、企業がエンジニアを採用する際に注目するのは、技術力ばかりではありません。仕事に対する姿勢や周囲への影響などを加味して採用の可否を検討するもの。

ですから、仕事ぶりや人柄を感じさせる実績やエピソードを丁寧に盛り込むことを疎かにしてはいけません。できることなら、記憶の鮮度が高いうちに文字に残すよう心がけましょう。

いつでも読み返せる状態にしておけば、自己認識の解像度が格段に上がりますし、職務経歴書の内容に「厚み」を持たせることもできるからです。

たまに「職務経歴書の1枚にコンパクトに収めましょう」みたいなハウツーを見かけますが、私は全然おすすめしていません。現職での年収が高いならなおさら、業務の中で工夫した点などを細かく書きだし、その分の「厚み」を持たせるべきです。

キャリアSNS『YOUTRUST』や『LinkedIn』を定期的に更新することも、ぜひやってほしい取り組みです。

【徹底解説】職務経歴書の書き方https://type.jp/tensyoku-knowhow/technique/resume/

仕事や技術を軸にした人脈づくりに励む

二つ目は、いざというときに相談できる相手や転職先を紹介してもらえるパイプを築くために、日頃から社内外のエンジニアや人材ビジネスや採用に携わる友人、知人との関係を大切にすべきというアドバイスです。テック系のカンファレンスなどに積極的に参加し、気の合う仲間を見つけるのも有益でしょう。

情報発信と自己ブランディングを心掛ける

三つ目は、自分が何者なのかを知ってもらう機会を増やす努力を重ねることを意味します。ビジネスSNSやテックブログを通じた情報発信が比較的取り組みやすい方法ですが、機会があればメディアへの露出やコミュニティーイベントでの登壇に挑戦してみるのもお勧めです。周囲からのリアクションが期待できるだけに、想像以上の効果が期待できそうです。

特に、最後に挙げた「人の目に触れる機会を増やす」という意識は、これからの転職活動においてますます重要になるのではないでしょうか。

なぜなら、今後、AIを活用した選考プロセスの省人化、効率化が大幅に進めば、ネット上に情報がない人物は、転職市場においていままで以上に不利な状況に追い込まれる可能性があるからです。

“自分の情報”をネットにあげていない人は


採用されにくい時代になる?

すでに先進的な取り組みに積極的な企業が採用活動におけるAI活用に乗り出しています。

【AIが使われた採用ツール】

各サービスの画像および情報は各社ニュースリリースより参照しています

目新しいものも一部ありますが、現時点で実用的に使われているものの多くは、履歴書や職務経歴書の分析や候補者ごとにスカウトメールの文面を生成するようなサービスに限定されている印象です。

とはいえ、AIの進化は留まることを知りません。近い将来、ネット上に散在している多様な情報から抽出した人材に対し、AIが直接アプローチするようなサービスが生まれるのも、おそらく時間の問題でしょう。

実際、先ほど一例にあげたインテントリクルーティング(Recruit Marker)のように、ネット上の情報から、企業の最新経営動向や社会情勢、転職者の情報からリクルーティング対象になる可能性だってあるわけです。

もし、こうしたサービスが現実になれば、ネット上に情報がない人物は「存在しない」も同然の扱いを受けるのは想像に難くありません。

転職市場で不利な立場に追い込まれないために、AIに自らの存在を認知してもらうような対策が、転職の常識になる日がくるというのも予測も夢物語とはいえないのではないでしょうか。

もちろん、AIを活用した採用手法がどこまで進化するか分かりません。とはいえ、時代が変わっても、自分が何者であるかを相手に知らしめ、ぜひ採用したいと声をかけたくなるような状況をつくることが、転職の成功要因であることに変わりありません。

知らしめる相手が人間かAIかの違いはあっても、今できることからはじめておいて損はないはずです。

構成/武田敏則(グレタケ)、編集/玉城智子(編集部)

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