胸に響く重厚な歌声とユーモラスな芝居で圧倒 ブロードウェイミュージカル『A Year with Frog and Toad~がまくんとかえるくん』が開幕
025年5月31日(土)愛知・春日井市民会館にて、ブロードウェイミュージカル『A Year with Frog and Toad~がまくんとかえるくん』が初日を迎えた。この度、舞台写真&公演レポートが届いたので紹介する。
本作は数多くの児童文学の賞を受賞した20世紀を代表する絵本作家アーノルド・ローベルの名作「Frog and Toad」シリーズ(邦題:がまくんとかえるくん)を原作としたミュージカル。日本では2006年に初演されて以降繰り返し上演され、今回8年ぶりに新たなクリエイティブチーム&キャストで上演する。
演出は元吉庸泰、越岡裕貴、松崎祐介(ふぉ~ゆ~)、原田優一、上川一哉 MARIA-E、壮 一帆らが出演。
なお、本公演は、愛知公演を皮切りに、6月6日(金)~8日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて、6月12日(木)~22日(日)東京・サンシャイン劇場にて上演される。
【STORY】
がまくんとかえるくん、ふたりはとても仲良し。
物語は春の訪れとともにはじまります。
「手紙を一度ももらったことがないから郵便が来る時間は寂しい」と言うがまくん。
それを聞いたかえるくんは、がまくんへ手紙を書きます。
でもその配達をかたつむりくんに頼んだので…。
さあ、ふたりの一年がはじまります!
公演レポート
「チュンチュン」という鳥のさえずりとともに現れたのは、冠羽根の帽子にピンクのマントの4羽の鳥たち。「こんにちは〜!」と客席を練り歩く鳥たちに誘われるように舞台が始まった。春を告げる鳥たちの美しい歌声に、冬眠中のかえるくんとがまくんは夢の中で一緒に歌って踊り、気づけばみんなで大合唱に。
アメリカンの絵本作家、アーノルド・ノーベルの児童書「FROG&TOAD(がまくんとかえるくん)」シリーズをベースに、がまくんとかえるくんの1年を、ふぉ〜ゆ〜の越岡裕貴と松崎祐介主演で届けるこの舞台。頭がよくて優しいかえるくんは、ちょっぴりドジで引っ込み思案ながまくんをいつも優しく見守っている。松崎演じるがまくんは、一つひとつの動きがコミカルで冬眠から目覚めた瞬間、すでに面白い。花が咲いたら大喜び、「手紙が来ない…」としゅんとして、ソリ滑りに失敗すればかえるくんに八つ当たり。そんながまくんの喜怒哀楽を歌に乗せて全身で表現する松崎を、優しく受け止めるかえるくん。越岡が演じるかえるくんは、スマートな大人の“イケメンかえる”。岩場でかえるくんががまくんに歌いかけるシーンでは、越岡の甘い歌声も相まってラブソングに聴こえるほど。
冒頭で鳥を演じたミュージカル界で活躍する4人が、複数役を演じるのも本作の見どころ。壮一帆演じるマイペースなかめさんは、ノロノロと床に寝そべっていたかと思えば、キレのあるダンスと歌を披露し、とかげさんを演じる原田優一は、ヒレを振り回してロックンローラー気取りで笑わせる。MARIA-Eは高らかな歌声でちびがえるになりきり、かたつむりくんを演じる上川一哉は、バンジョーに合わせて勇ましく歌い、かたつむりくんなりの全速力を三輪車で見せる。ほかにもお花にねずみ、もぐら、最後はまた鳥になって…と、シーンごとに胸に響く重厚な歌声とユーモラスな芝居で圧倒する4人に魅了されること間違いなしだ。
そんな動物たちを表す衣裳のこだわりがすごい。がまくんは茶色、かえるくんは緑を基調にキャスケット帽やベスト、柄シャツなどで季節感を表し、華やかな鳥、もぐらのコロンとしたフォルムなど動物たちの特徴的なフォルムをデザインに落とし込んでいる。もうひとつ。驚いたのは、絵本を立体化したようなセットの素晴らしさ。森の絵にプロジェクションマッピングを投影させて、泡立つ水の中、落ち葉の秋、雨風が吹き荒れる嵐の夜、雪景色などを臨場感たっぷりに映し出していく。そんなセット転換を2匹のアリさん(オンステージスィング)が手伝う遊び心も憎い。絵本のページをめくるような読後感が味わえる極上のミュージカルをこの機会にぜひ、体感してほしい。