宮城県で海のパイナップル<ホヤ>を食べたら美味しかった話 その理由は鮮度?
鮮やかな紅色とゴツゴツした形が特徴的な海産物「ホヤ」。見た目や独特の風味から、一般的には“人を選ぶ珍味”だと思われがちな食材です。
しかし、鮮度の良いものは驚くほど美味しく、一度その味を知れば病みつきになること間違いないでしょう。筆者も、そんなホヤの美味しさに魅せられた人間の一人です。
11月3日から7日は水産庁が定めた「いいさかなの日」。この機会に食材としての<ホヤの魅力>をぜひ知ってください。
海のパイナップルともいわれる不思議な生き物「ホヤ」
ゴツゴツとした形が印象的なホヤは「海のパイナップル」と呼ばれることもあります。
中身も外側と同様に鮮やかなオレンジ色をしていて、その独特の質感と見た目は海産物の中でも特に異彩を放つ存在です。
また、その見た目から貝類と思われがちですが、実は貝ではありません。無脊椎動物でありながら、幼生の時は脊索と呼ばれる柔らかい脊椎のような構造を持ち、我々人間も含めた脊椎動物に近いとされています。
日本で食べられているホヤは主に2種
そんなホヤですが、日本では主に2種類が食べられています。
ひとつは、一般的にホヤとしてイメージされる「マボヤ」。ゴツゴツとした突起を持つ種類で、濃厚な味と強い風味が特徴です。
ふたつめの「アカボヤ」はつるりとした表面をしており、マボヤよりまろやかな味をしているため、ホヤ初心者におすすめとされています。
ホヤの本場で本当のおいしさを知る
筆者が2年ほど前に東京の飲食店で食べたのは、マボヤの刺身でした。しかし、ただ苦くて磯の香りがする程度で、美味しいとは感じられませんでした。もしかすると、鮮度が良くなかったのかもしれません。
ところが、2025年の宮城旅行の際に飲食店で食べたマボヤは、濃厚な旨味と爽やかな磯の香り、ほのかな苦味が絶妙に調和していて、その美味しさに驚かされました。
それもそのはず、宮城県は言わずと知れたホヤの本場です。この時、ホヤは鮮度が命なのだなと気づかされました。
名産地である宮城だからこそ、美味しい状態でホヤが味わえるのです。
宮城県で明治時代から続くホヤの養殖
宮城県には複雑に入り組んだリアス式海岸があり、プランクトンが豊富なことからホヤの養殖に向いている土地です。
宮城県でのホヤ養殖の歴史は長く、1900年頃から改良を重ねながら受け継がれてきました。養殖が特に盛んな気仙沼市では、ご当地キャラクターが親しまれ、飲食店でもホヤ料理を積極的にアピールしています。
ホヤの美味しさをより広めるべく、近年では国内の新たな販路や調理法などの取り組みが進められているのです。
実は自宅でもさばける!<ホヤの食べ方>
産地以外では入手することはなかなか困難ですが、もし「生のホヤ」を手に入れることがあれば、ぜひ自宅でさばいてみましょう。想像より簡単に下処理することが可能です。
新鮮なホヤはえぐみや独特の臭みがなく、濃厚な甘味と旨味が広がります。磯の香りも楽しめるので、ホヤ本来の美味しさを楽しめるのでお刺身で食べるのがおすすめです。
生で食べるのが苦手な人は「からあげ」がおすすめ
刺身だと、磯の香りのようなホヤの風味を特に強く感じられるのがポイント。しかし、風味が強すぎて苦手という方におすすめしたいのが「唐揚げ」です。
唐揚げにすると強い香りが抑えられ、えぐみもなくなります。外はサクッと、中はジューシーな食感があり、貝のような濃厚な旨味と甘味が癖になる一品です。
筆者は宮城でいくつかのホヤ料理を食べましたが、中でも唐揚げの美味しさが印象に残っています。
他にも蒸したり、バター焼きにしたりしても非常に美味。特に「蒸しホヤ」は、殻付きでも調理できるので、手軽に楽しみたい方にもおすすめです。
美味しい保存方法のコツは「塩」
さばいたホヤをいっぺんに食べきれない場合は、3パーセントの塩水につけて保存しましょう。
食塩水は、水500ccに15グラムの塩を溶かすだけで簡単に作ることができます。翌日に食べる場合は冷蔵保存し、しばらく食べない場合は食塩水と一緒に入れて冷凍庫で保管。食べる際は、食塩水を洗い流します。
ただし、時間が経つにつれて風味や旨味が落ちてしまうため、早めに食べ切りましょう。
うまみたっぷりの珍味「ばくらい」とは
さまざまなホヤ料理を食べましたが、そのなかでも特に印象的だったのが「莫久来(ばくらい)」という一品です。
ホヤとこのわた(ナマコの腸)を合わせて作られた塩辛で、まろやかな風味とホヤの香りが楽しめます。酒のアテとしてはもちろん、ご飯に乗せて食べても美味しいです。
珍味としても知られる「ばくらい」は、複雑な味が合わさって生まれる旨味を味わえる一品。見かけた際は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
新鮮なホヤは美味しい!
味や見た目から苦手意識があったホヤですが、生産地で新鮮なものを味わって、その印象ががらりと変わりました。
かつては海辺でしか流通せず、鮮度のよいものを入手するのは難しかったそうですが、いまでは販路の拡大によって、美味しいホヤを楽しめる機会が少しずつ増えています。
ぜひ、皆さんも美味しいホヤを食べてみてください。
(サカナトライター:秋津)
参考文献
宮城県漁業協同組合-宮城県産「ほや」
プライドフィッシュ-宮城県